沖縄建築賞
2019年5月24日更新
【第5回沖縄建築賞】奨励賞・住宅建築部門/「タテのアマハジで繋がる家」(西原町)/久志直輝氏(43)/studio jag 1級建築士事務所
県内の優秀な建築物・建築士を表彰する「沖縄建築賞」(主催/同実行委員会)。全26作品の中から、第5回の入賞作品6点が決定した。奨励賞を紹介。ガラス張りの中庭で空間に広がりを持たせたついのすみか、上下の半戸外空間をつなぐ大きな壁が特徴的な住宅、地域の多様なイベントに対応する多目的ドームが選ばれた。
第5回沖縄建築賞の受賞作品
建物を覆う大きな壁が目を引く外観。壁に開いた穴の下には玄関やリビング、子ども室などがあり、室内から空が見える。囲われながらも外とのつながりを感じられる
奨励賞・住宅建築部門
「タテのアマハジで繋がる家」(西原町)
大きな壁で通風共有 内部は明るく開放的
ダブルスキンで熱を軽減
「タテのアマハジで繋がる家」には、2カ所のアマハジ(半屋外空間)がある。一つは1階バルコニー。敷地の高低差を解決するために設けたスロープからバルコニーを通ってリビングへと出入りできるのは、伝統的なアマハジと同じだ。二つ目は2階のルーフテラスで、深い軒が雨や日差しを遮る。
その二つを大きな壁がまとめて覆う。久志直輝氏は「台風や日差しから建物を守るだけでなく、風の通り道として上下がつながり、いわばタテのアマハジとなる。室内から外を見ると自然と開口へと視線が誘われ、中と外をゆるやかにつなぐ緩衝帯となる」と説明=下断面図。
審査員は「外観から受ける囲われた印象とは異なる明るい内部空間」と高く評価。「新鮮」「室内から見ると雪見障子のよう」などの声も上がった。
また、屋上の太陽光パネルやルーフテラスの屋根などで、上からの輻射(ふくしゃ)熱も軽減。前面道路からの風が反対側へと抜けやすい造りで平面の風通しもいいほか、バリアフリーにも配慮されている。「コンパクトながらも個性を感じる設計」と評価され、奨励賞に選ばれた。
▼断面図
設計者代表/久志直輝氏(43)
studio jag 1級建築士事務所
やってきた仕事が認められたようでうれしいです。「外とのつながり」を求める施主さんと密な打ち合わせを重ねられたことが、この形につながりました。今回の賞を励みにしながら、これからの業務にも丁寧に取り組んでいきたいです。
審査講評・能勢 裕子氏 奨励賞・住宅建築部門
タテのアマハジで繋がる家
勾配のある前面道路と高低差のある敷地を巧みに利用した、コンパクトながらも個性を感じる設計となっている。
1つには、駐車場より、勾配と高低を生かしたスロープによるアプローチで、リビング及び玄関に導いている事。
1つには、2階ルーフテラスから張り出したスクリーンで、日差しとプライバシーを配慮し、又そのテラス上部に吹き抜けた開口により、空と緑の広がりを感じられる事。
1つには、設計者の言う"タテのアマハジ"の上下半屋外空間の繋がりにより、空気の通りや採光が確保されており、前面スクリーンの外観から受ける囲われた印象とは異なる明るい内部空間となっている事。
その上で、小規模・ローコストの中であるとは言え、スクリーンの開口部や均質な室内空間のディーテール等に於いて一層、デザインの力を磨き、駆使すれば、若い四人家族にとって益々豊かな空間と生活を提供出来る事であろう。
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第1742号・2019年5月24日紙面から掲載