沖縄建築賞
2023年9月29日更新
【第9回沖縄建築賞】奨励賞 一般建築部門/「中城ひらやすこども園」(中城村)/平良和礼氏(41)/(株)渡久山設計
沖縄県内の優秀な建築物・建築士を表彰する「沖縄建築賞」。ここでは奨励賞を受賞した3作品の1つ「中城ひらやすこども園」を紹介する。
外観。写真右側の2階部分にある大きな窓で地域の人々との交流を促す
奨励賞 一般建築部門
「中城ひらやすこども園」(中城村)
地域とつながる保育施設
好奇心育む中庭
コの字形の建物で中庭を囲んだ「中城ひらやすこども園」。設計した平良和礼氏は「これからの保育施設として、魅力的な園舎はもちろん、地域と関わり、子育てをバックアップできる環境づくりも目指した」と話す。
例えば1階中庭は、隠れ家や土管付き築山、ビオトープなど、さまざまな要素で好奇心を育む。
2階図書スペースには外に向けた大きな窓。地域とのつながりを感じられるようになっている。
さらに、建物の一角には、保護者同士で情報交換をしたり、子育てセミナーなども開ける「地域交流カフェ」も設けた。
審査員からは「300人収容できる規模でありながら、中庭がうまく機能し全体にまとまりがある。居場所も多く、園の生活が楽しくなりそう。子ども、職員、親のそれぞれの目線で考えられている」などの声が挙がった。
中庭。2階回遊デッキにつなげることで立体的な遊び場となり、多角的な捉え方を養う
建物中央にある1階ホール
設計者/平良和礼氏(41) (株)渡久山設計
心身の基礎をつくるこども園として、子どもたちが楽しみながら健やかに成長できる環境を園長先生と一緒に考えてきました。それを評価して頂き、共に喜んでいます。
審査講評・能勢裕子氏(彫刻家)
発育見据えた仕掛け
この計画は中城村が二つの幼稚園を官民連携して統合スタートした。新しい役場も建ち開発が予定されている中で、このこども園はポテンシャルの高い貢献ができるよう取り組んだ建築。設計は「魅力的な園舎、地域との関わり、子育てをバックアップできる保育環境」を目指して、三つのコンセプトのもと計画されている。趣旨通りに「わくわくする園舎」づくりが実現されていると言える。
コの字形で2階建ての建築は大きな敷地にいろいろな仕掛けの遊び場を囲み、透明感のある大空間を内包し、園児たちの発育に合わせたしつらえが細部にまで考えられている。また、色づかいもトーンを落としたカラーが選択されており、園舎の質を高めて好印象を与えている。
現地審査では、園舎でかいがいしく働く職員や迎えの親と楽しげに帰る子たちと会った。秀逸・洗練・斬新も必要ではあるが、大切なのは寄り添うココロとカタチなのではなかろうか、と中城ひらやすこども園内を歩きながら教えられた。
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第1969号・2023年9月29日紙面から掲載