防災
2024年3月15日更新
あなたの家は大丈夫? 不安なら「耐震診断」を
2024年1月に起きた能登半島地震では建物の倒壊により多くの犠牲者が出た。地震による被害を抑えるためには、まず自宅の「耐震性」を知ることが重要だ。沖縄県の耐震化促進に関する事業により耐震診断などの相談窓口となっている県建築設計サポートセンターが2月28日に開催した「RC(鉄筋コンクリート)造建築物の耐震と劣化」のセミナー内容などから、県内RC建築物の耐震性や、耐震診断について紹介する。
耐震の目安「1981年」
琉球大学のカストロ・ホワンホセ教授は「琉球列島周辺は地震が少ないというのは誤り。海底活断層が定期的に動くことなどから、マグニチュード8、9クラスが起きてもおかしくない」と警鐘を鳴らす。
そうなったときに、まず倒壊の恐れがあるのが「現行の新耐震基準に合っていない、1981年以前に建てられた建物」と指摘する=下記参照。
沖縄県耐震化促進計画では2018年(平成30年)時点で、県内の住宅の総戸数が約57万7000戸。そのうち、81年以前の住宅は13万1900戸で、およそ23%を占める。その中でも耐震診断によって「耐震性なし」と判断される住宅は5万1900戸と推測されている。
いつ建てられたかも目安
1981年(昭和56年)以前に建てられている場合
建築基準法改正以前の古い耐震基準で建てられており、強度が十分でない場合もあるため耐震診断をすることを勧める。能登半島地震でも、旧耐震基準で建てられた建築物の倒壊が多く見られた。診断結果に応じて耐震改修を行う方が安心だ。
1981年(昭和56年)以降に建てられている場合
新耐震基準は「震度6強から震度7程度の地震でも建物が倒壊しない」ことを基準としている。とはいえ、その後の建物の劣化等によっては、耐震性能が落ちてしまっている恐れもある。
沖縄ならではの危険性
カストロ教授は沖縄の建物ならではの危険性も指摘。車社会のため、駐車場を確保するために「ピロティ(げた履き)形式」の建物が多い。柱だけで支えているため、設計時に十分に安全確認を行う必要があるとされる。「16年に発生した熊本地震の際、現地に行ったがピロティ形式の建物の倒壊も多く見られた。すべてのピロティ形式の建物が危険とは言わないが、心配な場合は耐震診断を受けた上で耐震補強をすべきだ」と指摘する。
一方で「壁式構造の建物の被害は少なく、耐震性が高いと感じた」と話す。
ピロティ形式は、1階部に壁がない部分が多いため、壁に囲まれた建物に比べると耐震性能が低いとされる
地域係数 全国最小0.7
そして、建築物の耐震基準である「地震地域係数(※1)」が、全国で最も低い0.7に設定されていることも、県内建築物の耐震性能に大きく影響しているとカストロ教授は説明する=下表参照。「沖縄県では大きな地震の記録が少ないことから低く設定されているが、起きないわけではない」と力を込める。
「荒っぽい例えだが、係数が1.0の東京では1メートル角で造らなければならない柱が、沖縄では70センチで造れるということ。かといって、沖縄で発生する地震が東京より3割弱いということは決してない。係数の低さは大きな問題だと思う」と指摘した。
ほかにも、塩害や強烈な紫外線、台風などもコンクリートを劣化させ、建物の耐震性を下げる要因となっている。
「地震地域係数」とは ※1 地震地域係数とは…建築基準法施行令第88条第1項に「その地方における過去の地震の記録に基づく震害の程度及び地震の性状に応じて1.0から0.7までの範囲内において国土交通大臣が定める数値」と規定されている。この数値は1952年に初めて規定され、大きな変更はされていない。当時は沖縄の地震活動について不明なことも多かったことから低く設定されていると見られる。静岡県は、県の条例で係数を「1.2」に設定している
構造専門の建築士に相談
安全性に不安がある場合は、構造専門の建築士に相談しよう。より細かくチェックしたい場合は建築士に「耐震診断」を依頼する。耐震診断を行っている建築士は、県建築設計サポートセンターや県建築士事務所協会に確認すると良い。
同診断は約2カ月をかけて建物の強度を調べる。費用は建物の規模や図面の有無などで変わるが、個人住宅で数十万~百万円程度。その結果により、壁を新設したり窓を小さくしたりといった耐震補強を行う。
また県の補助事業で、目視調査のみの「簡易診断」が1万円で受けられる。本年度(23年度)分はすでに終了したが、来年度(24年度)も引き続き、簡易診断や相談窓口の設置を予定している。決まり次第、沖縄県建築指導課のホームページに掲載される。
住まいの安全性をチェックしよう!
Q.耐震診断をするには?
必要書類(建築物の設計図.構造図または竣工図、検査済証など建築物の竣工年が分かるもの、建物の外観.劣化部分の写真など)を持って、設計事務所などに依頼する。耐震診断を行っている建築士事務所は、NPO法人県建築設計サポートセンター(電話=098・879・1020)か、社団法人県建築士事務所協会(電話=098・879・1311)に相談を。
Q.診断にかかる料金や日数
建物の規模や必要書類があるかどうかで違うが個人住宅で数十万~百万円程度かかる。診断にはおおむね2カ月程度を要し、その後第三者による判定が必要であれば、判定委員会に判断を求めることとなり、さらに1~2カ月程度追加される。
取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1993号 2024年3月15日紙面から掲載
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- 東江菜穂
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。