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2021年10月29日更新

[豊かな暮らしとエネルギー③]脱炭素×地産地消がカギ|

エネルギーを取り巻く環境が脱炭素に向けて加速する中、沖縄県内で都市ガス・プロパンガス事業を営む沖縄ガス(我那覇力蔵代表取締役社長)は、環境活動の取り組みとして10年前から再生可能エネルギーの利活用を検討。事業化を推進する企業として、汚泥処理で発生するバイオガスを電気・熱に変換する「いとまんバイオエナジー」、再エネでできた電気を供給する「沖縄ガスニューパワー(イーレックス合同出資)」を設立した。両企業の社長を務める大城邦夫代表取締役社長に、再エネ事業や施設での取り組み、再エネ100%の電気が家庭でも使えるのかを聞いた。

脱炭素×地産地消がカギ
沖縄ガスと関連企業が活用する再生可能エネルギー


Q.再エネってどんなもの?

A.脱炭素エネルギー源 捨てられるもの活用
再生可能エネルギー(再エネ)には、太陽光や風力などの自然エネルギーに加え、バイオマスという動植物由来のエネルギー源も含まれます=下豆知識。温室効果ガスを出さないエネルギー源です。沖縄ガスは、それらに着目し、脱炭素社会に向けた議論・取り組みを10年前から進めてきました。

実は沖縄県内には、温泉中に含まれる水溶性天然ガスなど、エネルギーになりうる資源がいくつかあります。ですが、取り組み当初は活用されずに捨てられている状況でした。

特に、汚水や家畜のふん尿などから発生するメタンガスは、バイオガスとも呼ばれるバイオマス燃料の一つ。これも、ただ燃やすだけで電気などのエネルギーには変換されていませんでした。その背景には、バイオガス発電の環境的価値の認識の低さ、高額な発電設備費用などがネックになっていました。

そこで、沖縄ガスでは県内外のエネルギー関連企業と連携して、捨てない、無駄にしないエネルギー事業に取り組んでいます。中でも、注目を集めているのがバイオマス。県内最大規模の中城バイオマス発電所に出資、また、いとまんバイオエナジーでは、下水処理場から出るバイオガスで電気と熱を供給するなど、エネルギーの有効利用を実現しています。


Q.再エネ100%の電気って一般家庭でも使えるの?

A.高まる企業需要家庭へは来年度以降
脱炭素社会実現へ向けた国の制度に、FIT(固定価格買取)制度があります。沖縄ガスニューパワーは同制度を活用し、再エネで発電した電気を企業や家庭へ提供しています。社会的に環境負荷低減に対する意識や価値観も変わってきており、特に企業ではCO2を排出しない、再エネ電気の需要が高まっています。

それに応えるため、FIT認定を受けたCO2を排出しない電気を、「美ら島CO2ゼロプラン」として企業向けに販売しています。同プランは、「非化石証書」という再エネ電気の証明書を購入する必要があるため、一般料金よりは多少高くなりますが、多数の県内企業から問い合わせがあり、製塩を営む青い海などの企業で活用されています。同様に一般家庭向けへも販売を検討中で、来年度以降となる予定です。

地球温暖化など深刻な環境問題に直面する中、私たちはエネルギー事業者として、子どもたちにエネルギーと環境を学ぶ場も提供。未来につながる再エネを「もっと地元に、もっとチカラに」していきたいと考えています。

いとまんバイオエナジーで、バイオガスについて学ぶ中学生ら

豆知識再生可能エネルギーと県内の発電割合

再生可能エネルギーとは、枯渇することなく永続的に利用でき、環境への負荷が少ない自然由来のエネルギー源のこと。太陽光・風力・水力・地熱のほか、動植物から生みだされるバイオマスがある。2019年時点の県内の再エネ発電の割合を見ると、太陽光が87%で最も多く、次いでバイオマス6.8%、風力5.4%、水力0.8%。地熱は0%となっている。バイオマスの中には、バイオガスという家畜のふん尿や汚水などから出るメタンガス、木質バイオマスというトウモロコシや廃材といった植物性の燃料などがある。


南部の遊休地活用したメガソーラー発電


パームロイヤル太陽光発電所

南城市にあるパームロイヤル太陽光発電所は、ホテルなどを経営するパームロイヤルが所有。遊休地だった1.85㌶の敷地を活用し、一般家庭約450世帯分にあたる1650㌔㍗を太陽光で発電している。その電気を2016年から沖縄ガスニューパワーが一般家庭や企業へ供給している。

県内でもなじみの深い太陽光発電。同発電所は大規模な遊休地を活用しており、2013年建設当時は本島南部で最大級といわれた


 バイオマス 

バイオガス

バイオガスは、バイオマス燃料の一種で、家畜のふん尿、汚水、汚泥、生ごみなどから発生するガスを利用する。これまで未活用だった資源であるが、電源にも熱源にもなる。エネルギー源の調達は安定的で、地産地消のエネルギー源として高いポテンシャルを持つといわれている。


木質バイオマス

木質バイオマス燃料は発電の際にCO2を排出するが、原料となる植物が成長過程で吸収していることから、CO2の増減に影響を与えない「カーボンニュートラル」な燃料といわれている。
 

糸満市内の汚水をバイオガスに
一つの燃料から二つのエネルギー供給

いとまんバイオエナジー(糸満市浄化センター)

糸満市浄化センター青い海(製塩工場)

下水処理の過程で発生するバイオガスを使い、電気と熱を供給する、いとまんバイオエナジー。糸満市浄化センターで発生したバイオガスを、近接する青い海製塩工場に送り、同工場内の施設で発電。また、発電時の廃熱を塩づくりに役立てている=下図。発電だけでは約7割のエネルギーロスがあるが、熱も同時に利用することでロスは約2割まで抑えられるといい、エネルギーを効率良く使っている。

発電量は年間90万㌔㍗時で一般家庭約300世帯分に相当。電力は沖縄ガスニューパワーが糸満西崎の工業地帯にある企業などに供給している。これらの取り組みにより、年間1000㌧のCO2削減につながるという。

下水処理場のバイオガス活用は県内で注目を集めており、ことし5月には西原下水処理場への導入も決まった。2024年に稼働予定だという。

 

年間27万トンのCO2削減
木質バイオマスで11万世帯相当発電

中城バイオマス発電所
中城バイオマス発電所は、全国で新電力事業を手掛けるイーレックスのグループ会社、沖縄うるまニューエナジーが運営。沖縄ガスなど11社が共同出資する。パームヤシ殻や木質ペレットという木くずなどからできた固形燃料で発電し、バイオマス発電所としては県内最大規模。年間発電量は約35万メガ㍗時、一般家庭11万世帯の年間消費電力に相当する。CO2削減効果は年間約27万㌧を推定。電力は沖縄ガスニューパワーが販売。
沖縄ガス


取材/川本莉菜子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1869号・2021年10月29日紙面から掲載

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