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2023年12月8日更新

持続可能な社会を実現するには|コミュニティでできることから|コミュニティアパートができるまで⑨

文・写真/守谷光弘(「コミュニティ・アパート 山城のあまはじや」オーナー)

持続可能な社会を実現するには

コミュニティでできることから

昨今はやりのSDGsを考える時、私は「コミュニティでできることから」と考えます。「シンク・グローバリー・アクト・ローカリー」(地球規模で考えて、地域で行動する)という言葉が叫ばれて大分たちますが、日本の取り組みは平成初期のバブル崩壊からほとんど変わることなく今に至っていて、経済、食料自給率、人口減少、環境、資源など、多岐にわたる社会課題が解決されないままになっています。

中でも市民生活に直結する貧困や少子高齢化、人材不足、労働問題、待機児童、介護問題などは深刻化の一途です。核家族化が進む中では独居老人の孤独死や子どもの孤食など、寂しく悲しい問題を聞くようになって長く、最近ではDVやヤングケアラー問題、高齢運転者の交通事故問題なども後を絶ちません。
 


台風の際は夜になるとおかずや照明を持ち寄って食卓を囲んだ


問題は可視化
地域で行動を


地域で行動する必要性を、私は「可視化」と理解しています。物事をあまり大枠で捉えてしまうと、焦点がぼやけて取り組みも具体化されず、責任の所在も明確にならないのか、「失われた30年」と揶(や)揄(ゆ)される経済問題同様に、解決の糸口が見えないままに低迷と停滞を続けているように思うのです。

言い換えれば「誰の目にも留まらない現実は、地域の目に留まるようにしたい」「家族親族だけで解決のできないことは、地域ぐるみで助け合っていきたい」ということです。事実、私の住む農村集落も10月末現在で56世帯110人になり、とうとう平均世帯人口が2人を切ってしまいました。3世代同居の家が何軒かあることを考慮すれば、相当数の高齢者独居世帯があることになります。65歳以上の高齢者が50%を超えて、文字通りの限界集落となるのも時間の問題でしょう。かく言う私も65歳まであと8年しかありません。


台風時のある夜。ギター片手にキャットウオークで突然始まったライブは、暗く重かったコミュニティスペースを明るく楽しい空間に


奥の和室にいるのは南城市のキャンプ場に滞在中だった山梨の友人。沖縄の台風の怖さを説明し、客間兼用の和室で1週間過ごしてもらった

台風6号を経験し実感
助け合う安心の重要性


2007年から沖縄に住んでいる私は、これまでに何度か命の危険を感じるような強い台風に遭い、40年間の東京在住時には一度も体感しなかった、台風通過中の怖さや一人で居ることの心細さ、そして長い停電で感じる不安を経験しました。今年本島に暴風域をもたらした台風6号の勢力も記録的で、被害は相当なものになりましたが、新築の頑丈な家にパートナーと入居者3世帯と引きこもり、ジッとやり過ごす中では何の不安も恐怖もありませんでした。

料理が得意だったり、ミュージシャンだったり、子どもが居たりと、住民の多様性と得意分野によって、一人で居たら長く不安な時間も、おいしく楽しく過ごせることで短く感じました。太陽光発電と蓄電池で停電に備えたにもかかわらず、パワーコンディショナーの不具合で、5日間に及んだ停電の3日目から電気が使えなかった時にも、住民それぞれが持っている物を持ち寄って、毎日みんなで食事を共にしたりゲームをしたりすることで、笑いながら乗り越えられました。

生きづらさを抱えている人が多い現代社会で最も大切なことは、暮らしやすさや日々の安心なのではと再認識する機会にもなりました。私がコミュニティにこだわる理由の一番はそこにあるのです。


 


もりたに・みつひろ
1966年東京都世田谷区出身。2007年より沖縄県在住。「コミュニティ・アパート 山城のあまはじや」オーナー 兼 管理人 兼 住人。糸満 海人工房・資料館を運営するNPO法人ハマスーキ理事。2020年、小規模土地分譲『等々力街区計画』の街区デザインでグッドデザイン賞受賞    


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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1979号・2023年12月8日紙面から掲載

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