建築
2022年12月30日更新
[沖縄]進む!住まいの省エネ化①|県内の状況
地球温暖化の防止に向け、世界中が温室効果ガスの排出削減に取り組んでいる。建築業界でも脱炭素化、省エネ化は加速しており、2025年には住宅を含むすべての新築建物に省エネ基準への適合が義務化。さらに国は「2030年以降の新築住宅はZEH(年間の一次エネルギー消費量が実質ゼロ以下を目指した住宅)水準の省エネ性能の確保を目指す」との指針も出した。県内でも、沖縄に適した省エネ住宅の在り方を模索・提案する動きが広がっている。そこで今号は「進む! 住まいの省エネ化」と題し特集。県内の取り組み状況から、構造別の省エネ住宅の事例、ZEHに特化したローン商品の紹介、一般建築物でも進むZEB(年間の一次エネルギー消費量が実質ゼロ以下を目指した一般建築物)化、省エネ改修について取り上げる。
県内ではZEH推進の動きも
りゅうせき建設が提案する「RC+(プラス)」のモデルハウス。RC造ながら標準仕様でZEH基準をクリアできる
25年に省エネ義務化
政府が掲げる2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量の収支をゼロにすること)実現に向け、建築業界でも取り組みを進めている。
例えば25年には住宅を建てる際に省エネ基準(※②)の適合が義務化される。これは「夏場の日差しの入りにくさ(ηAC値)」「一次エネルギー消費量(BEI値)」などが基準値以下になるようにした省エネ住宅、あるいはその基準と同等とされる「気候風土適応住宅」(※③)でなければ建築できなくなるということだ。
そんな省エネ住宅の一つがZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス、※①)。断熱性・気密性の高い躯体と、省エネ性能の高い設備に加え、太陽光発電などによる「創エネ」によって消費エネルギーの収支をゼロ以下にする住宅だ。国もさまざまな補助金によって普及を後押ししている。
業者間で温度差も
県内でも広がりを見せつつあり、住宅ローンにおいては、フラット35や、県内の銀行からZEHを対象とした商品が登場。建築業者からはZEHのモデルハウスも出てきている。ZEHの補助金申請にも使われるBELS(※④)の認証機関として、県内で初めての登録もあった。
建築関係者からは「電気代が大幅に上がることが予定されているので、創エネできるZEHはメリットが大きい」「資産価値が上がる」といった声がある一方、「建築費が高騰している中、太陽光発電や蓄電池などは補助金があっても初期コストがかかり過ぎる。かかったコストの回収も難しい」といった声も上がり、人によって温度差がある。
LCA重視の可能性
政府は2030年以降に新築される住宅は「ZEH水準の省エネ性能確保を目指す」との目標も示している。夏場の日差しの入りにくさに関する基準は変わらないが、一次エネルギー消費量を基準値より20%以上削減することが必要になる予定だ。
しかし「開口部にひさしを設けたり断熱材を使うなど普段通りの手法でも、ZEH水準の省エネ性は確保可能」との見方もあり、過度な心配は不要だという。
そのほか、「断熱性・気密性の高い家は快適な温度・湿度を保ちやすいが、窓を開け放したままにするとカビなどのリスクが出てくる」「海外では、建材の製造や輸送に関わるエネルギーなども考慮するLCA(ライフサイクルアセスメント)が重視されており、日本でもその流れになる可能性がある」との声もあった。
これからの家づくりではライフスタイルに合った省エネ住宅を求めていく必要がありそうだ。
◆知っておこう! 省エネ手法あれこれ
太陽光発電
※①ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)
Net Zero Energy Houseの略。住まいの断熱性能や省エネ性能を上げ、太陽光発電などでエネルギーを創り出すことにより、空調や給湯、照明、換気といった年間の1次エネルギー消費量の収支がプラスマイナス「ゼロ」以下になるよう設計された住宅。一次エネルギー消費量の削減率などによって「ZEH」「Nearly ZEH(ニアリーゼッチ)」「ZEH Oriented(ゼッチオリエンテッド)」などに分類される。共同住宅向けの「ZEH-M」などもある。非住宅を対象としたものが「ZEB(ゼブ)」。
※②省エネ基準
2025年に適合が義務化される基準で、「冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)」「一次エネルギー消費性能(BEI値)」などで適否を判断する。それぞれ値が低いほど評価は高くなる。沖縄の場合の基準値は、ηAC値が6.7以下(断熱性能等級4以上)、BEI値が1.0以下(一次エネルギー消費量等級4以上)。ZEH水準の省エネ性能にするなら、BEI値0.8以下(一次エネルギー消費量等級6以上)が必要。
樹脂サッシ・Low-e複層ガラス
断熱ブラインド
※③気候風土適応住宅
伝統木造や沖縄のRC造住宅など、地域の気候風土に対応した住宅のことで、省エネ基準が一部適応除外される。県などの所管行政庁が認定する。沖縄の場合、「日射による熱を内部に侵入させないこと」「熱や湿気を内部にこもらせないこと」を前提とし、アマハジや花ブロック、緑化、屋根の遮熱などの建築的工夫を取り入れる必要がある。
アマハジ
花ブロック
遮熱ブロック
※④BELS
建築物省エネルギー性能表示制度(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)の略称で、第三者機関が建物の省エネルギー性能などを評価し、表示する制度のこと。評価は5段階で、星の数が多いほど高評価となる。ZEHを対象とした住宅ローンの手続きや補助金申請などにも使われる。
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進む!住まいの省エネ化⑤ |施設で省エネ
進む!住まいの省エネ化⑥ |沖縄県内初のZEH専用住宅ローン
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1930号・2022年12月30日(第1集)紙面から掲載