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2022年11月25日更新

円鑑池に浮かぶ弁財天堂|弁財天堂(那覇市)|絵になる風景⑧

「風土に根差した建築」を目指して設計活動を続ける山城東雄さんが、建築家の目で切り取った風景を絵と文章でつづります。(画・文・俳句/山城東雄)


「弁財天堂」(P25号)

去る沖縄戦で、首里城をはじめその近辺の多くの文化遺産が消失した。この弁財天堂も焼け落ち、戦後再建されたのが現在の姿である。

憎むべきは戦争を引き起こす為政者である。今もロシア、ウクライナのニュースを見るにつけ、何とか早期に終息できることを祈らずにはおられない。

さて、この弁財天堂は昭和47年(1972年)、国指定建造物文化財に指定を受けた。そもそもの起源は15世紀中ごろ尚徳王代、朝鮮王朝第七代国王・世祖(セジョ)李瑈(リジュウ)より高麗版大蔵経が贈られたことによる。それを納めるため1502年、尚真王が円鑑池を掘らせて中島に堂をつくらせた。

しかし1609年、薩摩侵攻により一度は壊され、経典も失われたという。1621年になって堂は再建され、円覚寺にあった弁財天像を移して祀(まつ)るようになり、堂は弁財天堂、そこにかけられた橋は天女橋と呼ばれるようになった。

橋は中国南部のクリーク(小川)の発達した地方に多く見られるもので、琉球石灰岩で造られている。中央を高くしアーチを描き、力強く見事な橋である。欄干は、日本の木造の組み方を取り入れ、ニービヌフニ(細粒砂岩)で造られている。日本、中国などの意匠や技法を巧みに組み合わせ、工夫しているところに特徴がある。先人の石工の技に敬服である。

また、弁財天堂も、赤瓦に火焔宝珠(かえんほうじゅ)をいだいた方形屋根の構成は実に美しい。私はこの何とも言えない美しさに心惹(ひ)かれ、7年前に水彩画を描いた。


秋深む水面麗し弁財天



[執筆者]
やましろ・あずまお/1944年、竹富町小浜島出身。沖縄工業高校建築科卒業後、建築設計会社での勤務を経て、34歳の時に東設計工房を設立して独立。一級建築士。JIA登録建築家。(株)東設計工房代表取締役。(一社)おきなわ離島応援団代表理事。著書に「沖縄の瓦はなぜ赤いのか」がある。

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1925号・2022年11月25日紙面から掲載

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