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2023年7月7日更新
【4】コンクリートの爆裂|膨れ・サビ汁は危険信号[マンション修繕のススメ]
文・あかみね かつじ/一級建築施工管理技士
コンクリートの軽度な劣化である「ひび割れ」に対し、重度の劣化である「爆裂」。膨張した鉄筋がコンクリートを押し出す爆裂は、建物の耐久性が低下したり、大きな事故につながることもある。原因や兆候に気付くポイントなどを紹介する。
鉄筋の体積が2倍以上に
コンクリートが剥がれ落ち、鉄筋がむき出しになった建物を見たことがないでしょうか。これは「爆裂」と呼ばれ、鉄筋コンクリート(RC)造などに起こる劣化現象の一つです。
原因は大きく分けて四つあります。まず、「ひび割れ」。コンクリートのひび割れ箇所から二酸化炭素が内部に入ると、アルカリ性であるコンクリートはそれに反応し中性化します。鉄筋周りのコンクリートが中性化すると鉄筋にサビが発生しやすくなり、ひび割れから入った雨水などでサビや腐食が進行。鉄筋の体積が2倍以上に膨張することもあります。それによりコンクリートが内側から押し出され、爆裂が発生します=下図。
次に「使用環境」。海に囲まれた沖縄は、場所によっては常に潮風にさらされます。潮風に含まれる塩化物イオンは鉄筋の腐食やサビを促進させるため、塗装が薄くなったコンクリートなどでは、表面から塩化物イオンが浸透し爆裂につながります。
三つ目が「使用材料」。1972年前後の沖縄では、RC造の集合住宅を建てる際に、十分に除塩されていない海砂が使われることもありました。コンクリートに含まれる高濃度の塩化物イオンで鉄筋が腐食していき、爆裂が発生します。
最後が「コンクリートのかぶり厚不足」。新築の施工時にコンクリートのかぶりの厚さ(鉄筋の表面からコンクリート表面までの最短寸法)が不足している建物だと、ひび割れが発生した時に中の鉄筋までの距離が近い分、爆裂が発生しやすいです。
ひび割れ補修で爆裂予防
鉄筋がむき出しなど一目で爆裂と分かる場合がある一方、コンクリート内部で鉄筋の腐食が進行している段階の「隠れ爆裂」などもあります。「コンクリート表面の膨れ」「サビ汁がにじみ出ている」などは隠れ爆裂のサイン。見逃さないよう、定期的に建物調査を行いましょう。
また、発生した爆裂を放置しておくと、建物の美観を損ねるだけでなく、耐久性の低下にもつながります。ひどい場合はコンクリートの塊が落ち、人身事故にもなりかねません。
ひび割れを補修したり、躯体表面を塗膜防水材で被覆するなど、早めの補修やメンテナンスが爆裂予防には大切です。
手すりに発生した爆裂
手軒天部分に発生した爆裂。落ちると事故につながるため大変危険
こんな状態は要注意
柱からにじみ出るサビ汁。柱内部の鉄筋が腐食したり、さびている証拠
コンクリートの表面が膨れている状態。既に爆裂は発生しているが、塗装の膜によって剥がれ落ちていないだけ
爆裂補修にかかる金額と工事の流れ
・補修工事にかかる金額は、爆裂の程度や範囲によって異なる。
・ひび割れ補修や外壁塗装などに比べて金額が大幅に上がり、規模の大きなマンションなどでは、足場なども含めると数百万円かかるケースもある。
一般的な爆裂補修工事の流れ
(1)隠れ爆裂を確認し、もろくなったコンクリートを剥がす
(2)鉄筋のサビを除去し、防サビ処理
(3)樹脂モルタルなどで埋め戻し、成型・塗装
ひとことアドバイス
・コンクリート表面の膨れやサビ汁は、内部で鉄筋のサビが進行しているサイン。見逃さないよう、定期的にチェック。
・ひび割れ補修など、爆裂が発生する前にメンテナンスしよう。
あかみね・かつじ/TNOコンセプト(株)・本気でペイント事業部営業部長、一級建築施工管理技士
電話=0800・2000・486
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1957号・2023年7月7日紙面から掲載