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2025年7月11日更新

水の浸入 1カ所とは限らない|知っておきたい!補修・改修のキホン⑯

今ある家に住み続けるには定期的なメンテナンスが欠かせないが、何から手をつけていいか分からない人も多いのでは? 外装を中心に建物全般の補修改修を手がけるタイズリフォームの赤嶺雄一郎さんにポイントを解説してもらう。今回は建物の漏水事例を紹介。水の浸入経路は至る所にある。


文・赤嶺雄一郎 (株)タイズリフォーム代表取締役
 

水の浸入 1カ所とは限らない

今年の梅雨は17日間と過去2番目に短く、雨量も少なかったですね。6月末の時点で県内ダムの貯水率は約9割程度のようですが、高気圧の影響でまだまだ雨が降りにくい天候が続くようです。

このような状況では恵みの雨をもたらす台風はある意味ありがたい一方、深刻な風災や漏水被害を引き起こす厄介なものでもあります。

今回は原因特定まで1年以上費やした漏水事例をご紹介します。

ひびとスリーブから漏水

被害のあった建物は築40年の共同住宅。降雨時に1階和室の天井から漏水が発生する、と連絡を受けました。天井を開口したところ、コンクリートのひび割れから漏水が発生していました=写真1


写真1 1階和室・天井裏のコンクリートに貫通したひび割れから漏水が発生

原因と考えられる直上2階住戸のバルコニーを目視点検したら、外壁タイルに大きなひび割れとエアコンスリーブ(配管や配線を通すための貫穴)のシーリングにわずかな隙間を発見しました=写真2、写真3


写真2 2階外壁タイルのひび割れから雨水が壁内、そして床下へ侵入。アルミ窓枠とコンクリートの間に隙間があるため、ひびがあると簡単に浸水する


写真3 エアコンスリーブに施工された防水シーリングのわずかな隙間(青丸)から浸水。特に冷媒管まわりは隙間が生まれやすい

ここに集中散水したところ、いずれからも浸水を確認できたため、タイルの張り替えとシーリングの打ち替えを行いました。後日、同じ条件で散水試験を実施したところ、浸水は止まりました。

その後の単発的な降雨で漏水は発生しませんでしたが、梅雨に入り長雨が続くと、「同じ場所から再び漏水が発生した」との連絡がありました。今度は2時間以上散水を行った直後に、目をつけていた防水コンセントを取り外してみると、ボックス内に水ぬれを確認=写真4、写真5

幸い、施主さまからコンセントは不要との許可を得たため、ステンレス板でふたをして様子を見ることとなりました=写真6。


写真4 散水試験の様子。浸水が疑われる部位に下から上へピンポイントで散水。いきなり上から散水すると、浸水箇所の特定が困難になる場合がある。散水中は常にスタッフが床下を確認している
 
 

写真5 散水試験直後、防水コンセントを撤去したところ配線ボックス内に漏水を確認。電気配線に通水すると、漏電や火災の原因となる
 
 

写真6 防水コンセントにステンレスプレートを設置後、シリコンシーリングを充填している様子


外壁タイルの目地からも

もう大丈夫だろうと考えていたのもつかの間、3日ほど続いた大雨の後にまた漏水が発生したとの連絡がありました。上下階の施主さまもうんざりしたご様子。

補修内容に自信があっただけにこの時はさすがにショックで自らの無能さに嫌気が差しましたが、気を取り直し浸水経路の特定作業を行いました。考えられる経路は「外壁タイルの目地からの浸水」です。

外壁に使われる磁器タイルは吸水率が1%以下と非常に低く丈夫で長持ちするのですが、タイル間の目地モルタルは吸水率が高くひび割れや剥がれなど劣化が生じます。この目地からタイル裏面に回り込んだ雨水が、コンクリートに生じた隙間から室内へ伝わっているのではないかと考えました。

そこで、目地に深く浸透して防水性を高める「浸透性超撥水(はっすい)材」を外壁タイルに塗布しました=写真7


写真7 「浸透性超撥水材」はタイルの目地に深く浸透し強力な防水層を長い間、形成する。無色透明であるため、タイルの質感を損なわない

 
経路を把握し 台風備え

数日後に、前回と同じ条件で散水試験を実施したところ、漏水がピタリと止まりました! 施主さまにもお喜びいただき、安心して和室天井の張り替え工事ができました。

一連の工程から今回の漏水部位は4カ所、①外壁タイルのひび割れ、②エアコンスリーブ、③防水コンセント、④外壁タイル目地だったことが確定できました。

これから本格的な台風シーズンに突入します。建物のどのような部位から内部に浸水するのかは過去記事=下記URL=で詳しく紹介しています。興味のある方は是非ご一読ください。

2024年7月12日号に掲載した記事「台風で注意すべきは貫穴」。
水の浸入部位や対応策などを解説している↓↓↓


【教えてくれた人】
あかみね・ゆういちろう/(株)タイズリフォーム代表。1級建築士、マンション維持修繕技術者、既存住宅状況調査技術者、宅地建物取引士

(株)タイズリフォーム
電話=098・975・7815​

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2062号・2025年07月11日紙面から掲載

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