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2025年6月13日更新

木内部も防蟻・防腐処理|知っておきたい!補修・改修のキホン⑮

今ある家に住み続けるには定期的なメンテナンスが欠かせないが、何から手をつけていいか分からない人も多いのでは? 外装を中心に建物全般の補修改修を手がけるタイズリフォームの赤嶺雄一郎さんにポイントを解説してもらう。今回は木造住宅の劣化メカニズム、木材の特徴などを紹介する。


文・赤嶺雄一郎 (株)タイズリフォーム代表取締役
 

木内部も防蟻・防腐処理

木造建築物の劣化は素材である「木材そのものの腐食」とも言えます。具体的には腐朽菌・シロアリ・昆虫による「生物的劣化」と紫外線や風化による「非生物的劣化」の二つに分けられます。今回は進行が非生物的劣化より早い、生物的劣化についてお話します。

腐朽菌が木腐らす

まず腐朽菌とは担子菌類で、キノコの仲間です。気温20~30度の環境を好み、木材の含水率が20%を超えると増殖します。腐朽菌は木材の主成分であるセルロースなどを分解してしまうため、文字通り木材を腐らせてしまいます=写真1

これに対してカビは木材の表面に付着しているほこりや脂、糖などを栄養源とするため、見た目は悪いですが腐朽菌のように木材そのものを分解する力はありません=写真2

写真1

木材に着く腐朽菌。木の主成分であるセルロース、セミセルロース、リグニンを分解するため木の強度は低下するが、自然界では重要な分解者である

写真2

押入に発生したカビ。防カビ剤のほか、換気をよくしたり、木材表面のホコリや脂をこまめに拭き取ったりすることも有効な対策


シロアリ高湿好む

次はシロアリです。日本に生息する代表的なシロアリはヤマトシロアリ、イエシロアリです。これらは土壌性シロアリと呼ばれ、土中などの湿度の高い場所を好みます。シロアリの侵入を防ぐため、建築基準法では地面から高さ1㍍以内にある構造木材なども防蟻処理することが義務付けられています。

しかし近頃、沖縄でもアメリカカンザイシロアリというシロアリが多く見られるようになりました。これは海外から輸入された家具や木材から入り込んだと言われています。

厄介なのはこれらのシロアリが乾燥した木材の中に巣をつくり食害するだけではなく、飛来侵入すること=写真3。防蟻処理が施されていない2階のバルコニーや屋根裏などから侵入します。対策として、木材に保存剤を使用する方法が一般的に行われています。

写真3

体色が褐色のアメリカカンザイシロアリと黒色のヤマトシロアリは日中に群飛する一方、羽が茶色のイエシロアリは夕方に群飛する

 
浸透加圧で木保存

木製のおわんはそのまま使うとすぐに割れたり変形したりするので、漆を塗るわけです。このような木を長く持たせるための処理のことを「木材保存処理」と言います。この技術の歴史は古く、古代エジプトのミイラ保存に使われていたクレオソート油という薬品が木材保存にも利用されています。

近年では表面に薬剤を塗るだけでなく、木材内部の深くまで防蟻・防腐剤を浸透させる「浸透加圧処理」が保存処理の主流となっています=写真4

■写真4

防蟻防腐を目的に「浸透加圧処理」された木の断面。中心側の芯材は浸透にしにくい(上)が、端の辺材は深く浸透する(下)。効果は10年以上続くことも

 
水気も強度に影響

乾燥した木材は、室内が乾燥している状態では水分を吐き出して縮み、逆に湿気が多い時には吸収して膨らむ性質を持っています。「木材は生きている材」と言われるゆえんです。

また木は許容される含水率の範囲で乾燥するほど強度が増し、腐朽菌が増殖しにくい状態となるため長持ちしますが、雨漏りなど常時水にさらされると強度が低下し一気に腐食が進みます=写真5

木造住宅の長寿命化のためには、定期的な清掃点検、小屋裏や床下および外壁の通気性の確保、防蟻対策、そして雨水の浸入を防ぐための屋根外壁の計画的な修繕が必要です。具体的なメンテナンス手法については、過去記事で紹介しています。興味のある方はぜひご一読ください。

■写真5

漏水で腐食が進行した木造屋根裏。木は本来、ぬれても乾燥すれば機能を回復するが、常時、水に浸る状況が続くと腐朽菌が増殖するため腐り始める



【教えてくれた人】
あかみね・ゆういちろう/(株)タイズリフォーム代表。1級建築士、マンション維持修繕技術者、既存住宅状況調査技術者、宅地建物取引士

(株)タイズリフォーム
電話=098・975・7815​

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2058号・2025年6月13日紙面から掲載

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