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2025年8月8日更新
中古マンション購入 管理状況の確認を|知っておきたい!補修・改修のキホン⑰
今ある家に住み続けるには定期的なメンテナンスが欠かせないが、何から手をつけていいか分からない人も多いのでは? 外装を中心に建物全般の補修改修を手がけるタイズリフォームの赤嶺雄一郎さんにポイントを解説してもらう。今回は中古マンション購入前の検討事項について。物件の管理状況を事前に把握することをオススメする。

文・赤嶺雄一郎 (株)タイズリフォーム代表取締役
中古マンション購入 管理状況の確認を
建築費高騰などにより、「中古マンション」の購入を検討されている方も多いと思います。分譲マンションとは各住戸を所有する「区分所有者」が2人以上いる集合住宅のことです。賃貸マンションと比べ、住設備や共用設備が充実していることが多く、防犯カメラなど高いセキュリティー性が特徴。また、区分所有者は自ら所有する「専有部分」を自己資産として、自由にリフォームや売却ができます。
一方で、建物のコンクリート部分やエレベーターなどは「共用部分」と呼ばれ、所有者は全区分所有者で構成される「管理組合」です。共用部分のメンテナンスや修繕工事に要する費用を確保するため、各区分所有者は築年数に応じた適正な管理費や修繕積立金を継続的に管理組合へ納める義務があります=図1。

細則に則し専有部を工事
軽微な工事を除き、リフォームを実施する前には管理組合が定める「専有部分の修繕などに関する細則」に則り、工事計画書を提出。組合の承認が必要です。細則では「遮音性の低いフローリングの使用」、「電気容量を増やす工事」、「共用部であるコンクリートに穴を開けること」などが原則禁止されています。
注意したいのは間仕切り壁の位置変更やフローリングの張り替えの際、「耐用年数が近づいた給水・給湯・排水などの管も同時に取り替えを行う」ということです=写真1。
私は劣化した配管から下階へ漏水した事故を数多く扱ってきました。いったん事故が発生すると、調査のためにせっかく奇麗にリフォームした壁や床を解体する必要があるだけでなく、被害復旧に際して、当事者が深刻なトラブルに見舞われる可能性もあります。
■写真1 ①〜⑤
タイズリフォームが手がけた事例。古いマンションで多用されている鋼製の給排水管の劣化状況など。いずれも壁内や床下にあるため、漏水が発生した時点で、被害が大きくなっていることが多い





配管の所有区分は厄介
区分所有法でパイプシャフト(以下、PS)にある電気・ガス・水道の各メーターから住戸側の配管は「いずれも専有部である」とされていますが、PSの土間内にある専有部配管から漏水があった場合、共用部配管とみなされます。そのため、管理組合が管理することが一般的です。ただし、管理規約によって異なる場合もあるため注意が必要となります=図2、写真2。


大規模修繕の有無を把握
中古マンションの購入前、とても重要なのが大規模修繕工事が実施されているかを確認することです。
どんなに奇麗にリフォームされている住戸であっても、外壁の剥落や漏水事故が多発している建物だとその価値が大きく低減します。これまでどのような修繕工事が実施されてきたか、長期修繕計画に基づき適正な修繕積立金が設定されているかなども必ずチェックしましょう。「管理費が安いから」という理由で購入すると、購入後に修繕積立金が大きく上がることがあります。
また「共用部が清掃されていない」、「修繕計画が無い」、「管理費の滞納者が多い」などの問題があると快適な生活を送ることが難しく、資産価値は下がります。
多くの分譲マンションは管理会社に管理を委託していると思いますが、管理主体はあくまでも管理組合です。購入を予定しているマンションの管理活動が活発かどうか、あらかじめ調べておくのも良いでしょう。

【教えてくれた人】
あかみね・ゆういちろう/(株)タイズリフォーム代表。1級建築士、マンション維持修繕技術者、既存住宅状況調査技術者、宅地建物取引士
(株)タイズリフォーム
電話=098・975・7815
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2066号・2025年08月08日紙面から掲載