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2023年5月5日更新

【2】コンクリートのひび割れ①(発生の原因)|ひび割れゼロは難しい[マンション修繕のススメ]

文・あかみね かつじ/一級建築施工管理技士
コンクリートに発生する「ひび割れ(クラック)」は、目に見えて劣化具合が分かるだけに不安を抱える人も少なくない。躯体が主にコンクリートでできているマンションではなおさらだ。そこで今回は、ひび割れの原因や仕組みを解説する。



乾燥や塩分でひび発生

コンクリートのひび割れが、発生する要因はいろいろあります。

例えば「乾燥収縮」は、打設されたコンクリートの中の水分が蒸発して、体積が収縮することで発生します。コンクリートは、圧縮される力に強い一方で、引っ張る力に弱いため、水分が抜けて引っ張られた部分がひびとなっていくのです。

沖縄では、夏場の強烈な日差しで水分が急激に蒸発し、コンクリートが極端に早く乾燥することで、ひび割れにつながることも。そのため夏場にコンクリートを打設する時は、水をまいたり、ビニールシートをかけたりして、急激な乾燥を防ぎます。

コンクリート内部の鉄筋がさびてしまう「鉄筋の発錆」は、コンクリートの中性化や塩化物の混入・浸透によるもの。代表的なのが海砂の使用です。海から採取した砂をそのまま骨材として使ったことで、塩分によって内部の鉄筋がさびて膨張し、表面にひびが現れてきます。


複数の原因が重なることも

ほかにもいろいろな原因がありますが、大きく四つのカテゴリーに分類できます。①使用材料②施工③使用環境④構造・外力―の四つです。

先ほど紹介した乾燥収縮であれば②の施工、鉄筋の発錆なら①の使用材料が該当します。また、鉄筋を覆うコンクリートの厚さ「かぶり厚」の不足(②施工)や、コンクリート中性化(③使用環境)なども、鉄筋の発錆に結びつくことがあります。
 
屋上パラペットに発生したひび割れ。雨漏りにつながる可能性があるため早めの補修が必要​


さらに、「乾燥収縮でできたわずかなひび割れに塩分が浸入し、コンクリート内部の鉄筋をさびさせることでより大きなひび割れにつながる」など、複数の原因が互いに助長し合うように作用する場合があります。

そのため、コンクリートの建物でひび割れの発生をゼロに抑えることは難しいのが現状です。

重要なのはひび割れの主な原因を調査し、すぐに対応すべきなのかを判断して適切な補修をしていくこと。特に屋上部分は雨漏りにつながるので要注意です。被害が広がる前にマンションの管理会社や施工会社、建築士などに相談してみるといいでしょう。

次回はひび割れの補修方法について紹介します。


 ひび割れが発生する主な原因 
※カッコ内の数字は原因のカテゴリー①使用材料②施工③使用環境④構造・外力
 

アルカリ骨材反応(①)

コンクリートの中のアルカリ成分が、骨材(砂や砂利)の中の成分と反応し、異常膨張を起こすことでひび割れが発生
 

鉄筋の発錆(①②③)

コンクリートの中性化や、塩化物の混入・浸透により、内部の鉄筋がさびて膨張。その分、表面も膨らみ、ひびが発生


乾燥収縮(②)

打設されたコンクリートの中の水分が蒸発して、体積が収縮する際の引張力(ひっぱりりょく)にコンクリートが耐えられず発生


ブリーディング(②)

コンクリート打設後、骨材などが沈み、表面に水が浮き上がる現象のこと。しかし、配筋された鉄筋の上に載っている骨材は沈まないため、水が蒸発した時に、コンクリート表面に段差が生じ、ひび割れとなる


セメントの水和熱(①②)

コンクリート内のセメントと水が反応することで熱が発生し温度が上昇。温度が上昇するとコンクリートは膨張し、降下すると収縮する。これを繰り返すたびに引張力が発生し、ひび割れを起こす


型枠のはらみ(②④)

固まりきっていないコンクリートは、内側から外の型枠に向かって「内圧」と呼ばれる力が発生する。その際に型枠を抑える治具が不足していると、型枠がはらんでひび割れにつながる


環境温度・湿度の変化(③④)

コンクリートは温度が10度上昇(降下)するたびに約1㍉膨張(収縮)する。中心部と表面部の温度差が大きいほど表面に引張力が発生してひび割れにつながる


不等沈下(④)

建物の下の地盤が均等に沈下せず、傾斜を引き起こすと、建物が傾いて躯体に無理な力が発生し、ひび割れが生じる


 

 ひとことアドバイス 

・屋上部分のひび割れは雨漏りにつながる可能性があるため早めに補修を。
・原因究明は自身で判断せず、専門家による判断を仰ぎましょう。

 


あかみね・かつじ/TNOコンセプト㈱・本気でペイント事業部営業部長、一級建築施工管理技士


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1948号・2023年5月5日紙面から掲載

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