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2019年9月6日更新

譲り受け 夫婦の色に|(株)紀建設 

[こだわリフォーム・間取り変えず内装だけ 部分改修・築6年・一戸建て・RC造]築6年で親から譲り受けた家を、夫婦の好みに合わせてリフォームしたYさん(63)。間取りは変えずに内装だけの改修だが、白い大理石調の床や、使いやすさにこだわったキッチン収納などで雰囲気はガラッと変わった。一方、既存のクロスや建具を生かすことで、両親の面影も残った。


1階リビング・ダイニング。フローリングだった床を、大理石調のタイルに張り替えたことで、全体的に明るい印象。クロスや腰壁、建具などは既存のものをそのまま生かしている
           
▼リフォーム前

両親の思い残しつつ

改修前のお悩み
「親から譲り受けた家を、自分たち好みの空間に」


1階ダイニング、キッチン。キッチンの壁面収納や床、カッシーナ社製のダイニングテーブルは新しくしたもの。一方、アイランドキッチンや写真左のつり戸棚などは既存のものだが、色や雰囲気が違和感なく調和している
           
▼リフォーム前


1階の床全体に敷かれた、大理石調のタイルが印象的なYさん宅。フローリングだったものを、夫人(58)が「今も通う、東京にある料理教室の先生のご自宅のようにしたくて」選んだ。Yさんも「雰囲気が変わったし、とても明るくなった」と喜ぶ。

その床の色に合わせて真っ白にしたキッチンの壁面収納は、料理好きな夫人のお気に入り。「以前は棚だけだったけど、引き出し式にしてもらったので、たくさんの食器を全部見渡せるし、出し入れしやすい」。料理に合わせた器選びにも一役買っているという。

「木で装飾されたアイランドキッチンも白に改修するか迷った」と夫人は言うが、「以前住んでいた両親は、木の雰囲気が好きだった。その思いを残したくて」そのままにした。


B&Bイタリア社製の黒いソファが置かれた1階リビング。棚のガラス戸は、中が見えないよう板戸にした。テレビ背面の壁をタイルにしたことで、大型テレビを壁に掛けられるようになった。テレビ背面には可動式アームが付いており、写真右手のダイニングやキッチンに画面を向けられる
           
▼リフォーム前


夢ふくらんで改修
Yさん宅はもともと両親が建てて暮らしていた家。しかし父が他界し、母も施設に入居することになったため、Yさん夫婦が譲り受けた。母からは「好きにしていいよ」と言われた。

そこで、Yさん夫婦はまず、古いたんすが並んでいた2階の収納をウオークインクローゼットにする計画を立てた。しかし、「使いにくい部分などもあり、少しずつ夢がふくらんでいって」夫婦好みに改修することに。

設計・施工は、夫人が「すてき」と感じた県内の料理教室のオーナー宅を建てた事務所に依頼した。

キッチンやリビングにある棚のガラス扉は中身が見えないよう板戸に変え、車庫と裏玄関の間にあった段差は車いすでも行き来できるよう電動リフトで解消。

一方、リビングの棚に収められた新しいオーディオセットの中には、父が大切にしていた機械もある。Yさんは「盆や正月など人が集まる時に、父が好きだったレコードを流して、思い出にふけることもある」。

夫婦に合わせたリフォームながら、両親の思いもしっかり引き継いだ。


キッチンの壁面収納は、床の色に合わせた白。引き出し式になっているほか、スチームオーブンも組み込まれている


既存の雰囲気と調和

Yさん宅 リフォームのカギ
改修するものと、既存のクロスや建具などとの色合いや雰囲気をなじませた。工事は施主在住のまま実施。

築6年の家を改装したYさん宅。建築士の井出真太郎さんは「躯体に問題はなく、内装もきれいな状態だった。そのため、大きな間取り変更などはせず、造作家具や建具などの生かせる部分は生かしながら、Yさん夫婦のイメージを形にしていった」と話す。

その中で気を配ったのが「全体的な雰囲気のバランス」。例えば、1階床の大理石調タイルは、「既存の壁やクロス、建具などとの色合いがなじむようなものを選んだほか、テレビ背面の壁も黒のタイルにすることで、床だけがモダンな印象になり過ぎないようにした」。

打ち合わせの際は、新調する家具なども含め、改修後のイメージを改修前の写真にCGで合成して、色合いなどを細かく確認。「改修前の状態を見慣れた施主が、改修してどう変わるかを図面だけでイメージするのは難しい。CGだと納期に数カ月かかる家具を置いた状態もイメージしやすくなる」。

ダイニングのペンダント照明も、数万通りの色の中から、建具や床に合わせた茶系や白系、夫人の好きなピンク系などを選んで、写真に合成したという。

また、工事は、Yさん夫婦が住んでいる状態のまま進めていった。「トイレやシャワー室、寝室などが複数あったのでできたこと。動線を確保しながら作業した」。仮住まいや引っ越しの費用と手間を抑えられた。


2階バルコニーの庭。ヤシやクワズイモが茂っていた場所にサボテン類を植栽。室内との大きな段差もウッドデッキを設けることで解消し、手入れや管理をしやすくした



裏玄関。以前は室内に段差があったが、廊下の高さを車庫まで延ばし、電動リフトを設けることで段差を解消。車いすを使うことになっても、外へのアクセスがしやすい
        
▼リフォーム前(室内側から見た様子)


建築士・井出さんに聞いた リフォームのメリット
築浅ではあったが、洗面室・浴室から床下への漏水が見つかった。そこで、在来工法の浴室を解体し、配管をやり替え、防水対策をした上でユニットバスにした。リフォームは気付けない不具合に気付けるメリットがある。エアコンや水タンクの清掃など、メンテナンスも同時にできた。もちろん、今回のように内装だけでも、イメージがガラッと変えられるのも利点。​


2階書斎。既製品のデスクや本棚で手狭になっていたが、それぞれを造り付けにすることでスッキリさせた。写真左手にあったクローゼットへの出入り口は、今では収納の一部になっている


以前は大便器と小便器が並んでいた1階トイレ。拡大鏡や壁面収納、可動式スツールなどでホテルのパウダールームのよう。湿式から乾式にも改修してある



[DATA]
家族構成 :夫婦
躯体構造 :鉄筋コンクリート造
築  年  数  :6年
1階床面積:178.36平方メートル(約54坪)
2階床面積:146.35平方メートル(約44.3坪)
3 階床面積:63.77平方メートル(約19.3坪)
工  期 :約3カ月
設  計 :(株)紀建設  井出真太郎、伊佐友佑
施  工 :(株)紀建設
電  気 :南光開発(株)
水    道 :(株)琉泉設備
オーディオ:(株)アバック 沖縄店 當山寛人
キッチン:(有)MOV 照屋涼子
植  裁:PLANTADOR 新城圭吾




[問い合わせ先]
(株)紀建設
090-890-6225
www.ki-kensetsu.jp


撮影/ララフィルム・泉公 編集/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1757号2019年9月6日紙面から掲載

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出嶋佳祐

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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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