お住まい拝見
2018年12月21日更新
夫婦の趣味が彩りに|株式会社ADeR
[お住まい拝見 シンプルかつスッキリ]沖縄市の住宅地にあるNさん宅は、見た目も造りもシンプルな平家。アンティーク雑貨と自転車、夫婦が好きなアイテムを上手に取り込み、スッキリと暮らす。
庭に面した1階のLDK。リビングは天井高3.45メートル。一角にあるワーキングスペースの打ち放し壁やコンクリート製のキッチンが、白を基調とした空間のアクセントに
インテリアを楽しむ
Nさん宅
RC造/自由設計/家族3人
玄関ドアを開けると、奥行き約3.6メートルもある広い玄関に目を見張る。トライアスロンを楽しむNさんが、「自転車の練習や保管、メンテナンス作業ができるスペースに」と希望してできた。コンクリート製のカウンターに置かれたレース用の自転車は、インテリアとしても映える。ホールの壁は、夫人の希望で黒板ボードに。リースや小物を飾り、季節のしつらえを楽しむ。
室内は、間取りもしつらえもシンプル。南東にある庭に面してリビングとダイニングキッチンを設け、北西側には寝室と子ども室、水回りが並ぶ。
吹き抜けになったリビングに接する子ども室は、引き戸を開け放てば一体的に使え、2歳の長男が元気に駆け回る。
リビングのテレビボードや、ダイニングテーブルを兼ねたコの字形のキッチンはコンクリートでしつらえた。「コンクリートのキッチンは、建築士さんからの提案。料理を作る、出す、片付ける作業をキッチンから出ずに完結できるよう、型にはこだわりました。とても使いやすくて気に入っています」と夫人はにっこり。
玄関。コンクリート製のカウンター=写真右手=を造り付け、上下2段に自転車が置けるようになっている。床は打設時に色を浸透させる仕上げ材「カラクリート」を用い、シックに仕上げた
コンクリートでしつらえたコの字型のキッチンは、ダイニングテーブルも兼ねた造り。写真正面の出窓は奥行きが深く、空間に広がりをもたらす
キッチンからリビングを見る。吹き抜けに設けられた高窓からは緑の借景も楽しめる。南側の掃き出し窓を開け放てばデッキまで一体的に使える(株式会社ADeR提供)
リビング北西側に接する子ども室。仕切り度は戸袋にしまえるようになっていて、開け放つとLDKと一体的に使える
将来は賃貸も想定
結婚後、アパートで暮らしていたが、「今はローンの金利が低く、妻の実家所有の土地もあったので、家賃を払うより家を建てるほうがいいと考えました」とNさん。
設計は家族の紹介で出会い、「作品を見て一番気に入った」建築士事務所に依頼した。「将来は実家に戻り、親と同居する可能性もある。いずれ賃貸に出すことも想定して、外国人も好みそうなシンプルな仕様にしてもらいました」。
夫婦そろってアンティークが好き。夫人は、「ショップを回ったり、インターネットで小物を見つけて飾っていくのがすごく楽しい」と目を細めた。
玄関ホールのスイッチと黒板は夫人のお気に入り。季節の行事に合わせてディスプレーを変えて楽しむ
ここがポイント
コンクリート使い 美観高め費用圧縮
Nさん宅の一番の特徴は、コンクリートの特性を生かした多彩な使い方だ。設計を手掛けた建築士の仲本昌司さんは、「仕上げ方を変えたり、キッチンや収納の一部をコンクリートで造ることで、デザイン的な面白さが生まれるだけでなく、コストダウンにもつながりました」と説明する。
室内外とも打ち放しの上に塗装を施しているが、左官補修の工程を省くことで粗い質感が残り、おおらかな風合いに。人件費も削減できた。また、リビングの一角は型枠に使った杉板で模様づけ、コンクリート製のキッチンはツヤを出すなど、仕上げに変化をつけることでデザイン性が高まった。
キッチンだけでなく、テレビボードや洗面台などもコンクリートで仕立てた。打設の工程で一緒に形づくれるため、コスト圧縮にもつながる。
洗面室。造り付けの洗面台はコンクリート製。夫人が選んだペンダントライトがおしゃれ度を高める
型枠に使った杉板で模様づけした打ち放しの壁が印象的なリビングのワーキングスペース。上部の棚にはエアコンを目隠しして収めている
外観は、「コンクリートならではの重厚感を表現するため、フラットな天井を実現するために採用した逆梁を生かして屋根は立ち上がりを高くするなど、壁も屋根も正面から見える幅が厚くなるように工夫しました」。
一方で、前面道路からの視線を遮るように設けた玄関の壁は、地面や屋根と接する部分のコンクリートを切り離して隙間を設けることで、軽やかさも出した。
中央に張り出した杉板模様の壁がアクセントになったデッキテラス。コンクリートで仕立てた洗い場〓写真左手〓もあり、Nさんが釣った魚をさばくのに重宝している(株式会社ADeR提供)
[DATA]
家 族 構 成:夫婦、子ども
敷 地 面 積:297.85平方メートル(約90.1坪)
1階床面積:102.79平方メートル(約31.1坪)
建 ぺ い 率:36.93%(許容70%)
容 積 率:34.51%(許容200%)
用 途 地 域:未指定
躯 体 構 造:壁式鉄筋コンクリート造
設 計:株式会社ADeR 仲本昌司
構 造:建築設計庵
電 気:(合)中江電気建設
水 道:(有)ライフ工業
[問い合わせ先]
株式会社ADeR
098‐800‐1869
http://aderarchitects.com
撮影/矢嶋健吾 取材/比嘉千賀子(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1720号・2018年12月21日紙面から掲載
この記事のキュレーター
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- 比嘉千賀子
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編集者
住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。