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2019年8月16日更新

台所床が壁に!家は“遊べる箱”|建築設計事務所アトリエセグエ

[こだわリノベ・夫人の生家を改修 全面改修・築40年余・一戸建て・RC造]夫人が生まれ育った築40年以上の2階建ての家をリノベーションしたSさん(39)。リビングでひと際目を引くテレビ裏の壁は、以前の台所の床を再利用したというから驚きだ。「家は自由に遊べる箱」。思い出も今のライフスタイルも生かせる、リノベならではの醍醐味(だいごみ)が詰まっている。


1階は、リビングが独立する(リノベ前)など細切れだった部屋の壁を取り払ってオープンなLDKに。コンクリートむきだしの高い天井や、既存の台所床を活用した中央の間仕切り壁、土間玄関などの素材感と、夫妻好みのカフェをイメージしたインテリアがマッチする
▼リノベーション前


作り過ぎず 足し引き楽しむ

改修前のお悩み
「別々だったキッチンとリビングを一つに。LDKは大きく、土間も欲しい」


玄関側から見た1階のリビングダイニング。照明やシーリングファンの配線類も天井裏(2階床下)に隠したことでスッキリさせた。窓が通常より大きめなのは、夫人の両親が購入する前は店舗だった時の名残。その大きな窓も、今回生かした点の一つだ

光を取り込む3方の窓と、コンクリート梁があらわになった高い天井が開放感を増すリビングダイニング。「むきだしの天井が住宅っぽくない雰囲気でカッコいいでしょ」とSさん。中でも目を引くのはテレビ裏の間仕切り壁だ。「実は、リノベ前にキッチンで使われていた床を再利用したもの。モザイクっぽい柄が好きでどこかに生かせないか建築士さんや業者さんに相談したらノッてくれて。1枚1枚丁寧に剥がして磨き、張り直してくれた。友人たちも『良いね!』と驚きます」

昔からモノづくりやビンテージ家具が好きなSさん。夫人の両親が家を手放すと聞き、「使わないのはもったいない」と考えたのがリノベーションを選んだ理由だ。

別々だったリビングとキッチンは一つにまとめ、夫人希望の対面式に。床はチークの無垢(むく)材に張り替え、玄関はベビーカーや自転車が置けて作業場にもなる大きな土間に変えた。一方で、状態の良かった躯体はそのまま生かしたほか、階段やサッシ枠は磨いて再利用。2階も、床は張り替えず天井だけ塗装した。

重視したのは「作り込み過ぎないこと。自分で足したり引いたりできるし、子どもが独立したら使い方も変わりそうだから」とSさん。例えばあらかじめ棚を造り付けることが多いキッチン収納の内部も、「後で組み替えやすいように」と手持ちの棚を活用した。ダイニングテーブルはDIY。壁の塗装や床は、既存部になじませマットに仕上げた。

▼リノベーション前

           

リノベーション前のリビング北側(右写真正面)は玄関土間に変えた(上)。土間正面の小さな出入り口の奥は和室。荷物の出し入れはもちろん、アロマが趣味の夫人が将来ワークショップを開いた際もLDKを通らず直接和室に行き来できる

思い出話に花
「リノベーションで間取りをここまで変えられるとは思ってもみなかった。キッチンからリビングを見渡すのが夢だったのでうれしい。広く明るくなりました」と話すのは夫人。「ここは私が小さい頃から住んでいた場所。階段には親とけんかして3段飛びで駆け上がったり、弟と遊んだ思い出もある。室内は一新したけれど、テレビ裏の壁も含め『昔の感じが残っている』と両親も喜んでます」と顔をほころばせる。

幸せな記憶を、自分たちのライフスタイルに程よくミックスさせたSさん一家。「引っ越した翌日に生まれたから、今の家と同じ年」といとおしそうに抱く娘(2)と共に、新たな家族の歴史を重ねていく。


Sさん夫妻に聞いた
リノベを選んだ理由

新築も考えなかったわけじゃないけれど、妻の生まれ育った家が使えるなら、使わないのはもったいないと考えたから。手間も随分かかったと思いますが、僕らの思いをくみ取ってプロ目線で要望をカタチにしてくれた建築士さんと業者さんには本当に感謝。両親も含め、いろいろな人に助けられました。

リノベの面白さ
制限がある中で、どれだけ変えられるかっていうのは楽しみだった点の一つ。出来上がるまでのドキドキ感はあったけれど、今はもう元の間取りが思い出せないくらい(笑)。雰囲気はガラリと変わったけれど、思い出話ができるのがうれしい。両親もすごく喜んでくれています。
 

利点引き出し 家の記憶も残す

Sさん宅 リノベのカギ
1階はLDKをまとめ土間玄関と一体化してオープンに。作り込み過ぎず既存と新設のバランスを図ることで「家族の思い出」ごと生かした

Sさん宅でひと際目を引く「リビングダイニングの天井高」「風合いが増したコンクリート天井や梁」「キッチンの床を再利用したテレビ裏の間仕切り壁」は、どれも以前からあるものの、光が当たることはなかったものばかり。リノベーションを任された建築士・比嘉俊一さんが「既存の建物が持つ魅力、利点を最大限に引き出した」賜(たまもの)だ。

デザイン的にもコスト的にも「使えるものは使いたい」とのSさんの考えを受け、作り込み過ぎないよう重視。1階はキッチンの位置を変え、玄関は奥行きのある土間仕上げにしてLDKと一体化することで、明るくオープンな空間に。リビング以外は天井を張ってメリハリをつけたほか、玄関や毎日使うキッチン・浴室・水栓などにはコストをかけた。

2階は、子ども室は間仕切りを取り払い、広過ぎた寝室は一角を目隠ししてパソコンスペースや収納にしたものの、内装は天井を塗装したのみ。階段やサッシ枠など使えるものは再利用。収納も必要最低限にするなど工事種目を減らし、コストをおさえている。「既存部と新設部のバランス」を考え、壁の塗装や床の質感にも気を配った。

比嘉さんは「夫人の生家だったため住み継ぐことを意識。昔の家の記憶が一部でも残ることで、家の楽しみ方に深みが増す。それができるのがリノベの強みであり面白さ」と語った。


▼リノベーション前)

           

壁付けだったキッチンは向きと位置を変えることで、夫人念願の対面式に。出窓はそのまま生かすことで、奥まったキッチンながら明るさは十分。カウンターの背面は収納になっている


2階寝室は、北側の一部を目隠し(上写真)し、ウオークスルーのクローゼットに(下写真)。窓際に設けたカウンターは、Sさんがパソコンスペースとして活用している






洗面脱衣室。水回りは既存の範囲内での配置変更にとどめたため、収納や家電の向きなど、使い勝手と収まりを細かく調整。洗面台は余った床材を活用した

[DATA]
家族構成 :夫婦、子ども1人
躯体構造 :鉄筋コンクリート造
年  数 :40年以上
1階床面積:71.79㎡(約21.7坪)
2階床面積:51.03㎡(約15.4坪)
工  期 :約3カ月
設  計 :建築設計事務所アトリエセグエ 比嘉俊一・種田知枝
施  工 :(有)栄建設 與古田勝
電  気 :(株)宜野湾電設 仲村新吾
水    道 :(株)ライフ工業 高山佳晃
ガ      ス :(株)りゅうせきエネプロ 関東亮



[問い合わせ先]
建築設計事務所アトリエセグエ
090-8406-8504
http://seguearchitects.jp


撮影/ララフィルム・泉公 編集/徳正美
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1754号2019年8月16日紙面から掲載

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