こだわリノベ
2019年11月15日更新
クールで上質 大人の遊び場|(有)エバデザイン
[こだわリノベ・インダストリアル風 全面改修・一戸建て・築25年・RC造]築25年の2階建ての家をリノベーションしたYさん(49)。磁器タイルなど黒でまとめた1階は、クールで上質な大人の空間だ。思い描いたのは、工場をイメージした「インダストリアルテイスト」。照明は2階まですべて違うデザインを吟味するなど、こだわりを詰め込んだ。
1階LDK。天井懐(ふところ)や改修前に使われていたクロスや木を取り払い、床はタイル張りに。天井や壁は打ち放しのコンクリートを塗装した。黒を基調とした内装に夫婦が好きで集めてきたというビンテージの家具が映える、スタイリッシュな大人の空間に
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▼リノベーション前
テーマはインダストリアル
改修前のお悩み
「生活感をなくし、限られた空間を広く」
キッチンからから見たリビングダイニング。掃き出し窓は開口幅を広げ、デッキを新設。写真左奥の玄関ホールは正面に見える壁一面に鏡を張ったことで、広がりを演出した。テレビの上にあるスーパーマンの頭文字とシルエットをかたどった壁飾りは、施工中にYさんが職人たちと作ったもの
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▼リノベーション前
Yさんの好みは鉄や石などのクールな質感、赤と黒、そして工場をイメージさせるインダストリアルテイスト。その希望を詰め込んだのが1階のパブリック空間だ。
天井も壁もコンクリートを塗装しただけ。天井は懐を取り払って高さを出し、梁や照明の配管もむき出しで仕上げている。趣味で手作りしているというミニチュアクラシックカーが飾られた壁のへこみは、「前のトイレの手洗い器が埋め込まれていた所」といたずらっぽい笑みを浮かべるYさん。デザイン照明を施しているのは使わなくなった配管だ。「キレイ過ぎると面白くないからね」と、通常なら埋めたり取り払う部分も、そのまま活用した。
黒でまとめた室内は、床に敷き詰めた大判の磁器タイルや、夫婦が集めてきたビンテージの家具が上質さをプラス。らせん階段の赤が効いている。
2階はプライベート空間。個室をつないでオープンにし、増築したベランダに浴室を移動。内装は建築士の提案でホテルライクに仕上げた。
浴室はYさん念願のガラス張りに。同じくガラス張りで仕上げた階段室との間の間仕切りが明るさと広がりを生み、非日常を演出する。ユニークなのは引き戸。オレンジとモノトーン、面によってクロスを張り分けたことで「部屋によっても違った印象が楽しめます。1階とはイメージを変えて正解」と夫妻はうなずいた。
改修前は階段のすぐ隣の位置にあったトイレを移動し、Yさん希望のらせん階段を設置した。階段脇の飾り棚にはYさんが趣味で集めているミニチュアカーがズラリ
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▼リノベーション前
住み続けられる家に
ボイラーや配管の修理などは「自分でやってきた」というYさん。「高い所や隠れた所にあると、作業しづらいし、年を取るごとにキツくなる。配管類などは一新して表に出すなどメンテナンスがしやすく、この先20年は住み続けられる家にしたい」こと、料理好きな夫人が「将来、レストランも開ける空間に」とリノベーションに踏み切った。
知人に紹介された建築士とは「言いたいことが言い合える」と意気投合。工事中は朝晩現場へ通い、細かい仕上がり具合を確認。時には職人と一緒になって作業するなど、プランニングや工事の過程も存分に楽しんだ。
引っ越して1カ月。友人らが遊びに来るとキッチンがバーカウンターに早変わり。「上まで響く」オーディオで、好きな音楽をかけながらくつろぐ。「庭も室内も、まだまだやりたいことはたくさん!」。Yさんの“遊び場”は進化の途中だ。
Yさんがリノベを選んだ理由
改修前の家も、実は中古住宅を購入して住んでいたもの。とはいえ愛着があり躯体も問題なかったこと、リノベーションなら改修前後の変化も楽しめるため、選択した。メンテナンスのしやすさに加え、床材やオーディオ機器など細部にこだわりたかったので、費用面を考えてもリノベで正解だった。
建具や仕切りで 高さを強調
2階は洋間二間の開き戸を引き戸にして空間をつなげ、階段室との間の間仕切りをガラス張りに。床に張った塩ビタイルは「傷や汚れが目立たないように」とYさんが選んだ
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▼リノベーション前
Yさん宅リノベのカギ
1階は天井を抜きデッキを新設することで黒中心でも高く広く。2階は個室をつなげ、天井・梁まであるガラスの間仕切りや引き戸で広がりを
ポイントはYさんの好きな黒を多用しつつ、限られた空間をいかに広く見せ、使えるようにするか。リノベーションを任された建築士の糸洲芳彦さんは、「黒は光を吸収するため奥行きや広がりを演出する照明効果はほとんど得られない。Yさん宅は壁構造で、以前の洗面室とトイレの間にある壁は耐力壁(たいりょくかべ)だったため取り払うことができず、庭に面する開口部も若干広げる程度しか手を入れられなかった」と話す。
幸い1階は水回り以外、ワンルーム的なつくりだったことから「天井を抜いて高さを出し、庭に面してデッキを新設。2階は洋間二間をつなげてオープンに。ベランダ部分に増築して1階から浴室を移動し、必要な空間を確保した」。飲食店を開くときに備え、公私も階層で明確に分けた。
注目したいのは、玄関ホールの鏡の壁や2階のガラスの間仕切り、建具使いだ。「どれも梁(はり)や天井いっぱいまで高さをとることで階高を強調。スッキリと伸びやかに見せるだけでなく、鏡やガラスは視界を広げ、空間を広く感じさせる効果がある」。特に個性的なクロスを張った2階の引き戸はそれ自体がアートのようで、非日常感の演出にも一役買っている。苦労したのは2階のガラスの間仕切り。「わずか数センチしかないらせん階段と家事室との間を、6人がかりでガラスを持ち上げ施工。職人の協力あってこそ」と話した。
1階のトイレも黒が基調。両サイドの壁には石調クロスを張ってアクセントに
2階寝室。左手に見える引き戸は、寝室側はモノトーン、奥の家事室側は明るいオレンジ色と、面でクロスを張り分けた
エントランス。玄関先の軒を取り払い、スリット入りの目隠し壁を新設。足元は段差を付け、室内のイメージとあわせて黒いタイル張りにした
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▼リノベーション前
[DATA]
家族構成 :夫婦
躯体構造 :鉄筋コンクリート造
築 年 数 :25年以上
1階床面積 :42.97平方メートル(約13坪)
2階床面積 :39.66平方メートル(約12坪)
工 期 :約5カ月
設計・施工:(有)エバデザイン 糸洲芳彦
電 気 :嶺井電気商会
水 道 :山川設備工業
内部塗装 :(株)不二塗装工業
鉄 工 事:(有)佐久本建設工業
[問い合わせ先]
(有)エバデザイン
098-878-5088
https://www.evah-d.com
撮影/ララフィルム・泉公 編集/徳正美
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1767号2019年11月15日紙面から掲載