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2019年6月7日更新

間取り生かし 明るく開放的|中古購入し改修・全面改修・築25年余・一戸建て・RC造

[こだわリノベ・中古購入し改修]伊江村のMさん(32)は、実家の隣に建っていた築25年以上の鉄筋コンクリート造平屋を購入し、リノベーション。もとの間取りを生かしながらも、各部屋の仕切りを取り払うことで、暗い空間が明るく開放的な空間に。たくさんの友人や親戚が集う場となった。


キッチン側から見たリビング。写真左手の和室と一体化して使うことができ、各部屋の窓やハイサイドライトから明るい光が入ってくる。近くに住む親戚が集まり、相撲で県内3位の実力を持つ息子=手前右=と、いとことの取り組みを応援する
▼リノベーション前

改修前のお悩み
「暗い空間を、たくさんの人が集える明るくオープンな雰囲気に」
▼リノベーション前

           

玄関側から見たリビング。つり格子は撤去し、最大高さ4.5メートルの開放的な空間にした。メリハリをつけるためキッチンの天井はあえて低くした


キッチンとダイニング。家全体を見渡せ、手元が隠せるキッチンは妻のお気に入り。ダイニングで心誠くんが頑張る宿題も見ることができる

好機捉え 集える家に
特産の葉タバコ畑越しに島のシンボルであるタッチューを望み、どこからか牛の鳴き声が聞こえてくる。

そんなのどかな環境に建つMさん宅だが、以前の住まいは向かいに建つSさんの実家。「息子の(7)の小学校入学に合わせて宜野座村から実家に移り住んだのですが、すぐに向かいの住人から築25年ほどの家を手放すという話が出て。室内が少し暗かったけれど、実家に近いし、広さもあったので購入を決めました」とSさん。

ちょうどそのとき、妻(31)が勤務する宜野座村内の保育園が建設工事をしていた。そこで、その建設会社に家の改装を相談すると、「もとの形を生かしながらも、仕切りを取り払ったりして、開放的で明るい空間にする案をたくさん出してくれたんです」。タイミングが重なったこともあり、そのまま、リノベーションの設計から施工まで依頼した。

リビングで相撲
玄関ホールを抜けると、最大高さ4.5メートルの勾配天井があるリビング。隣接する和室やダイニングとの間にあった仕切りが撤去され、オープンな空間が広がる。各部屋の窓から入る光により室内全体が明るく、「昼間は電気をほとんどつけないほど」だという。

Sさんは「親戚との食事や模合、野球の父母会で集まったり、息子と相撲をとったりもできる。シチュエーションに合わせてレイアウトを変えやすいよう、家具類は少なめです」。さらに、造り付けのテレビ台やカウンターが床から浮いていることで、空間はより広くてスッキリした印象に。

妻は「職場のある本島でバリバリ働いた後、家に帰ると、開放的な空間とのんびりした空気が相まってリフレッシュできます」。

新設されたデッキテラスでは、妻が息子や、その友だちを前に絵本の読み聞かせをする光景も。暮らせば暮らすほど、親子や地域との絆が強まりそうな住まいだ。

■前田さん夫妻に聞いた
物件購入の決め手

実家に住んでいた時に、ちょうど向かいの方から家を手放す話を聞いて。人を呼ぶにも十分な広さがありましたし、道を挟んでいるだけなので、実家との行き来がラクで子どもも預けやすい。子どもたちだけで自転車に乗ってプールに遊びに行ったり、安心して子育てできる環境というのも魅力的でした。

リノベを選んだ理由
新築へのこだわりはありませんでした。住まいに自分たちの生活を合わせていけばいいかなと。なので今回も、コストを抑えるために少しリフォームして、老朽化が進んだら建て替えればいいかなと思っていたんです。でも、ずっと住みたいと思えるほど良くしてもらえました。


前田さん宅 リノベのカギ
リビング隣の和室やダイニングは、既存の仕切りを撤去して一体化。光を共有でき、室内が明るくなった。
▼リノベーション前

         

土間だった場所にデッキテラスを設置。妻が子どもたちに読み聞かせをするほか、庭でバーベキューをする際にも重宝しているという

仕切り撤去し一体化
リノベーション前にMさん宅を確認した、沖縄家作人NET(やーつくやーネット)の國真住建・國吉真永さんは「防水塗装などが必要だったが、躯体はしっかりしていた」ため、建物の形や間取りはそのままで設計をスタート。

まず、リビング全体を覆っていたつり格子を撤去し、高い天井の開放的な空間に。天井には木を並べて、妻のSさんが求めたリゾート感を演出するとともに、空間にメリハリも付けた。

一方、壁付けから対面式にしたキッチンは、リビングと同じだった天井高をあえて抑えた。「キッチンの天井が高いと料理中のにおいや煙が広がりやすくなる。リビングの天井の高さも際立たせることができる」。

和室とダイニングとの間にあった仕切りも撤去。「リビングからダイニングは見えにくいので、食事中でもプライバシーは守られる」と國吉さん。リビングやキッチンと一体的に使えるようにしたことで、光も共有できるようになった。

夫婦の「島に高校がなく、中学を卒業したら息子は出て行く。おしゃれに目覚める前に巣立つことになるので、子ども室に収納はいらないかな」という話から、家族の普段着は脱衣室の棚にまとめて収納。「お風呂上がりも効率的」とSさん。

そのほか「親や80代の祖父母も来やすいように」と室内全体が段差のないバリアフリーにもなっている。


3面に窓があり明るい子ども室


ベッドからはタッチューが見える。「朝起きて見ると今日もがんばろうという気持ちになる」と息子


寝室。以前は暗く湿っていたが、玄関との間に写真左手の窓を設けることで、明るさと通風を確保した


玄関。妻が季節ごとに飾りを変えて楽しんでいる


和室。リビングと一体化するように畳の周りはフローリングになっている


[DATA]
家族構成 :夫婦、子ども1人
躯体構造 :鉄筋コンクリート造ラーメン構造
年  数 :約25年
1階床面積:110.5平方メートル(約33.4坪)
工  期 :約3カ月
設  計 :(有)國真住建 國吉真永
デザイン監修:大石寛之建築設計事務所 大石寛之
電気  水道:(有)丸良電建工業
キ  ッ  チ  ン:(有)沖縄タカラ住設



[問い合わせ先]
(有)國真住建
098-862-2785


撮影/比嘉秀明 編集/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1744号2019年6月7日紙面から掲載

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出嶋佳祐

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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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