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2025年4月18日更新

[お住まい拝見]天井高5.7メートルの開放感|(株)泉工房一級建築士事務所

[省エネ+通風よく快適]
高台に建つMさん宅。夫妻がこだわった片流れ天井の高さは約5.7メートルで、吹き抜けが1階と2階を立体的につなげて、室内は開放的だ。省エネ性能を高めつつ、南北の窓から抜ける風で快適に暮らす。


1階LD。掃き出し窓を開ければ、南側のウッドデッキ・庭とつながり、吹き抜けと相まって、縦横に開放的。構造体である木梁2本は住宅を支えるだけではなく、見た目の良さにもつながっている

不快な湿気 感じず
Mさん宅
 木造/自由設計/家族3人 

那覇市内の住宅密集地に建つMさん宅。南側の前面道路より約1.2メートル高い位置に新居を構えたことで、Mさんが取り入れたかった「片流れ屋根(天井)」が空高く伸び、一段と映える。「家族が集まるLDは開放感のある吹き抜け空間を思い描いていました」とMさんは笑う。1階LDの天井高さは約5.7メートルで、2階のフリースペースと立体的につながる。LDの掃き出し窓を開ければ、南風が2階までめぐって気持ちがいい。


前面道路から約1.2メートル高い位置に立つMさん宅。片流れ屋根だけではなく、外壁を白や赤茶色で仕上げたことで、目をひく外観となった

開放感に加え、譲れなかったのが「木造住宅」だ。選んだ理由は「木をふんだんに使った家がいいということと、湿気に悩まされていた経験からです」。

以前暮らしていたコンクリート住宅では冷房などを使ってもジメジメ感は残っていたという。この家で暮らし始めてからは天候に応じ、エアコンと自然換気を使い分けても、「不快な湿気を感じることは少なくなった」と夫妻はうれしそうに話す。


梁だけではなく、アイアンと木で造った階段もLDのアクセントに。ファンは取り付けたことで空間の下部にたまりやすい冷気を2階まで拡散し、室温にムラがないようにしている

家事がしやすい動線

家づくりのきっかけは子どもの小学校入学前に新居を構えたいという思いだった。ある日散歩していると、街区内に条件のいい土地を発見。Mさんは「南向きの見晴らしもよく、直感的にここだって思いました」と話す。設計は知人に紹介してもらった建築士に依頼。「住宅性能のほかにも、共働きの私たちのため家事がしやすいプランをいくつも提案してくれました」。

その一つが動線。キッチンの背後に洗濯室など水回りをまとめて配置しただけではなく、玄関から直接行き来できるように。洗濯室には室内干しや収納スペースがあるため、「買い物の荷物を置いてから着替えまでの動きが、一筆書きのようにスムーズ」と夫妻。


キッチンは夫妻が並んで立って作業できるよう、幅・奥行きにゆとりをもたせた


キッチンまでは玄関から直接行き来できる(右) 来客と家族で靴を脱ぐスペースは分け、一角に大容量の収納を設けたことで使い勝手のいい玄関に仕上げた


キッチン背後にある洗面室。室内干しのハンガーラックやアイロン掛けの台を取り付け、家事効率を高めている

天気のいい日にはLDKに隣接するウッドデッキから南側の庭へ。Mさんは「バーベキューを楽しんだり、自作したパラソル付きのベンチでくつろいだりしています」と笑う。

開放的な吹き抜けの室内に屋外空間も含めた、大らかな暮らしがあった。


ウッドデッキやパラソル付きベンチと内外問わず、Mさん一家は思い思いの場所で過ごす


ここがポイント
壁内に通気層 木の傷み防ぐ

Mさん宅の敷地は南側に前面道路よりも1.2メートル高く位置していた。ほか3方向は隣家(建築予定の空地を含む)に囲まれていたため、泉工房の建築士・廣瀬弘充さんは住宅を南向きとし、敷地の高低差を生かして外からの視線を遮るよう計画。「北側には擁壁の新設が必要だったため、造成費用を抑えられるプランを提案しました」と説明する。

一方、室内の設計で軸となったのはUさんが要望した「吹き抜けの開放感」。廣瀬さんは室内にあらわになる梁の数が最小限になるよう、構造を工夫。さらに、アイアン格子を2階の柱と柱の間に取り付けたことで、斜めにも視線が抜ける。これにより、「2階のフリースペースまで立体的につながり、広がりのあるLDKとなっています」。


2階の柱と柱の間は間仕切り壁ではなくアイアン格子を設けたことで、圧迫感が軽減。1階LDと2階が立体的につながり、広がりを感じられる


2階フリースペース。在宅ワークに読書、時にプロジェクターで壁に投影し映画鑑賞、と使い方は自由自在。奥には荷物を収納できるスペースを設けた

開放的な室内でも快適に過ごせるよう、窓に複層ガラスをはめ、壁や屋根に100ミリと厚めの断熱材を施工。省エネ性能を高め、エアコン一台でも快適な室温を保つことができるという。廣瀬さんは「今月から施行された『改正建築物省エネ法』の性能基準を満たし、居心地のいい空間となっています」と話す。

また、壁・屋根裏などの内側には通気層を設けている。「目の行き届かない所まで風が抜けて、家全体に湿気をためこまない。木材の劣化原因となる湿気のほか省エネ性能に気を付けることで、快適な空間で長く過ごせます」。防蟻処理など木が傷まない工夫も施している。


夫妻の寝室。ベッドのサイズから逆算して、収納やデスクスペースの寸法を決めた


[DATA]
家族構成:夫婦+子1人
敷地面積:244.49平方メートル(約73.95坪)
1階床面積:83.03平方メートル(約25.11坪)
2階床面積:30.76平方メートル(約9.3坪)
建ぺい率:40.71%(許容50%)
容積率:46.54%(許容100%)
用途地域:第一種低層住居専用地域
躯体構造:木造・軸組
設計:(株)泉工房一級建築士事務所
   廣瀬弘充
施工:(株)和工務店
電気:(有)システム光
水道:(株)設備技研
ガス:(有)神崎ガス工業

問い合わせ
(株)泉工房 一級建築士事務所
電話=080・1228・7963
https://izumikobo.com/
撮影/桑村ヒロシ 文/市森知
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2050号・2025年4月18日紙面から掲載

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週刊タイムス住宅新聞編集部

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