お住まい拝見
2024年8月9日更新
[お住まい拝見]人が集う2階LDKの家|(株)in tree
[ダウンフロア ベンチ代わりに]料理好きで、来客に振る舞うことも多いTさん(44)。新居は対面式のアイランドキッチンを中心に、ベンチにもなるダウンフロアリビングなど集いやすい造り。景色のよい2階にLDKを配しているのもポイントだ。
顔見え会話弾む空間
Tさん宅
木造/自由設計/家族4人
豊見城市の畑に囲まれた場所に立つTさん宅。2階建てで、1階に浴室や洗面室のほか、ランドリールーム、ファミリークローゼットといった洗濯動線がまとまり、豊かな緑を見下ろせる2階にLDKや個室がある。
夫人(43)は「敷地が広いので平屋にしようと思っていたけど、建築士さんの提案で2階建てにした。こんなに景色が変わるとは思わなかった」とうれしそうに話す。
料理好きのTさんが要望したのは対面式のアイランドキッチン。「以前の家は壁付けで、皆に背を向けて料理をしていた」。新居では、家族や来客との会話を楽しみながら自慢の腕を振るう。「人を招くことも多いので、ダウンフロアリビングも重宝しています。新年会をしたときは15人くらい集まった。皆あちこちに座ってくつろいでいた」。床が40センチ下がったリビングをベンチ代わりにし、にぎやかに過ごした。
内装は、漆喰(しっくい)の白壁が生きるモノトーン。「スタイリッシュな雰囲気にしたかった」と夫人。外観も、木の質感を見せつつシックに仕上がっている。
Tさんが希望した対面式キッチン。料理をしながら家族や来客との会話を楽しむ。奥にはパントリーがある
リビングは床が40センチ下がったダウンフロア。「こもり感」があって落ち着いた空間になるほか、ベンチ代わりにもなる。最高3.6メートルある勾配天井が実際以上の広さを感じさせる
洗濯動線が10歩圏内
子どもたちが大きくなり、アパートが手狭になったことから新築を決意。親が所有する土地に建てることにしたが「市街化調整区域」(原則として建物が建てられない区域)だったため、開発許可を得るまでに少し時間がかかった。「その後の家造りはスムーズだった。依頼した建築士は高校の同級生。話がしやすかった」と話す。
完成した2階建ての新居は、「人を招きやすくなっただけでなく、家事も楽になった」と話す。特に洗濯は「1階ですべて片付く。洗って、干して、しまう作業が10歩圏内なので、すごく時短になっている」
日々の暮らしも、もてなしの時も、「楽」がいっぱいの住まいだ。
リビングからキッチンを見る。キッチンは左右どちらからからでも出入りできるアイランド型。キッチンのそば(写真右側)に、小学校4年生の長男と1年生の長女の部屋が並び、引き戸を開けていれば家事をしていても子ども達に目が届く
ここがポイント
集いの2階と機能の1階
シックな外観。1階にはガレージがあり、雨天でもぬれずに車から玄関まで移動できる。また防犯面を考慮して窓は必要最小限にし、開閉できないはめ込み式の窓や高窓を多用している
敷地は広いが、道向かいに大きなビニールハウスがあることから「2階にLDKを持って行った方が、眺望も良いしカーテンを開けて生活できると考えた」と、T邸を手掛けた(株)インツリーの佐藤康平さんは話す。
2階建てにするためには「1階にもある程度、ボリュームを持たせなければならない。LDKとのつながりを考えると、子ども室などは2階の方が良い。そこで1階に洗面室や浴室、それに付随する洗濯動線を下ろした」。室内洗濯物干し場を兼ねるランドリールームとファミリークローゼットは、最短で移動できるよう直線上につなげた。
LDKは「集い」を重視した空間。キッチンは左右どちらからでも出入りできるアイランド型で、リビングやダイニングにも目が届く対面式だ。
1階は浴室や洗面室などがある。洗面室、ランドリールーム、ファミリークローゼットはひと続きになっている
ランドリールームには室内干し場と作業台がある
床を下げたダウンフロアリビングは、ベンチやテーブル代わりにもなる。「床は40センチ下げた。これは一般的な椅子の座面と同程度の高さ。リビングに下りれば背もたれとしても使える」と佐藤さん。リビングを下げることで、キッチンやダイニングからの眺望も邪魔しない。さらにLDKの一体感はそのままに、高低差でメリハリが付く。
デメリットは「バリアフリーとは真逆。将来的に段差が辛くなったら、ステップを設置したり、リビング内に高いテーブルを置いて掘りごたつとして使うという手もある」とアドバイスする。
また、周りに畑が多く人けが少ないことから「防犯面を気にされていたので、窓は必要最小限にした。そして、開閉できないはめ込み式の窓や高窓などを用いて採光を確保した」と佐藤さんは説明した。
40センチ下がったリビングは、一般的な椅子の座面と同じくらいの高さ。奥には「眺めを楽しみながらコーヒーを飲みたい」という夫人の要望から小さなカウンターを設置。子ども達のスタディースペースにもなる
[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:582.78平方メートル(約176坪)
1階床面積:33.95平方メートル(約10坪)
2階床面積:60.45平方メートル(約18坪)
建ぺい率:10.38%(許容60%)
容積率:17.23%(許容200%)
用途地域:市街化調整区域
躯体構造:木造
設計:(株)in tree
インテリアコーディネート:(株)in tree
施工:(株)in tree
◆問い合わせ
(株)in tree
電話=098-960-4680
https://intree.jp/
撮影/泉公・ララフィルム 文/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2014号・2024年08月09日紙面から掲載