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2020年1月24日更新

屋内外つなぎ開放的|studio jag一級建築士事務所

[風通し意識したワンルーム]西原町の静かな住宅地に建つSさん(46)宅。「自然と共生できる家がほしい」と希望。ワンルーム的な空間で、風通しと屋外とのつながりを重視した2階建てができあがった。


1階のリビング・ダイニングは、掃き出し窓の外に設けたバルコニーまで段差がなく、一体的に使える。掃き出し窓の外では、2階から延びた外壁が日差しを和らげ、壁下から入った南風が室内へ抜ける


自然を身近に

Sさん宅
RC造/自由設計/家族4人
背後には木々が生い茂る森があり、自然が身近な敷地。「子どもたちの将来を考えて、ムダに電気を使わない、自然と共生できるような家にしたかった」とSさん。

住宅の前面を覆う小窓を配した大きな壁が印象的なSさん宅。玄関へと続くアプローチは緩やかな傾斜のスロープになっていて、「アプローチを歩く間に、仕事とプライベートの切り替えができます」。玄関手前にはバルコニーがあり、直接、LDKへ出入りすることもできる。


LDKは、白と木を基調にしたナチュラルな空間。玄関(写真左手)や和室(右手)もフラットにつながる

室内はバリアフリー。南に開いた1階のLDKは、戸を開け放てば隣接する子ども室や和室、バルコニーまで一体的に使え、吹き抜ける風が心地いい。キッチンから水回り、リビングへと回遊できる造りは、「家事がしやすくて気に入っています。子どもたちもグルグル走り回って楽しそう」と、夫人(38)は笑う。

洗面・脱衣室は、夫婦が共に好きな温泉をイメージして、床を籐のタイル張りにした。凹凸のある感触が気持ちいい。

アプローチやバルコニーでは、夏には親子で鉢植えやトマトを育てた。Sさんは「いま緑を増やしたくて探しているところ。少しずつ自分たちの色を加えていければ」。


温泉をイメージして、床を籐(とう)のタイル張りにした洗面・脱衣所。天井に設置した昇降式の物干し器具は、使わないときはしまえるので、スペースを圧迫しない。「天気のいい日やデリケートな衣類の乾燥に重宝しています」と夫人

住み慣れた感覚
職場近くでアパート暮らしをしていたが、夫人の実家に近い父親所有の土地が空き地になったことから、「家賃と同じ程度の支払いで済むなら」と家づくりを決めた。

気に入った造りの住宅を手掛ける建築士事務所に、設計を依頼。「ずっと住み慣れた家のように、使いやすく造ってもらった」と夫人は喜ぶ。

敷地の隣は両親の畑で、長男(3)と次男(1)は土いじりをしたり、虫を捕まえたり。祖父母との交流も増えた。2階にある広いルーフテラスは、家族の憩いの場に。「テーブルを出して朝ごはんを食べたり、カフェテラスのように使えれば。ハンモックを置いて本も読みたいし、バーベキューもしたい」とSさん。楽しみは膨らむ。


2階のルーフテラス。上部から張り出した壁が目隠しになり、外からの視線を気にすることなく、家族の集いを楽しめる


キッチンを抜けた奥には、浴室や洗面・脱衣所、トイレがある。引き戸になった出入り口がリビング側にも設けられていて、回遊できるようになっている
 

ここがポイント
上下階つなぐ壁で通風
敷地は南側に勾配のある前面道路があり、北側には木々が生い茂る。Sさん夫妻が重視した極力クーラーを使わない、屋内外のつながり、バリアフリーを実現するため、建築士の久志直輝さんは、1階のバルコニーと、2階のルーフテラスという2カ所のアマハジ(半屋外)空間を大きな壁で覆い、上下階をつなげるプランを提案した。

敷地は、前面道路から最大2.1メートル高くなっていたが、建物を敷地奥に据え、駐車場から玄関へ向かうアプローチを緩やかな傾斜のスロープにして、高低差を解消した。


玄関へ向かうスロープの上部は吹き抜け。外壁にあけた穴から差し込む光は穏やか

室内は風が通り抜けやすいよう、南北方向を軸にしたシンプルな平面構成に。1階南側に設けたバルコニーと段差なくつながるLDKは、「建具をできるだけ少なくすることで、子ども室や和室までワンルーム的に使えるようにしました」と久志さん。

2階は居室を北側にまとめ、南側に広いルーフテラスを配置。ルーフテラス上部から張り出し、1階のバルコニーまで包み込むように設けた大きな壁が、建物全体の快適性を高める役割を果たす。「壁は日差しや台風から建物を守り、風の通り道として上下階のつながりも生み出しました」=下立面図参照。

壁には大小の穴が設けられていて、室内に柔らかな陽光と景色を取り込む。




玄関ホール。写真右手の壁にはフックを取り付けた。天井高いっぱいまでの靴箱で収納もたっぷり


1階の中ほどまでを覆う大きな壁が印象的な外観。壁に開けた三つの穴のうち、スロープにかかる2カ所の穴(写真中央と右手)には雨よけにガラスがはめ込まれている


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:134.87平方メートル(41坪)
1階床面積:79.00平方メートル(23.90坪)
2階床面積:53.04平方メートル(16.05坪)
建ぺい率:58.57%(許容60%)
容積率:88.20%(許容200%)
用途地域:第一種中高層住居専用地域
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設  計:studio jag一級建築士事務所
     久志直輝、國定義弘
構  造:(株)アサヒ建築設計研究所
施  工:(株)エムズ
電  気:一光エンジニア
水  道:共和設備



[問い合わせ先]
studio jag一級建築士事務所
098-874-2055
http://studio-jag.net/


撮影/ 矢嶋健吾 取材/比嘉千賀子(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1777号・2020年1月24日紙面から掲載

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比嘉千賀子

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編集者
住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。

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