お住まい拝見
2024年5月24日更新
家族の居場所あちこちに|サイアスホーム(株)[お住まい拝見]
[リビング裏に読書空間、コートも]
住宅地に建つUさん宅。明るいLDKには3畳の読書スペースがあり、リビングはコートテラスに隣接。家族の居場所があちこちにある。駆け回ったり、勉強したり、子どもも大人も思い思いに過ごせる空間だ。
2度目の家造り楽しむ
Uさん宅
RC造/自由設計/家族5人
Uさんは、2度目の家造り。夫人の実家が老朽化して建て替えが必要に。行事ごとなどに協力しやすいよう、妹と敷地を分筆して隣同士で家を建てることにした。「年を取っても移動しやすい平屋で、子どもたちが巣立った後のことを考えて部屋数は少なめに。将来引き継ぐ仏壇スペースも希望しました」
完成した住宅は平屋で、LDKと子ども室2部屋、和室とシンプルな造りだ。
生活の中心は、LDK。無垢の床と漆喰の白壁が優しい雰囲気を醸し出す。リビングの開口部は道路に面しているが、コートテラスが視線を遮り、カーテンなしで伸び伸び過ごせる。取材は湿気が高くじめじめとした日だったが、室内にはサラリとした空気が流れていた。
特徴的なのが、家事スペースの広さ。共働きで「家事のしやすさ」は大前提だった。キッチンは作業スペースが広く取れる2型にし、容量の大きい食洗機、冷凍庫を入れるスペースを設置。「何人家族? というくらい洗濯物が多い」ため、洗濯物干し場やウオークインクローゼットは広めに取った。水回りなど家事動線はコンパクトで移動もしやすい。「取り込んだ洗濯物をすぐにしまえて便利。キッチンも3人立てるので、長女(高1)はお弁当を自分で作っています。家事は大分楽になりました」と夫人。
設計は、妹と一緒に訪れた建築会社に依頼した。最初の家は、売りに出して1週間で売却できた。「購入時より高い価格で売れ、建築費に充てることができた」
家事がしやすいよう、設備や収納も吟味した。「IHのコンロはタイマー調理ができて、掃除もラク。鍋も入る食洗機や冷凍庫は大活躍しています」と夫人
アーチ型のくり抜き壁が柔らかな印象の玄関。正面の家型のニッチも、アクセントになっている
週末、夫婦で作戦会議
もともと夫婦共に間取り図を見るのが好きで、子どもたちが寝静まった週末の夜、お酒を飲みながら作戦会議を重ねた。インターネットや店舗に足を運び情報を集め、建築士に希望を伝えた。最初の家は建売住宅で、自由設計の家造りは初めて。「家に生活を合わせるのでなく、生活に合う家になった。決めることは多かったけれど、一から選ぶのは楽しかった」。過程ごと、大満足の住まいとなった。
コートテラスは壁で覆われているので、安心して子どもたちを遊ばせられる。鉢植えに実ったミニトマトの収穫は、次男の毎朝の楽しみ
リビング裏手の読書スペースは小上がりで、足を伸ばして座れる。壁一面の本棚には、夫人の仕事関係の書類を収めている
ここがポイント
コートテラスで光、風確保
設計のポイントは、住宅密集地での光と風の確保だ。Uさん宅は周囲を住宅と道路に囲まれ、隣に建設予定の妹さん宅はアパートになる可能性がある。また、道路より土地が高く、土を削って敷地を下げたため、風が入りにくい環境でもあった。
解決のカギとなったのは、コートテラスだ。設計した宮里友彰さんは「風の流れがある道路側に大きな開口部を設け、外からの視線を和らげつつ光と風を取り込むため、コートテラスを配置しました。リビングの天井脇のハイサイドライトからも、光を取り入れています」と説明する。
和室は昼間は子どもたちの遊び場で、夜は家族の寝室に。引き戸を戸袋にしまうと、隣のLDKと一体的に使える。右側の壁式収納は、将来引き継ぐ仏壇を納められるようになっている
子ども部屋は、長女の好きな魔法の世界をテーマにシックな雰囲気に。「机が造り付けなので、部屋が広く使えてうれしい」と長女
子ども部屋の扉は、魔法の世界をイメージし隠し扉風に。「本棚と思いきや、扉だったら楽しいかなと思って」と夫人
ユニークなのが、リビング裏の読書スペース。「本や書類の収納と読書スペースがほしい」というUさんの希望で設けた。小上がりで掘りごたつ式になっているため、3畳ながら広々と過ごせる。壁にテレビとDVDボックスを設置したことで、リビングが広く使える効果も。
「敷地が細長く、必要な駐車場や部屋数を確保するにはギリギリの面積だった」と宮里さん。子ども部屋の机、和室やキッチンの収納など、各部屋に造り付けの家具を設置し、限られたスペースで広々と過ごせるよう配慮した。
屋根付きで、天気を気にせず洗濯物を干せる物干しスペース。壁のスリットから、風が抜ける
ゴミ箱(写真左下)が一体的で、スッキリとした洗面台。水栓が壁にあるため根元が汚れにくく、掃除がしやすい
住宅外観。道路に面したコートテラスの壁にはスリットが設けられていて、視線を遮りつつ光や風を取り込める
[DATA]
家族構成:夫婦、子ども3人
敷地面積:218.9平方メートル(約66.22坪)
1階床面積:117.66平方メートル(約35.59坪)
建ぺい率:51.41%(許容60%)
容積率:49.18%(許容160%)
用途地域:第一種中高層住居専用
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設計・施工:サイアスホーム(株) 設計担当 宮里友彰、宍戸佑之輔
構造:田中秀和建築設計所
電気:脩電工
水道:沖正設備
◆問い合わせ
サイアスホーム(株)
電話=0120-881-080
https://www.saias-home.co.jp/
撮影/矢嶋健吾 文/栄野川里奈子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2003号・2024年05月24日紙面から掲載