ビンテージ感漂うCB造|(株)建築設計同人 匠才庵[お住まい拝見]|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

お住まい拝見

お住まい拝見

2023年7月14日更新

ビンテージ感漂うCB造|(株)建築設計同人 匠才庵[お住まい拝見]

[ブロックの質感を生かして]
建築士の與那覇勝儀さん(49)は自邸を補強コンクリートブロック(CB)造で建てた。ブロックの質感を生かし、杉板の床やアイアンの照明を合わせてビンテージ感を演出した。

中城村の高台に建つ與那覇邸。見晴らしの良い北東側に大きく開く。猫2匹のために、掃き出し窓の上部やその周辺にはDIYでキャットウオークを設置した


建材自体がインテリア

與那覇さん宅
 補強CB造/自由設計/家族3人+猫2匹 

自邸をコンクリートブロック(CB)造にしたのは「コスト削減が一番の目的。鉄筋コンクリート(RC)造が高騰している中で、CBにするとどの程度安くできるのか建築士として興味もあった」と與那覇さん。

「単にCBにしてもさほど安くならなかった。シンプルに造ることがコスト減につながった」と話す。形だけでなく「仕上げを省いたり、造作を減らしたりして、同規模のRC住宅より1割くらいは安くできたかな」。

仕上げを省き、CBの壁やコンクリートの天井をそのまま内装に。武骨な建材に合わせ、杉板のフローリングは暗めの塗装をして、使い込まれたような風合いにした。アイアンの照明や家具もマッチし、ビンテージ感漂う空間になっている。

コンクリートブロックの壁とアイアンの照明や家具がマッチした“男前”なリビング

 

個室3は與那覇さんの仕事場。本棚と机は造作でなく、「知り合いの家具工房につくってもらった」




キッチンは土間床で、フローリング張りのダイニングやリビングより約15センチ下がっている。「カウンターに座る人と、キッチンに立つ人の目線がちょうど合う。会話がしやすい」

猫のための工夫も

親から譲り受けた中城村の高台に新居を構えた。 

景色の良い北東側に4枚引きの掃き出し窓を設置。その外には屋根付きのテラスも設けた。地面から浮いているような造り=3面右上写真=は、傾斜地であることと「CBやコンクリートの重たい印象を和らげたかった」。

浮かせたことで建物と庭(外)との境がはっきりし、「テラスも居室のように使っている。ベンチでコーヒーを飲んだり、ただボーッとしたりして過ごしている」。

また、2人の子はすでに巣立ち、末っ子も大学生。夫婦2人になることを想定して個室は最小限の広さにした。四つの個室は各4帖。個室1と2、3と4の間の壁は簡単に取れる木壁にし、「いずれは2室にする予定」。

2匹の猫も大切な家族だ。掃き出し窓周辺にキャットウオークをDIYしたほか、同窓の上部に小さな窓を設置=下写真。「家族が留守の時にも開けて風を通せる」

シンプルな中に小技を効かせ、コスト減と暮らしやすさを両立していた。

 

ここがポイント
省いても気持ちよく

建築士の與那覇さんが自邸のコンセプトにしたのは、「普段着のような家」。沖縄県民にとって身近な素材であるコンクリートブロックを使って「シンプルかつ、作り込まないことを意識した」。その先にある大命題は「コスト削減」だ。「上がり続ける建築費をどうすれば抑えることができるのか、自邸なのでいろいろ試してみた。その結果、使う材料を少なくすることが最もコスト減につながった」と話す。

塗装や壁紙、タイルなどの仕上げを省いたほか「造作は極力省いた。各個室には収納を造らず、広めのウオークインクローゼットを洗面室の横に造り、皆の服をしまっている」。それが洗濯動線の短縮にもなっていて、妻のお気に入りポイントでもある。

「ドアなどの建具も少ない方がコスト削減にはなるが、わが家では猫が外に出てしまわないようにするため、さほど減らせなかった」。暮らしに合わせて取捨選択した。

個室の広さは4帖と必要最小限。「天井高をリビングより40センチほど上げて約2・8メートルにし、縦空間の広がりで窮屈な印象を軽減した」。四つの個室は、取り外し可能な木壁により2室にできる。将来、夫婦2人暮らしになることを想定しつつ、増改築が困難というCB造のデメリットを補った。

キッチンや洗面室、ウオークインクローゼットなどはフローリング材を省き、土間床にした。「冬場は寒い時もあるけど、スリッパを履けば大丈夫。逆に夏場は猫たちが寝転んで涼んでいる。掃除のしやすさも考えるとメリットの方が大きい」と話した。
 

眺めの良い北東側にあるテラスは、
約2メートルの深い軒が日差しや雨を遮る。リビングの延長として使っている

掃き出し窓の周りには、愛猫のためにキャットウオークをDIYした


掃き出し窓の上部に設けた、猫のための小窓。「家族の留守中にも風を通すことができる」 

 

長男が使っている個室1。広さは4帖。天井高はリビングより40センチほど高い
約2.8メートル。高さで狭さを払拭している

洗面室や脱衣所、キッチンなどの水回りは床の仕上げを省いて土間床にした。「掃除がしやすくて良い」と話す



[DATA]
家族構成:夫婦、子1人、猫2匹
敷地面積:393.47平方メートル(約119坪)
1階床面積:91.71平方メートル(約27坪)
建ぺい率:26.73%(許容60%)
容積率:23.31%(許容200%)
用途地域:市街化調整区域
躯体構造:補強コンクリートブロック造
設計:(株)建築設計同人 匠才庵 
與那覇勝儀
構造:喜舎場設計事務所
施工:(有)由城建設
電気:(有)エイト電気工事
水道:(株)向上
家具:かんばん屋LOOK


問い合わせ
(株)建築設計同人 匠才庵
電話=098・933・3317
http://shosaian.jp/wp/


撮影/比嘉秀明 文・東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1958号・2023年7月14日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
東江菜穂

これまでに書いた記事:338

編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

TOPへ戻る