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2023年4月21日更新

家中を吹き抜ける風 日差しがふんだんに入るテラス 太陽光も雨水も使う開放的な家|アトリエセグエ[お住まい拝見]

[南東に開いた高台の家]
高台にある2階建てのSさん宅。1・2階とも南側の大窓とテラスから、風や光を取り込みつつ、森や街並みを一望できる。太陽光パネルなども設置し、環境にも配慮した。

高台にある2階建てのSさん宅。1・2階とも南側の大窓とテラスから、風や光を取り込みつつ、森や街並みを一望できる。太陽光パネルなども設置し、環境にも配慮した。


夏でもエアコンいらず

Sさん宅
 RC造/自由設計/家族5人

夫婦が求めたのはエアコンや照明などに頼らない暮らしだ。沖縄市の高台に建てたのは、階層で公私を完全に分けたRC造の2階建て。1・2階ともに幅の広いテラスを設けて風や自然光を取り込み、眺望を楽しめる造りになっている。

1階にはLDKと和室、水回りがある。LDKは約6・8メートルの掃き出し窓と吹き抜けで視線が抜け、明るく開放感がある。Sさんは「窓を開けると家中に風が通り、気持ちがいい。夏でもエアコンをつけずに過ごせます」と笑う。目の前には横幅14メートルのリビングテラスや芝庭が広がり、「天気のいい日には、庭で昼食を取ったりして、家族でピクニック気分を楽しんでいる」と夫人。

2階は個室をまとめたプライベート空間。見晴らしのいい南側には横幅10メートルのファミリーテラスを隣接させた。Sさんは「周囲の森や街並みが視界いっぱいに広がる」と話す。

雨水も太陽光も利用

家造りを考え始めたのは2年前。風通しが良さそうな周囲が開けた土地を見つけ、購入した。土地の売り主であった施工会社から建築士を紹介され、内覧会に足を運んだ。「見学した住宅は大きな窓や深い軒があって風通しもよかったのが決め手になった」とSさん。

プランニングの際、県外出身の夫人が「ぜひ使いたい」と取り入れたのが和室の琉球畳。「へりのない畳に一目ぼれ。和室だけ木の天井にしてもらい、落ちついた雰囲気がお気に入り」

自然エネルギーを活用する設備も導入した。貯水槽を地下に埋設し、雨水を庭にまく水や手洗いの洗浄水などに利用するほか、屋上には太陽光パネルを設置し蓄電池を完備。住まいは開放的でエコな暮らしを楽しんでいた。


南側の掃き出し窓から自然光が差し込むLDK。「友人らを招いて、広々としたテラスや庭でバーベキューを楽しみたい」と夫婦


和室。木で仕立てた天井は、段差を付けて間接照明を設置。LDKなど他の部屋とは違う木仕上げにすることで、落ち着きのある空間になっている


2階のファミリーテラス。主寝室から子ども室までをつなぐ


ここがポイント
軒の形を変え 光調整

Sさん宅は北側に前面道路があり、その奥に墓地がある。建築士の比嘉俊一さんは「南東側は見晴らしが良かったため、自然とその方角に大きな開口部を設けるプランとなった。これにより夏場、南東から吹く風を効率良く取り込むことができる。ただし、開口部を大きく取った分、室内への直射日光を抑えることも重要だった」と話す。

ポイントになったのは南面の軒。吹き抜け上部にはめ殺し窓を設けたリビング側と、和室や居室側で形を変えた=上写真。リビング側は太陽の高度を考慮して、軒に角度をつけた。これにより、「直射日光を遮りつつ、軒が視界を邪魔することなく外の景色が楽しめる」。個室側の軒は1・2階ともに奥行き1・7メートルと突き出した。「深い軒が室内に落とす影と、大開口から入る風で、快適に過ごせる」。さらに、1階の北側には屋内物干し場を設置。道路に面した壁は網目状にれんがを積むことで、北側からも通風を確保した。

また、「朝日を感じられる住まいに」という夫婦の要望を受け、LDKの吹き抜け上部には、東側にもはめ殺し窓を設けた。その吹き抜けを囲むように階段を設置。「朝は、太陽の光を浴びつつ2階の各居室からLDKへ。日中はLDKでくつろぎながら、窓から空模様も楽しめる」

ポーチと玄関は、明るく開放的なLDKとは対照的に、「陰影を楽しめる空間にした。玄関からLDKへの動線上に光と影のコントラストを付けることで、LDKがより開放的に感じられる」。

設備面では地下に雨水ろ過タンク、屋根に太陽光パネルを設置し、蓄電池も完備。風や太陽光、雨水を生かしながら、現代技術を組み合わせ環境に配慮した住宅とした。


南面にある大開口とテラス。写真右手には傾斜の軒、写真左手には奥行き1.7メートルの軒がある。「テラス両端の外壁に加えて、形状の違う軒で直射日光を和らげている」と建築士の比嘉さん


外観。写真左手にはクリーム色をしたレンガを積んで、その奥にある屋内物干し室に通風を確保している


玄関に立つと、視線の先に光あふれるLDKが見える


屋内物干し場。上部にはトップライトを設け、光を取り込む


玄関ポーチ。Sさんお気に入りのバイクが出迎える。「部分的に光が差し込むようにして、陰影を楽しめる空間にした」と比嘉さん

[DATA]
家族構成:夫婦、子ども3人
敷地面積:383.85平方メートル(約116.11坪)
1階床面積:162.04平方メートル(約49坪)
2階床面積:83.76平方メートル(約25坪)
建ぺい率:43.18%(許容50%)
容積率:55.41%(許容100%)
用途地域:第一種低層住宅専用地域
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設計:(株)アトリエセグエ 比嘉俊一
構造:(株)黒岩構造設計事ム所
施工:(株)沖秀建設
電気:喜友名電気
水道:(有)良政産業

問い合わせ
アトリエセグエ
電話=090・8406・8504
https://seguearchitects.jp/


撮影/比嘉秀明 文・市森知
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1946号・2023年4月21日紙面から掲載

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週刊タイムス住宅新聞編集部

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