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2023年1月6日更新

庭とつながる開放感|建築設計工房paraya[お住まい拝見]

[家の中でも外感じる平屋]
欲しかったのは、「家の中にいても、外とつながる家」。名護市にあるOさん(35)宅は、くの字の形が特徴的な平屋。どの部屋からも庭が間近で、開放感たっぷりだ。


1階のLDK。掃き出し窓を開け放てば、テラスから庭まで一体的につながる。建物は、庭をくの字に囲むような形。奥に見えるのがオープンスペースと寝室
 

光と影を楽しむ

Oさん宅
RC造/自由設計/家族5人

玄関を開けると、正面のガラス越しに見える中庭と、水盤の水音に心が和む。LDKは、掃き出し窓を開けると、屋根付きのテラスから庭まで一体的につながり、3兄弟の格好の遊び場に。「子どもがまだ小さいので、屋内外で元気に駆け回れること。そして、夫婦2人になっても住みやすい広さと間取りを重視しました」と夫人(44)。

LDKと各居室が、中庭に面してくの字に配置された造り。個室は寝室のみ。デスクを造り付けたオープンスペースとウオークインクローゼットは、家族みんなで使う。どの部屋も風が抜け、庭越しに家族の気配も感じられる。室内は間接照明で、しっとりとした雰囲気。「テラスで月を見ながら過ごすのも楽しいけど、廊下上の高窓からの月明かりも、とてもきれい。この家で暮らしてから、光と影を意識するようになりました」と、Oさん。

キッチン背後にはパントリーを設け、食器も家電も収納。「共働きなので、片付けの負担をできるだけ減らしたくて」と夫人。引き戸を閉めれば、生活感なくスッキリ過ごせる。


キッチンからダイニング、リビングを見る。間接照明で落ち着いた雰囲気。写真右奥には畳スペースがある。テラスはタイル張りで、手入れも楽。外壁が道路側からの視線を遮る

玄関は中庭に視線が抜け、開放的。水盤の水面の揺れや水音も楽しい。土間には本部石を使っている

前面道路からの外観。中庭や室内への視線を遮るため、高さ約1mの塀、グレーの外壁で目隠しする(建築士提供



成長に合わせ変化

「長く住めるよう、子どもが小さいうちに家を建てたかった」と夫人。設計は、姉の家を建てた建築士に依頼すると決めていた。「姉の家に行った時、家の中なのに外にいるような感覚が衝撃的で。それまで、気になる空間の写真を千枚も集めていましたが、イメージが一気に吹き飛びました」

外とのつながりを大切にして、広い庭がとれる土地を購入。使う建材も一つ一つこだわった。LDK脇に設けた畳スペースと、パントリーの壁に用いたのは、白いれんが。間接照明で浮かび上がった陰影が、趣をもたらす。

庭には菜園を計画中。将来はテラスにハンモックやガーデンチェアを置き、第二のリビングとして使う予定。「子どもたちの成長に合わせて、家も庭も使い方を変えていく楽しみがある」と、Oさんは楽しげに話した。


ここがポイント
くの字で視界、光風快適

高台にある敷地は、南側が開けて眺めが良い一方、南東の前面道路向かいには、解体車置き場がある。建築士の島袋勝也さんは、夏の涼風を室内に取り込みながら、雑多な景色から目線をずらすため、「くの字形」の建物を提案した。

建物は敷地奥の北側に据え、南側に広い中庭を配置。LDKもプライベート空間も中庭に面して開くよう、くの字に角度を付けた。構造上、LDKが細長い形になるため、「リビングと中庭の間に、屋根付きの広いテラスを配置。屋内外をつなぎ、広さと開放感を感じられるようにしました」。

テラスのコンクリート屋根は、先端の一部だけガラスをはめ込み格子状に。軽やかにみせつつ、上部からの光を取り込む。また、テラス西側は壁で閉じることで、少し離れた場所に立つマンションからの視線を遮る。「玄関も、正面の壁をガラスにして中庭まで見えるように。テラスに設けた水盤の流水音と相まって、五感で涼やかさを感じる開放的な空間にしました」。北西側の隣地に倉庫建築の計画があることを踏まえ、景観と西日対策を兼ねて窓は小さくした。

使いやすく、生活感を感じさせない家事動線の工夫も光る。キッチン背後のパントリーは、使い勝手だけでなく空間演出にも活用。くの字の角にあり、奥に向けて狭まる形を生かし、最奥の壁だけ白のれんが張りに。照明で陰影が浮き立ち、印象的に見せることで視線を集中させ、家電などが気にならないよう工夫した。

水回りは、オープンルームと寝室の北側に一直線に配置。トイレと浴室には光庭を設け、風と光を取り込みながら、緑を感じられる空間にした。寝室の背後にはデッキ張りの物干しスペースがあり、ウオークインクローゼット、洗濯機置き場、寝室と回遊できるから、洗濯もスムーズ。廊下には天井裏収納を設け、収納量を確保した。


キッチン背後に設けたパントリー。家電や食器棚もすべて収めてスッキリ。奥に向かって幅が狭くなる空間の形を生かして、アーチの垂れ壁の奥には倉庫を設けている


家族で共有するオープンスペース。壁面にはデスクと棚を造りつけ、手前のスペースは子どもたちの遊び場に

木で温かみのある空間にしつらえた洗面室。正面奥が浴室で、逆サイドには洗濯機と物干し場がある

シックに仕上げたトイレ。植栽も美しい光庭に面していて、「ここの庭が最高なんです」とOさん



[DATA]
家族構成:夫婦、子ども3人
敷地面積:663平方メートル(200坪)
1階床面積:114.59平方メートル(34.7坪)
建ぺい率:20.3%(許容60%)
容積率:17.28%(許容200%)
用途地域:未指定
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設計:建築設計工房paraya
   島袋勝也、仲宗根篤
構造:比嘉一級建築士事務所 比嘉善仁
施工:具志頭工務店 具志頭亮
電気:宏工業 上原拡
水道:(有)きみ山工業 宮城大幸


問い合わせ
建築設計工房paraya
 電話0980・56・2955
 https://www.paraya-architect.com/


撮影/泉公(ララフィルム) 取材/比嘉千賀子(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1931号・2023年1月6日紙面から掲載

この記事のキュレーター

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週刊タイムス住宅新聞編集部

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