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2019年2月1日更新

木で彩るRC造|株式会社 山口瞬太郎建築設計事務所

[お住まい拝見・玄関共用・水回り別の二世帯]住宅地にあるTさん(48)宅は、鉄筋コンクリート(RC)造2階建ての二世帯住宅。コンクリートの枠に木をはめ込んだ建物で、施主がDIYで手を加えながら暮らす。


吹き抜けで開放的な2階LDKと3階。夫人がキッチンで作業をしながら、3階にいる姪(めい)とおしゃべりを楽しむ。さまざまな角度から光と風が入るので明るく涼しい


気軽にクギを打てる家

Tさん宅
RC造/自由設計/家族3人
増改築を繰り返した築40年ほどの一戸建て。夫人(48)の母が暮らしていたその実家は段差が多く、老朽化も進んでいた。当時、Tさん夫妻は離れた場所に住んでいたが、その実家を二世帯住宅として建て替えて同居することに。

その際、「バリアフリー」「水回りを分けたほどよい距離感」などは各世帯の意見が一致したが、Tさんは「趣味のDIYで壁などに気軽にくぎを打ち込める木造」、夫人の母は「災害への安心感があるRC造」を求めた。知り合いの建築士に相談したところ、両方の良さを織り交ぜた方法を提案してもらったため設計を依頼した。

完成したのは、コンクリートのフレームに角材をはめ込んでできた四角い箱を、縦横に組み合わせたような2階建て。1階の共用玄関を挟み、北側に親世帯、南側と2階に子世帯が配された。RC造ながら、床や壁に木をふんだんに使った室内は、木ならではの温かみを感じる。


画廊喫茶の気分で
玄関を抜けて右手の親世帯に入ると、すぐに和室とつながったLDKがあり、友人が描いた絵画や焼き物、グラスなどのコレクションが並ぶ。「画廊喫茶を開きたい」と話す夫人の母だが、手話ダンスサークルの活動などで忙しく、友人を招いてのカフェタイムが憩いのひととき。「杉の香りがくつろげるみたいで、『帰りたくない』って言われるよ」とうれしそうに話し、豆から挽(ひ)いたコーヒーを振る舞う。


1階親世帯のリビング。奥の和室と一体化して使える。夫が広島カープファンだったことから、ステンドグラスにはカープの由来となったコイが描かれている(下写真)



玄関から左に行くと、Tさん世帯。書斎を兼ねた玄関ホールで愛猫のてんてんが、Tさん手作りのキャットウオークから出迎えてくれる。

2階LDKは、吹き抜けで3階と、幅3メートルの大開口でテラスとそれぞれつながる。毎週遊びに来る姪(めい)とのおしゃべりを楽しむ夫人は「風が通るし、圧迫感がなく、どこにいても気持ちいい」。3階から足をブラブラさせて、2階を見下ろしながらテレビを見るのもお気に入りだという。

Tさんはベッドや棚、テーブルなど空間に合わせて必要なものを自作する。「次は玄関の軒下に置くシーサーを作ろうかな」と手を加えながら住まいを彩っていく。


Tさん世帯の玄関ホール兼書斎。階段から写真左上へと続くキャットウオークはTさんの手作り


2階テラス。大きな開口部でリビングとつながる。友人を招いてバーベキューを楽しむこともある

ここがポイント
RCの枠に杉角材 見える化で長持ち
設計前、Tさんは「木造」、夫人の母は「RC造」と各世帯で異なる要望をしていた。そこで建築士の山口瞬太郎さんは、最小限のコンクリートフレームに、12センチ角の木ブロックをはめ込む「ハイブリッド」の工法を提案。「RC造の安心感と、断熱や調湿といった木の機能性を併せ持たせた」と説明する。壁面の大部分に木ブロックを使い軽量化したことにより、杭(くい)や基礎のコストダウンにもつながった。

木ブロックは外壁だけでなく、内壁や仕上げ材の役割も持つ。山口さんは「壁の構造体が見えるので、施主自身でメンテナンスしやすく、傷みや不具合が発生してもすぐに気付くことができ、建物を長持ちさせられる」。Tさんの「DIYし放題の壁」という要望に応えることになったほか、将来的に親世帯を賃貸にする場合も対応しやすい。


2階リビングの施工の様子。コンクリートの枠に杉の角材(下写真)をはめ込んでいるのが分かる。角材一つで外壁と内壁の両方の役割を兼ねる(上下ともに建築士提供)



バリアフリーの造りで、全体的に床はフラット。特に親世帯では、水回りや寝室などをLDKの隣に集約。戸は全て引き戸で、車いすの使用に備えて幅も広めにした。壁は木ブロックなので、手すりが必要になった際も好きな場所に取り付けられる。

三方を住宅に囲まれた敷地のため、各部屋は交通量の少ない道路がある東側に開いたほか、水回りを北西の角にするなど風水にのっとって配置した。


四角いブロックを組み合わせたような外観。中央部をへこませて分棟のように見せることで、建物のボリューム感を抑え、周辺環境になじませた


2階廊下。窓に面したワークスペースでは夫人が仕事や読書をする


大きな窓で開放的な2階寝室。ベッドはTさんが「まず寝る場所が必要だった」ため、この家で最初に作ったもの

[DATA]
家族構成 :夫婦、義母
敷地面積 :170平方メートル(約51.4坪)
1階床面積:81.18平方メートル(約24.55坪)
2 階床面積:69.98平方メートル(約21.16坪)
3 階床面積:16.8平方メートル(約5.08坪)
建ぺい率 :49.04%(許容50%)
容 積 率:98.8%(許容100%)
用途地域 :第一種低層住居専用地域
躯体構造 :鉄筋コンクリート造ラーメン構造
設  計 :(株)山口瞬太郎建築設計事務所 山口瞬太郎
構  造 :(株)濱川構造設計
施  工 :(株)大興建設
電  気 :(株)日本電設
水  道 :功設


[問い合わせ先]
(株)山口瞬太郎建築設計事務所
050-3365-7595
http://yoaa.jp


撮影/比嘉秀明 編集/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1726号・2019年2月1日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
出嶋佳祐

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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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