こだわリノベ
2021年11月19日更新
2度目の2世帯リノベ|ライフステージに合わせて一新
[こだわリノベ|2度目のリノベーション]築37年の2世帯住宅に住む、子世帯の新垣さん(50代)。今回は2度目のリノベーションで、親世帯が使っていない中2階の部屋を子世帯側へつなげて空間を再配分。新垣さん夫婦は趣味や孫との時間を、両親はバリアフリーを重視した。
2階子世帯・新垣さん世帯のLDK。青緑の壁で玄関とを仕切り、プライバシーを確保。以前は玄関からLDKや浴室が見えていたという(写真下)。広さは約21帖あって孫が走り回れるほどで、子ども部屋を撤去して広くした。夫婦はミニチュアや小物などを集めるのが趣味で、コレクションを飾るショーケースを設けた
▼リノベーション前
改修前のお悩み
「調理台が低く、親の足腰に負担。1階からしか入れない中2階を活用したい」
▼リノベーション前
以前の1階親世帯のLDK。18年ほど前の改修で、畳の居間(手前から右奥部分)とフローリングのキッチンに。写真左に見える階段が中2階につながっていた
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今回のリノベで重ね張りしていた床を全て剥がし、床下まで改修して全面フラットな床にした。写真左の造作カウンターがダイニングテーブル代わりになっている
1階トイレは約1帖と、以前より2倍ほどの広さに。介護しやすいよう配慮した
新垣さん宅の外観。2階部分にしかひさしがなく、1階玄関は雨が吹き込んでいたため、新たに低いひさしを設置。丸柱の意匠をそろえて統一感を出した
1階車庫への出入り口はキッチン近くへ。ルーバーの手すりで目隠し
趣味も老後も楽しむ
新垣さん宅は築37年の2世帯住宅。今から18年ほど前に室内階段の2階出入り口を壁で閉じて完全に分離し、1階と中2階を両親が、2階を新垣さん家族が使っていた。
今回のリノベーションは2度目。中2階を1階と分離、2階につなげたことで、両親にとってはコンパクトで使いやすい広さ、新垣さん夫婦にとっては集めたミニチュアや孫との時間を楽しめる、ゆったりとした空間を実現した。
1階親世帯は1LDK+和室の間取りに。畳の居間をフローリングに変え、水回りを広く取った。「18年前、2世帯にした時に床の上に板を張ったため床が5㌢ほど上がり、結果的にキッチンではずっとかがむ姿勢で過ごしていたから腰が痛かった」と母親。床を造り直し、キッチンも新調したおかげで「楽になった」とほほ笑む。中2階へ上る階段がなくなった分、トイレは以前の約2倍の広さがとれた。
子の独立でゆとり
当初は1階親世帯のバリアフリーリフォームのみを検討。「見積もりまで取ったが費用が高く、デザインが好みではなかった。1階からしか入れず空き部屋になっていた中2階を自分たちで使えるようにしたかったので、どうせなら全体をリノベしようと決めた」と新垣さん。以前本紙で紹介したリノベ記事を見て、それを手掛けたリノベ会社へ依頼したという。
子世帯となる2階へは外階段から出入りする。LDKは約21帖。中2階に主寝室を移し、娘が独立して空いたスペースを活用することで広さを確保した。「今では孫が走り回れるし、妹家族が来てもゆったり過ごせる」と新垣さん。
LDKには大きなショーケースを造り付け、夫婦が集めてきたミニチュアや人形を飾る。「以前は造り付けの収納がなくて、狭いリビングに棚を置いて飾っていた。今でも納めきれないほどあるけど、夫婦で集めたモノが眺められるリビングが一番のお気に入り」と新垣さんは満面の笑みを浮かべた。
新垣さんがリノベを選んだ理由
当初は1階親世帯だけをリフォームしてバリアフリーにするつもりだったが、想定外の額に。中2階のつなぎ替えも必要だったこと、子が独立して空き部屋があったことなども踏まえて、どうせなら全面リノベしようと決めた。
2階新垣さん世帯のLDK。中央のショーケースは夫婦で集めたミニチュアがいっぱい。ショーケースの裏手が和室、その隣に中2階に続く新設の階段がある
新垣さん宅 リノベのカギ
「1階親世帯は元の床まで剥がしてバリアフリーに。孫が泊まりに来る2階子世帯は中2階とつないでスペース確保」
暗さや視線の抜け解消
新垣さん宅のリノベを手掛けた、アーキラボラフィットの德里政俊さんは「良好な躯体だが、1階は暗さや狭さ、2階は玄関から居室へ視線が抜けるのが課題だった」と、リノベ前の状況を話す。家族構成に合わせた空間の再配分と共に、課題を解消して暮らしやすさにも配慮した。
1階の要望はバリアフリー化。以前のキッチンは板の張り重ねで床が高くなっていたため、元の床まで剥がしてフラットにすることで、「部屋全体に加えて水回りの段差も解消した」。
暗く狭い1階のトイレや車庫への出入り口は動線を整理。キッチンと車庫を区切る壁の鉄筋の配置などから安全性を確認した上で、車庫への出入り口を移設。「荷物運びが楽になる上、中2階の階段を撤去できたことで、トイレの広さも確保できた」。また、玄関はひさしが2階天井の高さにあるだけで雨が吹き込んでいたという。玄関ドアの上にひさしを新設して屋外駐車場からも雨にぬれないよう配慮した。
新垣さんの両親が使っていなかった中2階は「湿気などで床が傷んでいた」。真下の車庫からの湿気や冷えを防ぐため、竹炭を敷き詰めて床を張り直し、新垣さん夫婦の寝室にした。壁で閉じて2階から出入りできなかったため、2階と中2階をつなぐ階段を新設。幅が78㌢と少々狭いが、「結果的に秘密基地へ行くようなワクワク感が生まれた」。
2階は玄関からの視線を隠すものがなく、リビングも浴室も見える状態だったという。そこで、玄関には壁で仕切ったホールを設け、洗面浴室の出入り口を移動した。德里さんは「家族とくつろぐ場所のプライバシーが確保でき、趣味も家族の時間もゆったり楽しめる空間ができた」と話した。
▼リノベ前
中2階の新垣さん夫婦の寝室。以前は1階とつながり、空き部屋になっていた(写真右)。新垣さんは「以前子ども部屋で使っていて、孫も喜ぶだろうから」と、星が光る蓄光の壁紙を天井に使用した
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2階和室と新設の階段。階段幅は約78センチしかない。階段を下りた右手に寝室、左手は収納になっている
[DATA]
家族構成:1階・両親、2階・夫婦
躯体構造:鉄筋コンクリート造
築年数:37年
1階床面積:96.15㎡(約29坪)
2階床面積:87.11㎡(約26坪)
工期:約6カ月
設計:㈱アーキラボ ラフィット
德里政俊
施工:㈱アーキラボ ラフィット
電気:あゆむ電気工事
水道:㈲翔設備
[問い合わせ先]
(株)アーキラボ ラフィット
☎︎098-988-5128
https://al-lafit.co.jp/
撮影/泉公(ララフィルム) 取材/川本莉奈子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1872号・2021年11月19日紙面から掲載