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2021年2月26日更新

居間は美術館 絵が映える家|中古購入し改修・全面改修・築40年・一戸建て・RC造

[こだわリノベ・中古購入し改修]名護市の中村一則さん(62)和子さん(65)夫妻は、築40年の中古住宅を購入し、リノベーション。間取りや造りは当時のままだが、クロスや階段の手すりを工夫することで、版画などが映える美術館のような空間になった。

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階段の2階部分から見たリビング。壁に飾られた版画作品が目を引く。一則さんは「朝起きたら2階から絵を見ながら階段を下り、コーヒーを飲む。夜は絵を眺めて晩酌。絵にぴったりの空間で最高だね」と満足そうに話す
▼リノベーション前

改修前のお悩み
「暗い印象のリビングを、 絵が映える明るい空間にしたい」
▼リノベーション前

           

1階リビング。和子さんは「部分照明にして、絵を見ながらジャズを聴く。音が吹き抜けに広がるように響くのもいい」


玄関側から見たリビング。右奥にはダイニングがあり、必要に応じて引き戸で仕切ることができる

クロスで印象変える
白い壁にオレンジ色の高い天井。1階から中2階、そして2階へと、壁に沿って折れながら空間をつなぐ階段は、黒いアイアンの手すりで吹き抜け全体の印象を引き締める。そこに沖縄の版画家・名嘉睦稔氏によるカラフルな作品が彩りを添える。まるで美術館のようなこの場所は、中村一則さん・和子さん宅のリビングだ。

建物は築40年。中古物件として夫婦が購入したとき、壁や手すりには濃い茶色のプリント合板が張られていて、暗い印象だったという。一則さんは「気に入ったのは絵が飾れそうな吹き抜けの造り。絵が映える空間にするため、クロスの色や階段の腰壁などをどうするか、数カ月住みながら考えた」。

リビング以外の間取りや造りもほとんどそのまま。一方で、それぞれ特色が出るように、部屋ごとにクロスの色や柄を変えた。

中でも特徴的なのが1階トイレ。カラフルな草花が壁と天井いっぱいに描かれ、便器も含めて美術作品のようにも思える。和子さんは「カタログを見て、元気が出るような柄を選んだ。仕切りを取り払ったことで広くなり、新たに出入り口も設けたので、使い勝手もいいですよ」とほほ笑む。


中2階の部屋。左奥の壁紙には和子さんの好きなアーティスト・ナタリーレテによるイラストが描かれている。
継ぎ目が分からないように施工してもらった

▼リノベーション前

        

玄関。将来、車いすになった時を見据え、間口の広い引き戸タイプにした

定年を機に帰郷

名嘉氏とは古い知り合いで、東京のマンションで暮らしていたときも絵を飾っていた夫婦。一則さんが「定年後は出身地の名護で暮らそう」と考えていたため、新居用の家具なども当時から買いそろえていた。

定年すると、インターネットで中古物件を探し、リノベーションを前提に購入。リノベのイメージをしっかりと固め、地元のリフォーム会社に工事を依頼した。

工事の際、既存の照明を自分で塗り直して再利用した一則さんは、最近もバルコニーにデッキをDIYしたという。「次は小さな池を作りたい」。少しずつ色を重ねていく版画のように、少しずつ手を加えながら理想の住まいづくりを楽しんでいる。


■中村夫妻がリノベを選んだ理由
完成しているものを使うので、ゼロから造る新築よりも手っ取り早いと思ったから。しかし、どこを残して、どこを改修するか考えるのは意外と大変。夫婦で住みながら、細かい部分まで検討を重ねた。おかげで自分たち好みのこだわりの空間ができた。



中村さん宅 リノベのカギ
階段の手すりを細いアイアンにして広く見えるようにした。トイレの出入り口を2カ所にし、キッチンからトイレまでの動線を短縮した。


▼リノベーション前

         

1階トイレ。以前は大便器と小便器があり、それらの間に仕切りもあったが、仕切りを撤去し、小便器を手洗い場にしたことで広々した空間に。カラフルな草花のイラストは和子さんが「元気が出るように」と選んだ

不要な壁除き開放感
中村夫妻が求めたのは「趣味で集めてきた版画が映える、開放的な家」。リノベーションを請け負った㈱CSハウジングの中本益也さんは「夫婦は細かい部分まで具体的なイメージを持っていた。美術館のような空間を意識してお手伝いさせてもらった」と話す。

まず、茶色のプリント合板に囲まれていたリビングは、明るい色のクロスに変更。階段の手すりは、視線が抜ける細いアイアンにすることで開放感を演出した。1階と中2階をつなぐ階段下は小さな物置部屋になっていたが、壁を外してオープンなテレビ置き場にした。

リビングとダイニングの間は、壁で仕切られ、幅の狭い戸で行き来する造りだった。そこで壁の一部を取り払い、ダイニングの天井高と同じ高さにした3枚の引き戸を設置。中本さんは「普段は一つの空間として広々使うことができ、必要な時に引き戸で仕切れるようにした」。

以前、1階トイレの出入り口は玄関側にしかなく、キッチンから行くにはダイニングやリビングを通らなければならなかった。しかし、洗面所側にも戸を設けたことで、キッチンからトイレまでの動線が大幅に短縮された。

床下では、EM菌を使った調湿材をモニターとして使用。1㌢ほどの砂利のような形で、珪藻土などと同じように湿気を吸うという。1階だけでなく、中2階や2階の床下にも敷かれている。


洗面脱衣室。シーリングファンを回すと、「入浴後で体が熱いときも、洗面所内の温度が
下がって涼しく感じる」と一則さん。湿気対策にもなっているという


▼リノベーション前

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壁付け式から対面式にしたキッチン。後ろのキャビネットは長年使ってきたもので、引き出し部分がリメークされている



[DATA]
家 族 構 成:夫婦
躯 体 構 造:鉄筋コンクリート造
築  年  数:40年
1階床面積:96.15㎡(約29坪)
2階床面積:36.45㎡(約11坪)
工   期:約3カ月
設計・施工・電気・水道:㈱CSハウジング


[問い合わせ先]
㈱CSハウジング
0980-53-7236
https://cs-housing.com/


撮影/比嘉秀明 編集/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1834号2021年2月26日紙面から掲載

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出嶋佳祐

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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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