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2020年9月18日更新

高台の眺めを満喫|㈱クレールアーキラボ

[お住まい拝見|建物を擁壁代わりに]「眺めのいい高台の家に憧れていた」というMさん夫婦(40代)。前面道路との高低差を生かし、視界が開ける2階にLDKを設けて眼下の景色を楽しむ。建物自体が擁壁の役割も兼ね備えるなど、設計では機能的な工夫がなされている。

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2階LDKから景色を見る。高台という敷地の特長を生かし、一番眺めがいい南西に幅約5メートルの大開口を設けた。周囲に高い建物がなく、視線も気にならないため「カーテンを閉めるのは西日が強い夕方だけで、普段は開けっ放しで景色を楽しむ」と夫人
 

高台の眺めを満喫

Mさん宅
 RC造/自由設計/家族3人 

気兼ねない生活
杉板の木目模様が付いた外壁が印象的なMさん宅。2階部分だけが前面の坂道から見え、一見すると平屋のよう。2階玄関ホールを抜けてLDKに足を運ぶと、青空、眼下の街、遠くの海が見える景色がパッと目の前に広がる。景色を切り取る掃き出し窓は幅約5メートルで、周囲に高い建物がなく見晴らしがいい南西に向く。「夜景や花火が見える特等席。憧れだった高台からの景色を楽しんでいる」と夫婦は満足そうにほほ笑む。


前面の坂道から見た2階部分の外観。杉板型枠で木目模様を付けた壁がアクセントになっている。ひさしのように張りだした屋根は「低く抑えて水平ラインを際立たせて、落ち着きのある印象にした」と建築士

2階はLDKと浴室などの水回りをまとめ、生活の中心に。玄関から洗面室、キッチンへ回遊性のある動線で家事がしやすい。キッチンは「幅広い調理台が取れ、リビングも広々と使える」との建築士の提案で、調理台とダイニングテーブルを横並びに造り付けた。夫婦は「既製品を買うか悩んだけれど、幅もピッタリで使いやすくて大満足」と声をそろえる。

仕事柄、連日出勤して数日まとまった休みを取るというMさん。1階は寝室と子ども室のほかに、Mさん専用の趣味室、駐車スペースと勝手口がある。「家族と生活リズムが違っても出入りしやすく、気兼ねなく過ごせる。これから趣味室を整えたい」と、Mさんはうれしそうに話す。


北側から見た2階LDK。壁や天井はコンクリート打ち放しになっている。普通合板を使った型枠で色味や模様を出し、「荒々しさも味わいとして感じられる空間にした」と建築士


家具や絵で飾り付け
家づくりは海の見える高台に立っており、憧れでもあった、夫人のいとこの家を参考にした。結婚を機に夫婦は眺めのいい土地を探し始め、インターネットなどで情報を集めて見学会にも足を運んだ。「見学会で時間をかけて案内してくれて、話しやすかった」という建築士に、土地を買う前から相談を始めた。見つけた土地は北中城村の高台にあり、前面の坂道から約3メートル低くなっていたため、「購入前に建築士にも見てもらい、家が建てられるか確認した」。

内装もいとこの家に倣い、壁はコンクリートの色味や質感がそのまま残る打ち放しにした。床はコンクリート調の塩ビタイルでそろえ、洗練されたデザインに。「家具なども部屋の雰囲気に合わせて、長く使えるいい物を選ぶようになった」と夫婦。「壁には絵も飾りたい。1歳の子どもが大きくなったら、テラスにプールを出して遊んだりしたい」と夢を膨らませた。


1階の廊下。階段も鉄筋コンクリート造り。蹴上げ板のない階段のスリットから2階の光が落ちてくる。床は2階より明るめの塩ビタイルを使い、室内が暗くならないようにした


1階子ども室の広さは約7帖。今は家族3人の寝室になっている。将来的に2室に分けることも可能だが、1室あたりのスペースが広くないため、階段下を子どものスタディーコーナーとして使えるようにしている


\ここがポイント/ 
建物を擁壁代わりに 条件も造りでカバー

Mさん宅の敷地は、坂道になっている前面道路の崖下にあり、道路と最も高低差のある敷地北西側は道路から約3メートル下がっていた。設計を手掛けた(株)クレールアーキラボの畠山武史さんは「前面道路との高低差が大きい、難しい条件の敷地だが、坂の高い位置からは南西に視界が開け、海も見える恵まれたロケーションだった」と話す。

そのロケーションを生かすため、敷地北西側の前面道路の高さに合わせて2階を設けてLDKにした=断面イメージ図。これにより、前面道路から直接2階に車でアクセスできるようにもなった。LDKからの景色をより印象付けるため天井高も工夫。玄関ホールは天井高2・1メートルなのに対して、LDKは2・7メートルあり、「高さのギャップでより高く広く感じられる効果を狙った」。

 断面イメージ図 





2階玄関ホールからLDK方向を見る。天井は手前が低く、奥のLDK側は高くなっている。写真左手の洗面室を通ってキッチンまでつながり、家事がしやすい動線に

玄関側の天井高を抑えたもう一つの理由は、「道路から建物を見たときに、低く横長に見えるようにするため。そうすることで広がりと落ち着きが感じられる外観になる」という。高い空間を必要としない水回りも玄関側にコンパクトにまとめた。

土留めが必要な最高約3メートルの崖面は、「建物を崖面に接して建てることで擁壁の役割を兼ね、コストを抑えるようにした」。畠山さんは「敷地条件をうまく利用して機能、利便性、デザイン、コストのバランスが取れた住宅になったと思う」と話した。


キッチン。調理台、ダイニングテーブルは造作で横並びに配置。デザインは収納や建具とも統一した。写真左奥に玄関が見える


2階浴室はハイサイドライトから光が入って明るい。洗面室とはガラス戸で仕切って広さを感じさせるようにした

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[DATA]
家族構成:夫婦、子ども1人
敷地面積:249.39平方メートル(約75.44坪)
1階床面積:59.96平方メートル(約18.14坪)
2階床面積:66.52平方メートル(約20.12坪)
建ぺい率:34.63%(許容60%)
容積率:50.71%(許容200%)
用途地域:未指定
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設計:(株)クレールアーキラボ
    畠山武史・宮城真理奈
構造:(有)建築設計 庵
施工:(株)M.G.Fクリエイト
電気:重信電気(株)
水道:KM工業
キッチン:(株)クレールアーキラボ+(合)稲建装

[問い合わせ先]
(株)クレールアーキラボ
電話098-962-6161
https://clairarchilab.com/
 


撮影/泉公(ララフィルム) 取材/川本莉菜子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1811号・2020年9月18日紙面から掲載

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