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2020年9月4日更新

13坪重ねた三角の家|建築設計室 ant

[お住まい拝見〕|築40年ほどの住宅を建て替えたMさん(47)宅は、約13坪のワンルームが二つ重なる、三角形の2世帯住宅。木とメタルで覆った半戸外の階段が、両世帯をほどよい距離でつなげる。


外観。2面が道路に面した三角形の土地に建つ。正面の階段スペースを囲む材料として、人が前を通る1階部分は足場板で木の柔らかい雰囲気を演出した一方、2階は視線を遮りつつ光や風を取り入れるエキスパンドメタルを使った。敷地は写真奥から手前にかけて緩やかに傾斜しているが、手前側の地下に倉庫を設けることで地形を生かした
 

2世帯つなぐ半戸外の階段

Mさん宅
 RC造/自由設計/家族2人 

使いやすいワンルーム
本島中部の、細い道路が入り組んだ住宅密集地。その一角、道路の分岐点にある三角形の土地にMさん宅は建つ。

1階に母(82)、2階にMさんが暮らす2階建てで、各階の広さはともに約13坪。間取りもほぼ同じで、居室と水回りだけの、シンプルなワンルームだ。母は「トイレやテレビが近いのがいいですよ」と使いやすそう。

2階へは、吹き抜けの半戸外空間にある階段を使う。それぞれの部屋の入り口を結んでおり、Mさんは「出かけるときや帰ってきたとき、母の部屋の前を必ず通るので、様子を見ながら声を掛けやすい」と安心感にもつながっている。

階段を上がりMさんの部屋へ入ると、LDKがすぐに広がる。右手にある幅約4メートルの出窓からは光が入り、部屋全体が明るい。「出窓から、海に沈む夕日がきれいに見える。それを見ながら、ハンモックに揺られて昼寝するのが至福の時間です」 


2階にあるMさん世帯の居室。大きな出窓から光が入り明るい。正面奥のテレビ台は角に合わせて造作したもの。その後ろにはエアコンのダクトなどが通っている


入り口側から見た2階居室。「バランスボールに座って生活する」というMさんの部屋にはイスがない。出窓の天板をイスの代わりとして使うこともある


1階玄関。両世帯ともに、この木戸から出入りする

将来的に賃貸も想定
Mさん宅の敷地にはもともと築40年ほどの平屋があり、そこに母が一人で暮らしていた。しかし、雨漏りやすきま風により、冬場は布団にくるまって生活するほど老朽化。間取りも3DKと細かく仕切られて不便だったという。

当時、Mさんはアパートで暮らしていたこともあり、実家を2世帯住宅として建て替えることに。いとこの家を設計した建築士が多忙だったため、別の建築士を紹介してもらい相談したところ、「三角形の家を提案され、『おもしろい』と思ったのでそのままお願いした」。

親子が求めたのは各世帯を上下に分けた2階建て。「それぞれの生活を尊重しつつ、将来的に2階を賃貸に出せたら」との考えもあった。

上下に分かれているものの、一緒に食事をとるようになったという親子。並んで料理することもあるという。Mさんは「今度はお盆のごちそうなど、伝統的な料理も母から教わりたい」。三角の家で円満な親子関係が続いていく。


半戸外スペースにある階段。母世帯の入り口の前は踊り場になっており、ベンチとして使える。2階の出窓も階段に面しており、コミュニケーションの場となっている



母世帯の居室。テレビの位置を事前に決め、その部分をへこませることで、限られたスペースでも邪魔にならない

ここがポイント
水回りの機能集約 角も使い室内広く
Mさん宅の敷地は、三角形の変形地。面積も約27坪と広くはなかった。そこで、建築士の奥原和明さんはまず、居住スペースを確保するため、敷地いっぱいに建物を計画。そこに上下で世帯を分けた2世帯住宅を提案した。

2階への階段は「親子が一緒に暮らす上で、顔を合わせる機会を設けることが大切」と考え、あえて1階から見えるように配置。母世帯の入り口の正面は踊り場にし、ベンチのように座って話ができるようにもなっている。2階の出窓から顔を出せば踊り場を見ることも可能で、奥原さんは「共用スペースをコミュニケーションの場として充実させた」と説明する。

各世帯は約13坪と空間が限られていたため、間取りはすぐに決まった。その中でできるだけ開放的な空間にするため、洗面・脱衣・物干し場・トイレの機能を洗面室の中に集約。浴室と洗面室との間もガラスで仕切り「閉塞(へいそく)感がないように配慮した」。一方、寝室は、壁と、奥行きのある収納で囲むことにより、LDKの一角にありつつも仕切りやすくなっている。

三角形の平面形状により生まれた角部分の使い方も工夫。リビングでは、仏壇やテレビ台を造作し、その背後にエアコンのダクトなどを配管。浴室では、三角形の浴槽にしたり、一人分のベンチとして角を生かした。

階段の2階部分には「一般的なルーバーよりも低コストで、視線や西日を遮れる」として、金網のような「エキスパンドメタル」を使用。屋上には手すりを付け、庭の代わりに使えるようにもした。


2階居室の一角に設けられた寝室。壁に囲まれ、仕切りやすくなっている


2階の洗面室と浴室。ガラスで仕切っており、奥まで視線が抜けるので広く感じる


1階の浴室。「バスタブは不要」という母に合わせ、正面奥の角部分はベンチになっている


[DATA]
家族構成:Mさん、母
敷地面積:88.2平方メートル(約26.6坪)
1階床面積:42.75平方メートル(約12.9坪)
2階床面積:44.12平方メートル(約13.3坪)
建ぺい率:68.5%(許容70%)
容積率:98.5%(許容160%)
用途地域:第一種住居地域
躯体構造:鉄筋コンクリート造
設計:建築設計室 ant 奥原和明
   アトリエBreath 比嘉政秀
構造:喜舎場設計事務所
施工:(株)比嘉組
電気:松島電気工事
水道:(有)ライフ工業

[問い合わせ先]
建築設計室 ant
電話=098-955-5679
https://www.ant-architec.com/


撮影/比嘉秀明 取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1809号・2020年9月4日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
出嶋佳祐

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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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