28坪+中庭で開放的| 秋桜(コスモス)|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

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2020年7月10日更新

28坪+中庭で開放的| 秋桜(コスモス)

〔お住まい拝見〕敷地の中央に約14坪の中庭。塀とL字の住まいに囲まれたそこは、もはや居室の一つ。やんちゃな双子の遊び場であり、AさんのDIY室でもある。この中庭が28坪の住居に開放感を生み、光と風を運ぶ。


中庭に面したLDK。前面道路との間にある中庭のおかげで外からの視線を気にせず窓を開け放つことができる。室内は明るく、風通しも良い
 

中庭囲むL字の住まい

Aさん宅
CB造/自由設計/家族4人 


駐車場と住居の間には14坪の中庭がある。塀と住居に囲まれているので、人目を気にせず遊べる


塀で視線遮り快適
駐車場側から中は見えない。高い塀が外からの視線をシャットアウトする。
打って変わって室内側からは外へ視線が抜け、明るく広々とした印象だ。先の塀と住居の間にある約14坪の中庭が室内に光と風を呼び、開放感の源となっている。

実はAさん宅は、前面道路より40センチほど高い位置にある。その高低差を踏まえて設けられた高さ1・5メートルの塀がプライバシーの確保と開放感を両立させている。沖縄市の住宅街に建つAさん宅だが「人目を気にせずカーテンを開けられるし、中庭も部屋の一部みたいに使っています」。小学校1年生の双子がビニールプールで遊び、Aさんは趣味の日曜大工に励む。友人を招いてバーベキューを楽しむこともある。
「室内は家族に目が届く広さでいい。代わりに、家族や友人と楽しめる広い庭と、将来を考えて最低4台分(家族の人数分)の駐車場がほしい」という要望が形になった。



外観。4台以上止められる広々とした駐車場と住居の間には、高さ1.5メートルの塀がある。住居より40センチほど低い場所にある道路からの視線をシャットアウトする



キッチン側からリビングを見る。写真奥の出入り口は玄関へ続く。帰宅後はLDKを通って子ども室へ行く造り​


子育てしやすい家
 住居は中庭を囲む約28坪のL字型。玄関を入るとリビング、ダイニング、キッチンが縦に並ぶ。そこを順に通って、家族と顔を合わせてから横並びになった子ども室や寝室へ行く造り。

キッチンは公私の境界に配され、室内や庭まで見渡せる“司令塔”だ。さらにキッチン周囲には物干し場、洗濯機のある洗面脱衣所、浴室などがまとまっていて「家事動線もすごく良い」と話す。

キッチン背後の扉を閉めれば「公(LDK)と私(寝室)の空間を分断できるところも気に入っている」。

住んでいたアパートが手狭になったことから、家造りを決意。土地は親族から譲り受けていたが、建築士探しは難航した。「あちこちのハウスメーカーなどに行ったけどピンと来なかった。結局、依頼した建築士は同級生で親戚。身内に頼むのは…と尻込みしていけど、最初にもらった間取りがしっくりきた。考え方が近いからスムーズだった」と話す。
Aさんは広さより、子育てのしやすさを重視した。居室をコンパクトにしたことで中庭や畑が設けられた。シンプルな造りのおかげで家族に目が届く。優先順位を明確にし、希望の家を実現した。



リビング・ダイニングと対面するキッチンが、公私の空間の境界にある。写真右側の出入り口の向こうに浴室やトイレなどの水回りがまとまる。左奥の勝手口は物干し場へ続く​


ここがポイント
一石二鳥の空間を随所に

 住居に広さは求めなかったAさん。ただ、設計を手掛けた秋桜(コスモス)の久場良国さんは「窮屈さや不便を感じないよう、空間を無駄なく、多機能に使うことを心がけた」と話す。
言葉通り、約28坪のAさん宅は一石二鳥の空間が随所に見られる。

例えば子ども室や寝室へ向かう廊下は、片側に扉の無い大収納を設けて、ウオークスルークローゼット的に使えるようにした=左写真。天井まで届く高さ2・4メートルの大収納だが、奥行きは20センチと浅め。「深い収納は奥の方が取り出しにくい。使い勝手を考え、奥行きは浅く、高さは自由に変えられるようにした」


子ども室から主寝室へつながる廊下。コンパクトな住まいを無駄なく活用すべく、廊下に扉の無い大収納を設けてウオークスルークローゼットとしての機能も持たせた



浴室やトイレは開口部に面した坪庭を設けた。ちょっとした緑が目を楽しませてくれ、リラックス感も増す。「外からの視線を気にせず窓を開けることができるし、床面積がコンパクトでも伸びやかに感じられる」と話す。


(写真)
浴室は坪庭に向かって開く。開放的に感じさせるとともに「開けていれば風が通り、すぐ乾く」とAさん


中庭は、塀と住居で囲ったことで、外からの視線をシャットアウト。居室の一部のようにも使える。「敷地の高低差を考慮して塀の高さを決めた。開放的でもプライバシーは守れるよう配慮した」

構造を補強CB造(コンクリートブロック造)にしたのは「建築費を抑えるため」。シンプルな箱型のAさん宅はCB造に適しており、かつAさんの理解も得ることができた。「ただし、CB特有の規格があるため、RC造よりも設計や施工に手間がかかる部分もある。やり方を考えないと費用削減はできない。幸い、以前にCB造を手掛けた経験を生かしてコスト減に結びつけることができた」と話した。



子ども室には可動式の間仕切りが準備されていて将来、二つに仕切って使える。クローゼットや窓、扉も二つずつある


白を基調にした玄関。正面のすりガラスが開放感を演出するとともに、玄関を明るく照らす

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[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:287.07平方メートル(約87坪)
1階床面積:95.19平方メートル(約28.79坪)
建ぺい率:35.32%(許容70%)
容積率:32.92%(許容200%)
用途地域:第一種住居地域
躯体構造:コンクリートブロック造
設計:合同会社秋桜 久場良国
構造:TEC
施工:合同会社秋桜
電気:(株)白金
水道:(株)白金

〔問い合わせ先〕
秋桜(コスモス)
電話090・1945・0541


撮影/比嘉秀明 取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1801号・2020年7月10日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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