家づくり
2025年11月14日更新
一級建築士が勧める、自宅でチャレンジした方がいいこと 「人生がより豊かになる」|お財布とヒトにやさしい住まいのヒント⑧
当連載では住居が家計や人間関係、幸福感にどのように影響するかを一級建築士の村山創さんが解説する。今回は、住まいを「経験の場」にしようという提案。「自宅をDIYで補修したりリフォームしたり、好みのインテリアなどを楽しむ場にする。そうした住まいを通して得た経験は、あなたのスキルになる」と説明する。

文・図表/一級建築士・村山創
人的資本を高めよう
住まいを挑戦の場に
経験通して成長する私は、皆さんが暮らしている住まいを「人生をより豊かにするためのチャレンジの場」としても考えてほしいと思っています。
「衣・食・住」という言葉があります。この三つは生活に欠かせない基盤という意味で、その中でも「住」は心と身体の健康を支える大切な場所です。その「住」という舞台を、単なる生活の器ではなく、自分を成長させる経験の場として捉えると、暮らしは一段と楽しく充実したものになります。
例えば、好みのインテリアに挑戦してみる。絵画や楽器、サーフボードなど、自分らしさを表すアイテムを壁に飾ってみる。DIYで家具や棚を自作してみる、など。完成した時の達成感は格別ですし、失敗しても「次はこうしてみよう」と工夫するうちに、手を動かす楽しさや創造の喜びが生まれます。

ほかにも、ホームシアターを導入して家族と映画を楽しんだり、スマートスピーカーをつなげて暮らしを便利にしたり、ベランダにウッドデッキを敷いて語らいの場をつくるなど、住まいを少し工夫するだけで、日常はぐっと豊かになります。網戸の張り替えや壁紙の塗り替えといった小さな補修やリフォームも、挑戦するほどに住まいへの愛着が深まっていきます。
「モノ」から「コト」へ
近年「モノ消費」から「コト消費」へと価値観が移り、経験の価値が注目されるようになりました。
住まいも同じです。自分で手を加え、試行錯誤しながら育てていく過程そのものが豊かさを生み出します。失敗も貴重な経験です。思い通りにならなかった補修や組み立てに苦労した家具も、振り返れば笑い話となり思い出の一部として記憶に残ります。
こうした小さな行動の積み重ねが主体性を高め、自信を育て、あなたの「人的資本」を高めていくことにつながります。
人的資本とは、お金やモノではなく、自分自身のスキルや知識・経験です。これは人生を支えるもっとも大切な資産です。住まいを通して得た経験は、暮らしのスキルとしてだけでなく、人生のあらゆる場面で生かされていくでしょう。

環境が人をつくる
人は環境に大きく影響されます。快適で心地よい空間に身を置くと、前向きな気持ちになり、行動意欲も高まります。逆に、使いづらい、居心地が悪い空間では気力が低下していきます。
だからこそ、自分の住まいを主体的に整えて、工夫を重ねることが大切です。
住まいを自分らしくデザインすることは、すなわち自分の人生をデザインすることにもつながります。
日々の暮らしの中で、小さなチャレンジを積み重ねてみてください。毎日の家事や掃除などでも構いません。そうしながらあなたの頭から出てきた想像力は、あなたの人生をより豊かにしてくれるはずです。

むらやま・はじめ/
一級建築士、創環境Design代表。フラット35適合証明技術者。設計の仕事をしながら、住宅関係の講演会や一般消費者に向けて住宅づくりの情報をSNSで発信している
https://hajimemurayama.my.canva.site/
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2080号・2025年11月14日紙面から掲載













