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2025年11月7日更新

シンプルでも見栄えのいい居住空間に 設計した建築士が教える、仕上げ材の選び方|Aさんの家づくり 完成までの道のり⑧

マイホームの建築は人生の一大事業。住まいづくりについて皆さんのヒントになるように、建築士の具志好規さんがAさん宅完成までの流れを紹介します。(文・写真/具志好規)

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シンプルでも見栄え良く

空間を生かす仕上げ材料

住みよい住宅は、高価な材料を使わずとも実現できる。Aさんの家は、一般的な壁のボード貼りや天井懐を無くしてコンクリートにじかにペンキを塗る安価な仕上げだ。勾配屋根を生かした広いLDKは天井が高く、小さな和室は天井が低い、空間を重視した住宅である。部屋の仕上げはシンプルにまとめ、素材や色に頼らない家を目指した。


一般的な天井とコンクリート直仕上げ天井の断面図の比較。コストを抑えながら天井を高くすることができる

仕上げ工事に入る前に、使う資材を決める必要がある。内部・外部の塗装、フローリング、タイルや石材、建具、屋根の鋼板、キッチンや食器棚など選定する資材は多い。

まず初めにベースとなる内部塗装の色を決める。最近はクロス貼りが主流だが、数年後にはつなぎ目が目立ってくる事を踏まえ、塗り替えのメンテナンスが容易な塗装仕上げとし、明るい白色系の色を選んだ。シンプル過ぎると思われがちだが、夕焼けや照明の光で天井や壁面の色が変わり、時間や季節の変化を楽しめて意外と飽きがこない。


集めたさまざまな資材のサンプル。細かいものではタイルの目地までしっかり選んで色合わせを行っている

次にベースの色を基準に他の資材を決める。実物のサンプルを集め、並べて見比べて選ぶことで全体に色の統一感をもたせることができる。

床材は足触りのよいフローリングにしようと決めていた。フローリングは将来的な貼り替えのコストが大きいため、耐久性を重視し、固く丈夫なチーク材の無垢(むく)フローリングを選んだ。洗面所やトイレなども同じ床材を使うことでまとめて施工でき、時間とコストを抑えている。


フローリング材を並べて色味を確認。今回は硬く耐久性のあるチーク材の根に近い部分の材料を選んだ

キッチンや食器棚は幅や高さの寸法を決め、ショールームでAさんと使い勝手を細かく確認しながら決定した。建物の中心にあるアイランドキッチンは周囲を見渡せ、家族とコミュニケーションが取りやすい。こうした団欒(だんらん)の場が家庭円満に一役買うだろう。


キッチン・食器棚の選定資料。要望を聞きながら機器やカラーなどの仕様を決める 資料提供:クリナップ(株)


空間に変化を生む和室

建物全体は明るく開放的な空間だが、小さな和室は空間に変化を持たせるため、少し暗めの落ち着いた色調にした。床柱は遊び心のあるものにしたいと材木店「中央銘木」で、良いアクセントになりそうなねじれたチャーギ(イヌマキ)を見つけてきた。
 
中央にあるねじれた木材が今回床柱に選んだチャーギ。真っすぐではない材料はなかなか市場に出回らない

こうして私たちが一通りまとめた選定資材をAさんに見てもらい、選んだ理由を説明しながら最終決定した。

住宅は住んでみると物が増えて雑然になりがちなので、建物自体はシンプルにするのも一つの手法だ。仕上げ材選びは将来を見据え、耐久性やメンテナンス性、コストや色調など全体をバランスよくまとめる事が重要である。


執筆者プロフィル

ぐし・よしのり
1981年、那覇市生まれ。沖縄職業能力大学校住居環境科卒、(有)チーム・ドリーム勤務。住宅・商業施設・教会や公共施設など幅広く設計に関わっている。
https://www.dream-archi.com

建築資材は取り扱いがなくなったり、廃盤になったりする事も多い。スペースがあれば建物に余った材料を保管すると将来の補修に使えるのでオススメしたい。
毎週金曜発行・週刊タイムス住宅新聞
第2079号・2025年11月07日紙面から掲載

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