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2025年10月24日更新

大家が不安に感じる、単身高齢者の入居受け入れ リスクを軽減する制度や仕組みは|住まいでつながる未来の安心 共助で支える、高齢社会の賃貸経営②

県内最大規模の管理戸数を抱える中部興産のグループ会社・興産アメニティでは65歳からの部屋探しをサポートする「R65不動産沖縄」事業を行っている。同事業を担当する久田尚志さんが県内の現状や課題について執筆。今回は、大家(オーナー・管理会社)が感じている入居前、入居中、退去時の不安(リスク)と、それを軽減する制度や仕組みを説明します。

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執筆/興産アメニティ(株)久田尚志


大家の不安と向き合う

県内最大規模の管理戸数を抱える中部興産のグループ会社・興産アメニティでは65歳からの部屋探しをサポートする「R65不動産沖縄」事業を行っている。同事業を担当する久田尚志さんが県内の現状や課題について執筆。今回は、大家(オーナー・管理会社)が感じている入居前、入居中、退去時の不安(リスク)と、それを軽減する制度や仕組みを説明します。


 
 Q・支援がほしいのはどの場面ですか ? 
県内の「高齢者の住まい」の実情を当連載に反映させるため、皆さんの不安や悩みを教えて下さい。今回は、借主(入居者)、管理会社、オーナーの方などにお伺いします。
「支援がほしいと感じるのはどの段階ですか?」
Googleフォームからご回答ください。


「入り口(保証)」は制度整う

「保証会社があっても、結局は大家側の負担になるのでは」。―単身高齢者の入居受け入れについて、前回実施したアンケートや、R65不動産事業を通して聞こえてきた大家の声です。

賃貸経営の現場では“入り口”の対策はできつつあります。2020年の民法改正を機に、家賃債務保証会社の利用が急速に広がり、滞納リスクへの備えは制度として整ってきました。保証会社による審査を通じて契約が成立するケースが増えています。

しかし、大家の心情としてはまだ解消しきれていません。「相続や破産に巻き込まれた場合は?」「保証会社が立て替えてくれても、最終的に回収できるのか」。—制度はあっても“信頼の仕組み”が浸透しきっていないのが現実です。


「入居中」はIoTで備え

「入居中のリスク」への備えも、ここ数年で新しい動きが広がり始めています。それがIoTを活用した見守りの仕組みです。水道や電気、ガスといったライフラインの使用状況をもとに、一定期間の変化がなければ自動で管理者に通知が届きます。センサーを使って動きや温度などを検知する新しい技術も出てきています。

管理会社や見守りセンターが入居者や連絡先に確認を行い、早期に異変を察知することにより、「誰にも気づかれず亡くなる」「発見が遅れて事故物件になる」などの事態を防げるようになっています。


退去時や死亡後に課題

入居前のリスクは制度(保証)で、入居中のリスクは技術(見守り)で補えるようになりましたが、「出口」、つまり退去時や入居者が亡くなった後に関しては、いまだに多くの大家が不安を抱えています。残置物処理や原状回復、遺族や行政との調整―。「支援の線が切れて、結局すべて自分(大家)が背負うことになる」との声は少なくありません。

この“出口リスク”は、まだ制度が十分でない分野かもしれません。ことし10月に始まったセーフティーネット住宅法の改正で、居住支援法人が残置物の処理を受任できる仕組みなども準備されつつありますが、周知や連携の面で課題が残ります。

不安を軽減するためには大家がすべての責任を背負うのではなく、管理会社・保証会社・居住支援法人・福祉機関がそれぞれの立場で「リスクを分け合う」ことが重要だと感じます。例えば、
・家賃滞納のリスクは保証会社へ一本化
・入居中の異変は見守りセンサーや月1回の訪問で早期に察知
・退去や孤独死の際は、居住支援法人が残置物処理や行政連絡を受任

など。こうした仕組みを重ねていくことで、賃貸物件の安定経営の基盤になると考えています。



総務省「国勢調査」(2020年)によれば、単身世帯は全体の38%に達し、過去最高を更新しています。単身高齢者を受け入れざるを得ない現状で、高齢化や核家族化で保証人を頼める親族がいない人が増えています。

空室を減らすカギは“共助”の再設計です。入り口・中・出口のリスクを、大家だけでなく地域全体で支えることで「貸せない理由」を「貸せる仕組み」に変えていけると考えています。次回はその具体的な手法にも触れたいと思います。



くだなおし/興産アメニティ「R65不動産沖縄」担当。
TEL:098(882)1717
https://r65.kosanamenity.com/

毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」
第2077号・2025年10月24日紙面から掲載

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