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2024年4月5日更新

沖縄の島々と済州島に樹木生かした水ガメ|幹つたう雨水ためる|住まいに生かす 知恵と風土①

文・写真/照屋寛公(一級建築士・建築アトリエTreppen主宰)


このコーナーは、建築士で民俗学にも造詣の深い照屋寛公さんが先人の知恵を紹介し、気候風土にあった住まいのヒントを伝える。
 
◇  ◇  ◇

 
今年はいよいよ夜間断水となろうか。県内ダムは平年の貯水率を大幅に下回り、土がむき出しの光景に胸が痛む。

水といえば、沖縄の島々で、わら・クバの葉を樹木の幹に結びつけ、つたう雨水を水ガメにためる仕掛けを見かけたことがある=左下写真。沖縄は年間雨量が約2千ミリと比較的多いが、その割に大きな川がない。また、竹富島は石垣島から海底の送水管で水を供給している、島にダムや川がないからである。しかし、赤瓦屋根の軒先に横樋(どい)を設置して雨水タンクに水をためている光景を今も目にする。先人も現代の人々も雨水を「命の水」として貯水しているのである。

私自身、自宅では屋根から伸びる縦樋の下部に水ガメを設置している。植栽に散水することで水の利用循環がよくなり、ボウフラの発生も防げて庭の景観にもいい。狭小な土地や都市部でも手軽に雨水を利用できる方法である。

ところで、ここ数年幾度か韓国の済州島を訪ねる機会があった。島の古い集落を歩いていると、沖縄の島々と同じように、樹木の下に置かれた水ガメを目にしたことがある。なぜ同じような光景が双方の島で見られるのか。

 
 
チョムハンと呼ばれる済州島の水ガメ
 
沖縄の島々で見かける水ガメ


自宅の水ガメ。雨どいから流れ出る雨水を貯水し、庭の植栽などの散水として利用している

 
両島に同じ石質の地表
沖縄に大きな川ができにくいわけは、島々の多くが琉球石灰岩でできているからだ。琉球石灰岩は数万年以上前に海中のサンゴや貝殻が堆積してできている。気孔が多いサンゴでできた島ゆえに、降った雨は地面に浸透し、大きな川がない。それを裏付けるような言葉がある。「うるま」の「うる」はサンゴや砂、「ま」は島という意味である。実際、宮古島あたりでは「砂川」のことを「うるか」と呼んでいる。つまり、「うるま」は「サンゴの島」ということである。

一方、済州島も「サンゴの島」かと言うと、そうではない。韓国の民俗学を研究している友人に尋ねてみたら、興味深い返答があった。済州島は別名で「ハサンソム」と呼ばれているというのだ。「ハサン」とは「火山」のこと、「ソム」は「島」のことを言うという。つまり、済州島は「火山の島」というのだ。その訳はこうだ。島には標高1950メートルと国内最高峰の漢拏山(ハルラサン)があり、噴火でできた島の地表面は火成岩の玄武岩で覆われて黒っぽい色をしている。玄武岩はサンゴと同様に気孔が多く、水が地に浸透するため、沖縄同様、島には大きな川がほぼ存在しないのである。
 
 
陽光の傾きが文化生む
琉球石灰岩と玄武岩、共に空隙(くうげき)の多い岩の特徴から両島の水文化に類似性があるのだろう。「風土」という言葉は、英語で「climate(クライメット)」と訳す。ギリシャ語の「傾き(klima(クリマ))」が語源と言われている。太陽光の傾きが近い場所には、似た文化が生まれるという格言からきているとも。

何十年かぶりに県内は渇水、「うるま島民」はもとより来訪の観光客も水の貴重さを実感し、節水を心がけたい。




琉球石灰岩は比較的軽く空隙が大きい(写真上) 済州島の玄武岩は比重が大きく空隙が多い。いずれも浸透性がよく、雨水は地に浸透するため、両島には大きな川がほぼない





てるや・かんこう
1957年、石垣島新川生まれ。96年に建築アトリエ・トレッペンを開設し、住宅やリフォーム、医院、こども園など幅広く設計活動中。「日本建築士会連合会優秀賞」「住まいのリフォームコンクール」など受賞歴多数。沖縄民俗学会会員。著書に「記憶を刻む家づくり」がある。

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1996号・2024年4月5日紙面から掲載

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