庭・garden
2022年6月3日更新
【プロがつくる庭】岩盤に架かる二門 形を変え続ける庭
大城豊さん宅の庭(金武町)
二重の門かぶりで城のように
自作のベンチから庭眺め
木造赤瓦屋根の大城豊さん(67)宅。道路に面した琉球石灰岩の石垣は、五月雨にぬれてつややかな表情を浮かび上がらせている。這うように枝を伸ばすハイビャクシンが岩と岩の境目を隠しており、一つの大きな岩盤のようにも見える。そこに植物が力強く育っている印象だ。
門の上には、横に長く枝を伸ばした門かぶりのマッコウ(ハリツルマサキ)。その下をくぐり抜けると、今度は門かぶりのマツ。「一般的に門かぶりは一つだけど、首里城のように門がたくさんあってもいいんじゃないかと思って」と大城さん。脇には金魚が泳ぎ、スイレンが咲く小さな池もある。短い距離の中、さまざまな仕掛けで訪問者を迎えてくれる。
階段を上がると、イワダレソウが地面を覆う庭。築山(奥行きを出すために設けた地面の起伏)と相まって、奥にある三石組の海石は遠くに望む山のようだ。ここで大城さんは自作のベンチに座り、庭を眺めながらお酒を飲んだり、夫人と一緒に七輪で焼き鳥やBBQ。夜にはライトアップも楽しんでいるという。
道路から見た様子。門の上には、門かぶりのマッコウが枝を伸ばす。琉球石灰岩が大きな岩盤のように見えて迫力があるが、植物が全体の印象を和らげている
階段の上から見た門かぶりのマツ。枝が通路の上まで伸びている
アプローチ。正面奥にある木製のヒンプンの前で二手に分かれるのは建築士の設計によるもの。「男性は右から、女性は左から」という昔の沖縄の習慣をイメージしたという
追加した場所も違和感なく
お酒で湧き出るアイデア
大城さんが庭に興味を持ち始めたのは、4年前に自宅を新築してから。だが当初は石垣があるだけで植栽などはなかったという。
「風が強かったのでコンクリートブロックで塀を作ってもらったんです。そしたらそこをパーゴラにしよう、ベンチやテーブルもいるな、という具合に手を加えたくなっていったんです」。そして次第に「心が癒やされるような和風の空間にしたい」と考えるように。
そこで、新築時に外構工事をした金勢造園の知念政徳さんに相談した。大城さんが石や植物を選びながら庭のイメージを伝え、置き方などを知念さんが微調整。三石組、マツ、マッコウ、池と、新築時も含めて2年間で5回の工事を行った。「何かを考えて形にしていくのが好きで、庭を眺めてお酒を飲んでいたらアイデアが湧いてくるんです」と大城さん。
追加するたび、知念さんは違和感が出ないよう注意を払ったという。中でも苦労したのが門かぶりのマッコウ。「木を生かすには植える場所の広さが必要。既存の岩の上に石を足して囲いを造り、植栽スペースを設けた」と話す。
大城さんは「次にどうするかは決まっていない」と話すが、今後の変化にも期待が高まる。
階段の上にある庭。地面を覆っているのは芝生ではなくイワダレソウ。大城さんは「芝刈りのような作業は不要で、手入れは雑草の除去くらいなのでラク」と話す
海石を使った三石組。奥の岩は風よけや、外からの視線を遮る役目もある
イワダレソウの花。「庭に花が少ないので、見つけるとうれしい」と大城さん
大城さんがDIYしたベンチ、テーブル、パーゴラ。ここで庭を眺めながらお酒を飲んでいる時に、庭にどう手を加えるかのアイデアが思い浮かぶという
アプローチ沿いにある池。葉の下では鮮やかな金魚などが泳ぐ
門かぶりのマッコウの根元。知念さんは「既存の岩の上に石を足して植栽した」と言うが、継ぎ目がほとんど分からないくらいなじんでいる
ししおどしや池の水の循環装置などは水道関係の仕事をする大城さんが自作した
施工/金勢造園 ☎098・946・7800
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1900号・2022年6月3日紙面から掲載
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この記事のキュレーター
- スタッフ
- 出嶋佳祐
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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。