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2023年8月25日更新

【人物紹介】住宅にスプリンクラーを|(株)水防協 代表取締役の有岡哲司さん[ひと]

独自開発した消火用スプリンクラーの取り付けなどを手がける(株)水防協。代表取締役の有岡哲司さん(54)は「首里城火災を機に、文化財へのスプリンクラー設置に力を入れている。今後は住宅でも普及させたい」と話す。

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文化財や古民家でも設置


(株)水防協
代表取締役 有岡哲司さん


〈プロフィル〉ありおか・てつじ/1969年、福岡県出身。福岡県にあるネオン看板広告会社の経営を経て、2011年、(株)水防協で営業を担当。16年に沖縄に移住し(同)水防協沖縄を設立。19年、(株)水防協の代表に就任。(株)水防協の本店を沖縄に移し、福岡の事務所を支店にする。

◆(株)水防協 沖縄市上地4-2-8
電話=098・989・9480



-事業内容と、代表に就任した経緯は?

水道直結型スプリンクラーの販売や施工を手掛けています。これは福岡県内の水道会社など15社が集まり、(株)水防協として共同で開発したもので、火災が発生してから配管に水が充填されるのが特徴です。

もともと私はその営業を担当していたのですが、7年前、「これを沖縄でも広めたい」と、沖縄で合同会社水防協沖縄を設立。県内の社会福祉施設を中心に設置を進めてきました。

その実績が認められたのか、4年前、水防協の代表になることに。私はウチナームークでもあるので、沖縄を本店、福岡を支店とすることにしました。


-心掛けていることは?

初期消火の大切さを理解してもらえるよう努めています。

例えばスプリンクラーの設置が義務づけられている社会福祉施設には、「義務だから」と仕方なく設置する人もいます。

しかし、数分で燃え広がる火災において初期消火は何より重要。過去にはスプリンクラー未設置の社会福祉施設で悲惨な事故も起こりました。

そんな話を丁寧に伝えることで、設置工事後には「利用者だけでなく、従業員にも安心して働いてもらえる」と喜ばれることもあります。この仕事をやっててよかったと思う瞬間です。


-力を入れていることは?

文化財にスプリンクラーを取り付けること。きっかけは首里城の火災です。とても悲しかったですし、「消防設備に関わっていながら、なぜ手を打てなかったんだろう」と悔やみました。

そこで、久米島町の上江洲家住宅をはじめ、北中城村の中村家住宅、座間味村の高良家住宅など、国指定重要文化財にもスプリンクラーを導入してもらうことに。ほかにも、将来、文化財になるであろう古い建物を残すため、沖縄県古民家再生協会に入会し、副理事長として古民家への消防設備の必要性を訴えてきました。

そして今も首里城が燃えた時の気持ちを忘れないよう、事務所の壁には焼失後の写真を貼り、発奮しています。


-今後の目標は?

住宅用スプリンクラーを普及させたい。沖縄では台風や地震への防災意識が高まっている一方、コンクリート造が多いこともあり、火災への意識はそれほど高くない印象です。ですが、コンクリート造でも家の中には燃える物はたくさんあり、煙が充満する可能性もあります。

命や財産を守るため、住宅にスプリンクラーを付けるのが一般的になればいいですね。その一歩として、スプリンクラー付きの建売住宅も考えています。

また、この会社をしっかり育てて、ゆくゆくは「沖縄の企業」として残していけたらいいなと思います。

久米島町の上江洲家住宅に設置したスプリンクラーについて、消防関係者に説明する有岡さん
久米島町の上江洲家住宅に設置したスプリンクラーについて、消防関係者に説明する有岡さん




水道直結で貯水槽不要
水漏れの心配なく管理ラク

スプリンクラーが作動したときの様子。毎分40リットルの水が勢いよく出て消火するスプリンクラーが作動したときの様子。毎分40リットルの水が勢いよく出て消火する

(株)水防協が開発したスプリンクラーは、水道管に直接つないで水道圧を利用する。そのため「貯水槽やポンプが不要となり、コストやスペースを節約できる」と有岡さんは話す。

また、普段は配管の中に水は入っておらず、火災報知器が作動した時に初めて水が充填される。そして、火災が発生した部屋にだけ毎分40リットルの水が勢いよく出て消火する。スプリンクラー周辺の温度が72度にならないと散水されないため、家中が水浸しになることはないという。

有岡さんは「水漏れしないので管理がラクだし、バッテリー内蔵で停電時も作動する。新築はもちろん、既存住宅にも取り付けることができるので、興味のある方はぜひ一度ご相談ください」と呼びかけた。


取材/出嶋佳祐
週刊タイムス住宅新聞
第1964号・2023年8月25日紙面から掲載

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