家づくり
2023年7月21日更新
介護タクシーで移動を楽に①|介護される側の負担も減[介護を支える 住まいの工夫㉔]
通院や家族での外出時など、要介護者の身体状況によっては、移動に困難や不安を抱くこともある。そこで、要介護者が外出するときの移動手段について2回に分けて紹介する。初回は「介護タクシー」について。介護タクシー「ぼんど」の宮國学さんは「要介護者と介護者、どちらの負担も減るのがメリット」と話す。
介護タクシーで移動を楽に①
介護される側の負担も減
車いすを利用する人などが、安心して外出できるようサポートする「介護タクシー」。車両に専用スロープやリフトがあり、車いすのまま乗降できる。
「介護タクシーには、介護保険が適用されるものと、されないものがある」と宮國さん。「介護保険適用には条件があり、要介護1以上、医師などの診断で必要と認められることなど制限がある。詳細は地方自治体の窓口に問い合わせを」と説明する。
同社では介護保険外の介護タクシーを運営しており、「こちらは車いす利用者の通院や入退院のほか、家族が同乗するケースが多い」という。
料金と予約についての問い合わせも多く、「介護タクシーの料金は一般タクシーのメーターと同等。それに介助の料金がプラスされる。例えば乗降サポートが800円で、それ以上の介助や夜間の対応なども追加になる」。初めて利用する人から、「こんなに楽ならもっと早く使えば良かった」と言われるなど好評だ。ただし、介護タクシーは前もって予約しておく必要がある。同社では基本、1週間前の連絡を呼び掛けている。
利用者目線でサポート
介護タクシーは「要介護者と介護者、両方の心身の負担を軽減できることが最大のメリット」と宮國さん。「車いすから車へ移乗するとき、家族が負担を感じるなら、要介護者も苦痛を感じており、申し訳なさから我慢していることが多い」と指摘。介護タクシーの活用を促す。
「介護タクシーの運転手は、介護の知識や技術を持っており、利用者の安全な移動を常に心掛けている」と宮國さん。「ドアを閉めるときは、大きな音や風圧で気持ちや鼓膜に影響しないよう、窓を少し開けておき、ゆっくり閉める。舗装されていない道では頭部が揺れやすいので、なるべく揺れないように運転するなど、利用者目線でサポートすることを大切にしている」と語る。
同社の吉村敦さん、鹿川理絵さん、上江洲久美子さんは「コロナ感染症の拡大前は、買い物や、お盆、清明祭(シーミー)で施設から一時帰宅するときにもよく活用されていた。皆、安心して移動できたこと、家族で良い時間が過ごせたことを喜んでくれる。その笑顔がやりがい。介護タクシーの活用で心身の負担を減らし、人生を豊かに過ごす時間を増やしてほしい」と呼び掛ける。
車いすに乗ったまま介護タクシーで移動
介護タクシーは専用スロープなどが付いていて、車いすに座ったまま乗降できる=写真。介護タクシーぼんどでは他にも、ストレッチャー(寝台)に乗って移動できる大きい車両もあり、家族が同乗して外出するケースも多い。「予約制だからこそ、タクシーが来るのを待たずに済み、スケジュールに合わせた移動ができる」と宮國さん。昨今は「透析治療のため、施設と病院の通院に活用される事例が増えている」と話す。(写真提供:介護タクシーぼんど)
「ぼんど」で介護タクシー事業に携わるスタッフの皆さん。右から統括責任者の宮國学さん、吉村敦さん、鹿川理絵さん、上江洲久美子さん
70代Aさんのケース
車いすのまま
きょうだい7人と外食
車いすを利用している70代のAさん。そのきょうだいが、一緒に外食を楽しみたいと、介護タクシーを依頼。車いす以外に7人乗車できる介護タクシーで一緒に出掛け、外食を楽しんだ。要介護者を含めた高齢者同士の外出は困難なことが多いが、介護保険外の介護タクシーを活用できたことで、きょうだい水入らずの楽しい時間を過ごせた。
取材/赤嶺初美(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1959号・2023年7月21日紙面から掲載