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2022年12月23日更新

[沖縄]自然の色彩を紅型に表現|小倉美左さん(のんとみ工房代表)|家々人々[128]

古典紅型を基本に据えながらも、沖縄の自然を丁寧に写生し、新しいデザインを創作。緻密で深い色彩の表現が高く評価されている「のんとみ工房」代表の小倉美左さん(70)。活動拠点とするアトリエ兼住宅で話を聞いた。

自然の色彩を紅型に表現

小倉美左さん のんとみ工房
おぐら・みさ/1952年、東京生まれ。78年、東京藝術大学卒。那覇市首里の名渡山紅型工房にて紅型研修。86年、沖縄県立芸術大学にて染織工芸の教育研究に従事。2009年、同大学教授を退職。写生により自然物の形態や色彩から新たなデザインを創作し、型染めによる多彩な表現を展開。


■素晴らしい作品と、景色に心奪われました。

この住宅兼アトリエは27年前に夫が設計して建てたものです。日々、自然を感じながら、創作のヒントも得ています。

東京から沖縄に移住したのは1986年。琉球大学で建築を教えていた夫と結婚し、私も県立芸大で教職に就くことになったので、生活と制作の拠点を建てたんです。


■美術は幼少期から好きでしたか?

実は、小学生のころは嫌いでした(笑)。決められた同じ表現をするのが嫌で、成績も悪かったんです。中学、高校で先生や環境に恵まれ、自由な表現ができるようになってから美術が好きになりました。

東京の自宅は自然に囲まれ、父が写生のためにいろいろな鳥を飼育していました。父は「自然が師範であり、自然の美しさを自分に受け入れてこそ、新しいものが生み出せる」と教え、写生をとても大切にしていました。そんな姿を見ながら育ったことが今の私の創作につながっていると思います。


現在の住まい

27年前、南城市に建てた2階建の自宅は、建築家である夫の小倉暢之氏が設計。1階が工房で、2階がギャラリー兼住居スペースになっている。
27年前、南城市に建てた2階建の自宅は、建築家である夫の小倉暢之氏が設計。1階が工房で、2階がギャラリー兼住居スペースになっている。


■父、祖父ともに工芸家だった小倉さんが、なぜ紅型の道へ?

東京藝大では漆と違うものを学んでみたいと陶芸を専攻したのですが、沖縄に来たとき、名渡山紅型工房で紅型を見て、「これだ!」と思ったんです。それから東京と工房を3~4年ほど行き来し、大学生活と両立させながら学びました。

名渡山先生に教えていただいた伝統的な紅型の技法を生かしながらも、独創性や芸術性を追求する姿勢を忘れたくないと思っています。


■今後の目標は?

工芸品は使えるものであることが大切です。その上で、生活の空間を豊かにするものを作っていきたいです。

生活空間が豊かになれば、心も豊かに家庭も明るく、朗らかになる。身近なところにある作品で、見る人の心が少しでも明るくなってくれればと思って制作しています。
 
◇    ◇    ◇
 
2023年4月28日~30日、おきなわ工芸の杜(豊見城市)で開催されるクラフトフェアに向け、創作に取り組む小倉さん。どんな作品に出合えるか、期待に胸が膨らむ。

 

ホッと空間
風と景色を楽しむギャラリー

ギャラリーの大きな窓からは、木々の緑や空と海、久高島などが見渡せ、季節や天気によっていろいろな表情を楽しめる。「コーヒーを飲みながら新聞や本を読んだり、お客さまとおしゃべりして過ごしています」と小倉さん。
ギャラリーの大きな窓からは、木々の緑や空と海、久高島などが見渡せ、季節や天気によっていろいろな表情を楽しめる。「コーヒーを飲みながら新聞や本を読んだり、お客さまとおしゃべりして過ごしています」と小倉さん。



プライベートはこんな顔
海や久高島を見渡せるリビングからの景色が好きで、特に満月の夜、月明かりに揺れる波の、幻想的で美しい風景は作品でも表現しました。
海や久高島を見渡せるリビングからの景色が好きで、特に満月の夜、月明かりに揺れる波の、幻想的で美しい風景は作品でも表現しました。

取材/赤嶺初美(ライター)
毎週金曜日発行 週刊タイムス住宅新聞
第1929号・2022年12月22日紙面から掲載

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