企業・ひとの取り組み
2022年4月1日更新
沖縄|【ひと】“家づくり×心理学” 提唱|前海 佐季子さん|ielie(イエリエ) 主宰
現在、県内で唯一の空間デザイン心理士(R)である前海佐季子さん(45)。昨年創業した「ielie(イエリエ)」では、一級建築士や2児の母としての経験を生かし、新たな分野に挑戦。「心理学に基づいた家づくりで人生が変わる」と語る。
住空間に幸せを仕掛ける
前海 佐季子 さん
ielie(イエリエ)主宰
-独立起業した経緯は?
建築会社で働いていた頃は、家づくりに大切なのは「デザイン性や暮らしやすさ」だと考えていました。そんな考えをがらりと変えたのは、一冊の本との出合いです。
「家の間取りが夫婦や親子関係に影響を及ぼし、子どもの心をゆがめてしまう原因になりうる」という説を建築家の視点で唱えたもので、子どもの頃に住んだ家が人格形成の土台になる場所だと初めて気付かされました。
責任重大なものをつくっているということを再認識すると同時に、空間と人の心との関係をより深く知りたいという気持ちが芽生え、本格的に学んだのが「空間デザイン心理学(TM)」です。
心理学を通した空間デザインとは、住む人の状態(心身、感覚、性格、価値観、生活スタイル、経験)と空間の状態を心理学の手法で解析し、親子や夫婦などの人間関係が自然に調和するような“仕掛け”をつくること。新築や大掛かりなリフォームをしなくても、ソファの向きを変えるなどのちょっとした模様替えで、コミュニケーションの質が上がり、居心地のいい幸せな空間が生まれます。
この空間デザイン心理学(TM)の考えと建築業で培ってきた経験や知識を組み合わせて、家づくりのサポートができないか。お客さまとじっくり関わりながら、“建てない一級建築士”という肩書で納得するまでやってみたいと思い、起業を決めました。
主婦から「ワークスペースがほしい」という依頼を請け、おうち診断中
-仕事で心がけていることは?
まずは、話をとことん聞き、家族関係やお客さま自身でも自覚していない記憶、思考や行動のパターンなどを深掘りした上で、潜在的なニーズを拾うことから。その情報をもとに図面を引いて改善案をプレゼンし、お客さまと一緒に今できる最大限の方法を考えていきます。
主婦の方からの相談も多いので、子育て経験を生かしたママ目線での「おうち診断」も好評。子どもの様子に目が届く家具のレイアウト、家事の手間が大幅に減らせる部屋づくりや片付け法など、悩みに沿った環境づくりのアドバイスもしています。
-今後の目標は?
講座やワークショップ、ラジオ、ユーチューブなどで、空間づくりの大切さを一般の方にもわかりやすく伝えていく活動を展開していきたいです。
4月からは、本紙(毎月第3週)で「家と心理」をテーマにした連載を手掛けることになりました。皆さんの家づくりのヒントになるとうれしいです。
後悔しない家づくり
一般向けの建築教育にも力
ワークショップの様子。受講者からは「多くのことが整理され、見える化できた」と好評だという
「理想の家をかなえたい」「いざ家を建てるとなると、何から始めたらいいかわからない」という人に向けて、ielieでは家づくり入門のワークショップを不定期で開催している。
レクチャーするのは、家づくりの準備から完成までの流れ、心理学を通した図面の見方や間取りの考え方など。前海さんは「家はワクワクしながら楽しんでつくるもの。十分な準備をしておけば、慌てないで後悔しない家づくりができると思います」と、家づくりに関する教育や情報収集の場の必要性を語る。
「実際に家づくりが決まった際には、アドバイザーとして家具やカーテンなどインテリア全般の提案もしていきたい」と意欲を見せた。ワークショップの詳細はHPにて確認を。
〈プロフィル〉まえうみ・さきこ/1976年、嘉手納町出身。20年勤務した建築会社で約120軒の住宅に関わった後、2021年6月、ielieを立ち上げる。一級建築士、空間デザイン心理士(R)、インテリアコーディネーター、お片付けコンサルタント(R)、アートライフスタイリスト。趣味は絵を描くこと
◆ielie(イエリエ)
ホームページ:http://ielie.net
第1891号・2022年4月1日紙面から掲載
取材/新崎理良子(ライター)