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2021年7月16日更新

沖縄|【ひと】設置場所考え進化続ける|能勢 裕子さん|彫刻家

木だけでなく、金属板や塩ビパイプ、波板といった建材などの異素材も組み合わせて作品をつくる、彫刻家の能勢裕子さん。沖縄建築賞では審査員も務める。「新しいものを受け入れ、進化しながら作品を作り続けたい」と話す。

建材使った作品づくり



能勢 裕子さん
彫刻家



-彫刻家になった経緯は?

昔から何かを作るのが好きで、大工さんに憧れていました。というのも、子供の頃に経験した自宅の建て替えの時、人が動くことでものが出来ていくことに対し、「うらやましい」という気持ちや、美しさ、快感を覚えたんです。

そのため成人してから、「ものを作る」という点では同じ、彫刻の道に進みました。

最初は木製のものを作っていたのですが、ある日、アトリエの改装でFRP波板やパンチングメタルといった建材を使用。作品の素材として興味が湧き、それらを組み合わせて作るようになりました。

-心掛けていることは?

作品を置く「場所」や「関係性」を意識します。展示会なら広さや照明の当たり方、公共のものなら景観や耐久性などを考えて作ります。例えば浦添市の住居表示案内板では、各地域の特色を反映させたり植栽を添えたりしながら、48基製作しました。

そんなふうに自分の力を出し切って満足いく作品ができた時はやりがいを感じます。また、そういったものは周りからの評価も高い。作品がその空間にあることで「おもしろい」などと感じてくれるとうれしいですよね。

-沖縄建築賞の審査員も務めている

今回で5回目ですが毎回、建築士の工夫や努力に感心しています。今回の審査では応募者全員からお話を聞ける予定なので、すごく楽しみです。

-今後の目標は?
作品を生み出し続けたい。でも、ただ継続するのはおもしろくない。頭を常にクリアな状態にして新たな刺激を受け取り、新しい素材を使うなど進化もしていきたいですね。


浦添イメージの巨大作品
市役所ロビーの吹き抜けに


能勢さんが手掛けた、浦添市役所のロビー吹き抜けにある作品(尾形一郎撮影)

浦添市役所ロビーの吹き抜け部分に、能勢さんが手掛けた作品の一つである壁面レリーフがある。高さ約12メートル、幅約4メートルと大きなもので、「てだこのまち」をモチーフに太陽や自然、街並みを表現している。

太陽部分に使った吉野杉の床柱をはじめ、パンチングメタルや塩ビパイプ、ネオンなどさまざまな素材を活用。内装業者や鉄工所にサポートしてもらいながら、作品の完成度と安全を最優先に設置したという。

能勢さんは「角度によって見え方が変わる。下から見上げるだけじゃなく、いろいろな階から見てほしい」と話した。

〈プロフィル〉
のせ・ゆうこ/横浜市出身。多摩美術大学大学院を卒業後、彫刻家として活動。1980年、結婚を機に沖縄に移住。87年、第42回行動展(行動美術協会主催)で行動美術賞受賞、現在は同協会の会員。95年、沖縄タイムス芸術選賞奨励賞。98年、北谷町砂辺にアトリエを構える。2017年から沖縄建築賞の審査員。
◆浦添市港川2-28-1  電話098・878・7529 毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞

 


第1854号・2021年7月6日紙面から掲載

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出嶋佳祐

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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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