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2018年5月25日更新

【第4回沖縄建築賞】新人賞/「南風原の老人福祉施設」(南風原町)/山口瞬太郎氏(35)/山口瞬太郎建築設計事務所

県内の優秀な建築物・建築士を表彰する「沖縄建築賞」(主催/同実行委員会)。全28作品の中から、第4回の入賞作品6点が決定した。住宅部門正賞には漢那潤氏の「本部町の新民家」が、一般建築部門正賞には大嶺亮氏の「FFDunit」が選ばれた。

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40歳未満の建築士に与えられる新人賞には、「南風原の老人福祉施設」を設計した山口瞬太郎さんが選ばれた。

沖縄建築賞|新人賞 「南風原の老人福祉施設」(南風原町)
外観。手すりと日射・台風対策を兼ねた木製ルーバーが、黒い外壁によく映える。ルーバーは縦方向にスリットが入っているので、車いすやベッドに寝たままでも景色が楽しめる


新人賞
「南風原の老人福祉施設」(南風原町)

らしくなさを追求

中庭から光と気配
那覇インターの近く、丘の上に建つ4階建ての「南風原の老人福祉施設」。設計した山口瞬太郎氏は「従来の施設が持つ『閉鎖的』『薄暗い』といったネガティブなイメージを払拭(ふっしょく)し、家族や地域とつながりやすいような、福祉施設らしくない施設を目指した」と話す。
その一つが、ホテルのようにも見える外観。黒い外壁に、強い日差しや台風などから入居者を守る木製ルーバーを並べ、緑豊かな景色に溶け込むようにした。
内部はスタイリッシュさはそのままに、自然の光も入って明るい。それに大きく貢献しているのが、建物の中央にある中庭だ。1階から吹き抜けになっているため、暗くなりがちな各フロアの中央付近にも光をもたらす。各階から互いの様子が見え、声も聞こえる。
さらに1階は、サッシを開け放てば、エントランスから中庭、パブリックスペース、外庭までを一つの空間として使うことができ、イベント時などに活用しているという。
職員は「入居者に活気が出た。外の明るさが分かるので、睡眠時間など生活リズムが安定してきた人もいる」と変化を話す。
審査員からは「明るさの演出が見事」「老人ホームらしくないところが新しさを感じる」という声が挙がった。そのほか、家具や手すりなど手に触れる部分には木を使った点や、シンプルな動線計画などが評価された。



2階バルコニーから見た中庭。階ごとにバルコニーの位置を変えているため、各階に光が届きやすく、互いの様子も確認しやすい


4階にある有料老人ホームの食堂。オープンキッチンで家庭的な雰囲気


一般の利用者も多い1階カフェ。右の中庭や奥の外庭から光が入って明るい



設計者代表/山口瞬太郎 氏(35)
山口瞬太郎建築設計事務所

「施設らしくない施設」というオーダーに悩みつつも、今までにないものをつくる楽しさを感じ、夢中で取り組んだ作品。関わった方々の顔が思い浮かびます。今の自分だから取れる新人賞をいただけてうれしいですし、正賞に向けての意欲も湧きました。


 

審査講評 新人賞

「南風原の老人福祉施設」

車を運転し高速道路を使用する人なら誰でもが目にしていると思う。那覇出口に向かって左側の丘の上に立地している施設である。
手すりに木のルーバーを使用し、外壁は、黒色のカラークリアー仕上げとなっている。木のルーバーを強調したいがため、黒子のイメージで外壁を黒色にするのはあまり好ましいとは、思えないが、外部の暗いイメージと違い内部に入ると一転して明るい世界となる。エントランスホール、中庭、パブリックスペース、外部テラスを一直線に配置し、施設の明るさが見事に演出され存在感のある内部及び外部空間となっている。
外部テラスでの、施設利用者の楽しいひと時が目に浮かぶようである。上階の施設利用者のスペースも無垢の木を使用しシンプルでかつ明確な動線も受賞の一因なった。今後の沖縄建築文化向上にますますの活躍を期待したいと思います。



 

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1690号・2018年5月25日紙面から掲載

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