沖縄建築賞
2018年5月25日更新
【第4回沖縄建築賞】タイムス住宅新聞社賞「ウルマノイエ」(うるま市)/美濃祐央氏(44)/一級建築士事務所 mino archi-lab
県内の優秀な建築物・建築士を表彰する「沖縄建築賞」(主催/同実行委員会)。全28作品の中から、第4回の入賞作品6点が決定した。住宅部門正賞には漢那潤氏の「本部町の新民家」が、一般建築部門正賞には大嶺亮氏の「FFDunit」が選ばれた。
正賞に次ぐタイムス住宅新聞社賞は、美濃祐央さんの「ウルマノイエ」が受賞した。
Public(公)スペースの中央にある玄関ホール(ナカメー)。いくつものスリット窓から光が差し込む土間空間。施主はハンモックを置き、「夜は寝っ転がって星を眺めています。時間がたつのを忘れる」とリビングのように使っている
タイムス住宅新聞社賞
「ウルマノイエ」(うるま市)
柔らかくつながる
光や風を自在に操る
南側には実家(母屋)があり、隣近所も顔なじみという環境。その関係性を意識し、外部とのつながりを重視した「ウルマノイエ」がタイムス住宅新聞社賞を受賞した。
設計した美濃祐央さんは「新規の塀は設けず、建築計画によりプライバシーを確保することを基本に考えた」と語る。南側にある母屋との間には中庭を配し、柔らかくつながれるよう配慮。子どもたちのスタディースペースを母屋のキッチンに面するよう配置するなどの繊細な空間構成に、審査委員からは「家族の関係を密にしている」との声が挙がった。
そして、新素材を使った挑戦的な試みも好評を得た。建物北側の壁面に採用した超薄肉コンクリート製の回転扉だ。開閉の加減により、日射や通風を調整し、プライバシーも確保できる。審査委員からは「沖縄特有の暑さ、強風から室内を守るだけでなく地域への開放感も創出している」と評価した。
さらに、審査委員をうならせたのが、玄関ホール(ナカメー)の天井から壁にかけてのスリット状の開口部。いく筋もの陽光が差しこみ、壁を模様付ける。このナカメーは家族が集うLDKの中央に位置している。ナカメーや中庭などの余白空間を充実させたことで間取りや境がゆるやかになり、「使い方の選択肢を広げた」との柔軟性も評価された。
北側の外観。写真右側に見えるのが回転式の超薄肉のコンクリート製の回転扉。ここを開閉することで子ども部屋や寝室、物干し場などに入る光や風を調整する
回転扉を全てしめたとき。開閉することで光や風、沿道からの視線をコントロールする
回転扉を3分の4開けたとき
公(Public)、私(Private)を明確に分けたほか、南側にある母屋とのつながりも重視した
設計者/美濃祐央 氏(44)
一級建築士事務所 mino archi-lab
市街住宅地で沖縄の地域性をいかに表現し、快適な住まいをどう実現するかという大命題に、新素材を取り入れるなどし一つのありようを示そうとまい進しました。施主のH様ご家族には大きな温かさをもって接していただき、ご配慮に感謝です。
審査講評 タイムス住宅新聞社賞
「ウルマノイエ」
作品は、区画整理された閑静な住宅街の実家(母屋)の敷地北側に位置。ご両親を含めた家族や地域との関係性を意識したテーマの他、挑戦的な試みが評価された。 まず審査員をうならせた試みが玄関ホールの天井から壁にかけてのスリット状開口部。 昼間はいく筋もの陽光が壁に走って室内を照らし、晴夜は開口部から見える月光とともに星空が幻想的な空間を醸し出す。
もう一つは、建物北側の壁面に採用した超肉薄PCパネル(HPCパネル板)による可動式ルーパーだ。開閉の加減による日射・通風調整で沖縄特有の暑さ、強風から室内を守り、外から視界を遮ることでプライバシーを守る役割を果たす。同時に外塀を省くことで地域への開放感も創出している。
住居空間は家族の成長に合わせ、使い方の選択肢を広げる狙いで間取りや境を緩やかに。さらに中庭(ナカメー)を母屋との間に配して双方からそれぞれの生活がうかがえるにしたことで家族の関係を密にしている。
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1690号・2018年5月25日紙面から掲載