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2018年5月25日更新

【第4回沖縄建築賞】住宅建築部門 正賞/「本部町の新民家」(本部町)/漢那潤氏(41)/ISSHO建築設計事務所

県内の優秀な建築物・建築士を表彰する「沖縄建築賞」(主催/同実行委員会)。全28作品の中から、第4回の入賞作品6点が決定した。住宅部門正賞には漢那潤氏の「本部町の新民家」が、一般建築部門正賞には大嶺亮氏の「FFD unit」が選ばれた。

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第4回沖縄建築賞 入賞作決まる

住宅建築部門の正賞を受賞した、漢那潤さん設計の「本部町の新民家」。やんばるの景色に溶け込む古民家の雰囲気は残しつつ、漢那さんが開発したオリジナル金具を用いた構造計画で、四方に開くことのできる新たな木造住宅を作り上げた


住宅建築部門 正賞
「本部町の新民家」(本部町)

「古」に習い「新」に挑む

構造進化させ開放的に
「移植された建築から、土着する建築へ」。その思いを胸に、漢那潤さんが、沖縄の気候風土に本当に合った建築を追求し、至ったのが「本部町の新民家」だ。木造平屋の古民家を現代の視点で組み立て、屋敷林に囲まれたやんばるの集落に溶け込む住宅を完成させた。
「新民家」を設計する中で漢那さんは「多くの部分で過去の土着した木造建築と同じ結論に至った」と言うが、「単に過去の模造のみにならないように」と知恵を絞り、進化させたのが構造計画。それを審査員らは「見事」と評価した。
その構造とは、筋交いを外側に出す形で配置=下コンセプト図。この筋交いが家を支えるため、外壁面を壁にせずに済み、四方に開口部を設けることが可能になった。内部空間にも耐力壁が不要のため、間取りが自由に変えられる。「さまざまな大きさ、要望に対して変形できる沖縄の木造平屋のプロトタイプ(原型)を目指した」と漢那さん。構造計画と簡潔な空間配置が評価され、満場一致で正賞に選出された。


▼コンセプト図

漢那さんが開発したオリジナルの金具を用いて、軒下に筋交いを配置。これにより、四方に開放性を獲得。庭との一体感が得られた


現地審査では、台風対策への質問が挙がった。四方の開口部は防風ネットで防護するほか、家をぐるりと囲む屋敷林も防護してくれているという。敷地環境をうまく建築に取り入れ、広々と伸びのある空間を獲得していることも評価された。審査委員は「『土着する建築』への志向を新たな形で表現しようと試みた様子がよくうかがえる」とし、「沖縄の風土性を表現する優れた建築」として正賞に選んだ。



「本部町の新民家」の室内。四方に開口部があり伸びやかで開放的だ


軒下にある斜材が構造のミソ。この筋交いが家を支えるため、外壁面を壁にする必要がなくなり、開放的な間取りを実現した


▼平面図

漢那さんが「効率的に機能を満たすことを意識した」という簡潔な間取り。内部に耐力壁が不要のため、自由な間取りが可能だそう



設計者/漢那潤氏(41)
ISSHO建築設計事務所


初めて沖縄で手掛けた建築が評価されたことは、今後の建築活動における大きな活力になります。また、今までにない木造建築に挑戦してくださった職人の方々には、感謝しかありません。新民家を起点に、少しでも沖縄の建築風景が美しくなるよう尽力していきたいと思います。

 

審査講評 住宅建築部門 正賞

「本部町の新民家」

山原の自然豊かな集落の中に建つ木造住宅は、建築面積57㎡の小規模ながら四周を開口部とアマハジで覆い、周囲の屋敷林と一体となって広々と伸びのある空間を獲得している。内部からの視野の広がりを確保するため、構造はドリフトピンによるオリジナルのジョイント金具を用いてアマハジ部分に斜材を配置しており、単純化された構造計画と簡潔な空間配置が見事な調和を見せている。
そこには、作者自身が沖縄との繋がりの中から伝統的民家に関心を寄せ、その自然な成り立ちから多くを学んで「土着する建築」への志向を新たな形で表現しようと試みた様子がよく窺える。それは、建築のスケール感や素材感、さらに敷地環境との一体感という点に表れており、伝統意匠をベースにして、作者自身が現代という時代性に正面から向き合うことで新たに導き出した創造活動の産物でもある。
本作品は沖縄の風土性を表現する優れた建築作品として、ここに正賞を贈る。



 

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1690号・2018年5月25日紙面から掲載

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