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2018年11月23日更新

応援!おきなわ技能五輪・アビリンピック2018

23歳以下の若手技能士が技を競う「第56回技能五輪全国大会」が11月2日~5日に県内各地で開かれた。同大会の全42競技のうち、住宅建築にかかわりの深い「家具」「建具」「左官」「建築大工」「タイル張り」競技(会場はすべてANA SPORTS PARK浦添)の様子をリポートする。

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プロの技にくぎ付け

「やばい! どうしよう…」。会場取材で真っ先に思ったこと。選手は皆、こちらに背を向けたり、うつむいて一心不乱に作業をしている。「顔が見えなきゃ絵にならない…」。シャッターを切れないまま会場を歩いた。

しかし、一人一人に目をむけて気がついた。「建築大工」の選手の耳に挟まる鉛筆に、「建具」や「家具」の選手が材を見つめる後頭部に、「左官」や「タイル張り」選手の緊張感みなぎる背中に、職人魂がにじむ。気がつくと、夢中でシャッターを切っていた。

作業台は常に整然と
5競技の中で、ひときわにぎやかだったのが「家具」で、33人の選手が出場。かんなやのみなどの手工具、丸のこ盤や電動ドリルなどの電動工具も使用可能で、方々から多彩な作業音が上がる。選手たちはさまざまな工具を使いこなしつつ、段取りにも気を配る。使う材や道具を取りやすい位置に置き、使い終わったら戻す。それを流れるように行う。常に整然とした作業台。無駄な時間や空間を排除した、プロの仕事がそこにあった。

隣では「建具」競技が行われていた。参加者は8人と少なめ。すべての面が人目に触れる建具は高度な技術が必要なのだという。

畳1枚大の板に実寸大の図面を描き、それに合わせて材を切り出し、組み上げていく。凹凸をつけた材をつなげては外し、削り直してはまたつなげ、を繰り返す。選手たちは、周囲の音も観客の視線もどこ吹く風。目の前の材とひたむきに向き合う姿が印象的だった。

家具


▲家具は、脚付きのキャビネット=上写真=を製作。寸法や出来栄えとともに、引き出しや扉部の動きのスムーズさも評価の対象になる


建具

▲建具の課題は、木材の曲線加工(R加工)なども含まれ、難易度が高い=上写真。製図時間も含め、11時間30分で完成させなければならず、技術力とともに集中力も問われる
 

背ににじむ職人魂

段取りが出来を左右
「建築大工」の会場は、丸まった背中で埋め尽くされていた。木造小屋組みの一部を製作すべく、足元の材と格闘する84人の選手。

序盤は驚くほど静か。さしがね(定規)を木に当てるカチンという音、鉋(かんな)をひくシャッという小さな音すら響く。後半になると、「建具」競技と同じく木材をつないでは外し、調整を繰り返す。接合部の美しさが出来栄えを左右する。顔を床にこすり付けるようにして接合部をのぞきこみ、懸命に調整を続けていた。

5競技の中で、女性の姿が目立ったのが「左官」だ。17人の選手のうち6人が女性。片手で漆喰(しっくい)などの塗り材を持ち、コテで押し付けるようにして塗っていく。結構な力仕事だと思うが、淡々と作業をする背中は頼もしい。

「塗り」のイメージが強い左官だが、課題は軽量鉄骨を組み立て、石膏(せっこう)ボードを設置し「壁を作る」ことから始まる。さらに壁の装飾具「モールディング」の製作も含まれる。仕事の幅広さも知ることができた。

「タイル張り」は、選手の背中の向こうでピタッ、ピタッとタイルが張り合わさっていく心地よさや、みるみる仕上がっていく課題の首里城に思わず見入った。単に既存のタイルを張るだけでなく、課題図に合わせてタイルを切断して組み合わせていく。加工が1ミリでも狂うと、ピタッとはいかない。

美しい仕上がりは、下準備にあり、段取りにある。職人の神髄(しんずい)を見た。


建築大工

▲建築大工の会場。横顔すら見えないほどうつむき、懸命に作業する選手たち


▲建築大工の会場には作業台がない。選手たちは足元に加工用の角材を置き、そこで作業を行う。課題は「傾斜柱建て小屋組み」

タイル張り

▲タイル張りは毎年、開催県ならではの課題が出る。栃木県で行われた昨年大会ではイチゴが描かれ、ことしは沖縄を象徴する首里城が課題となった。選手は、赤や白のタイルをパズルのように組み合わせ文字や絵を描いた

左官

▲石膏(せっこう)ボードの味気ない壁が、左官仕事が入ることによりデザイン性も高まる。塗り以外にも、石膏でモールディング(壁の凸装飾)を製作するなど、幅広い技術が必要とされる
 

地元大会で県勢躍動!

「おきなわ技能五輪・アビリンピック2018」の写真特集
「第56回技能五輪全国大会」と、15歳以上の障がいがある人が技能を競う「第38回全国アビリンピック」は11月2日に奥武山陸上競技場で開会式が行われ、3~4日に県内各地で競技を実施。5日に同競技場で閉会式をして幕を閉じた。沖縄で両大会が開催されるのは初めて。地元の応援を受け、県勢が躍動。たくさんの受賞者が出た。開会式やアビリンピックの様子などを紹介する。

アビリンピック



▲写真①


▲写真②
▲アビリンピックは22競技すべてが奥武山公園で行われた。木工(上写真①)や家具(上写真②)は同公園内の沖縄セルラーパーク那覇で開催。両競技では惜しくも県勢の入賞は無かったが、真剣な表情で作品と向き合っていた

造園

▲大雨の中、開催された造園競技。選手はカッパを着用し、ぬかるみと格闘しながら作業を行った。写真は銀賞を受賞した當間元士さん(手前)、玉那覇兼吾さんペア。安里一希さん、比屋根彰馬さんペアも敢闘賞を受賞した(3日午後/浦添ふ頭南緑地)

開会式


▲選手宣誓をした技能五輪・日本料理の選手・當山咲良さん(左)は金賞、アビリンピック表計算の選手・宮里政也さん(右)は努力賞を受賞


▲開会式で県旗の旗手を務めた技能五輪の配管の選手・屋宜宣好さん(左)と、アビリンピックの喫茶サービス選手・照屋日路奈さん(右)。屋宜さんは敢闘賞、照屋さんは銅賞を受賞した

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1716号・2018年11月23日紙面から掲載

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