沖縄建築賞
2017年5月26日更新
【第3回沖縄建築賞】一般建築部門 正賞/「クニンダテラス」(那覇市)/島田潤氏(64)/デザインネットワーク
県内の優秀な建築物・建築士を表彰する「沖縄建築賞」(主催/同実行委員会)。第3回の入賞作品7点がこのほど決定した。住宅部門正賞に金城司氏の「中村家住宅」、一般建築部門正賞に島田潤氏の「クニンダテラス」が選ばれた。
第3回沖縄建築賞 入賞作決定
一般建築部門で正賞に選ばれた「クニンダテラス」。中国との歴史の深い那覇市久米に建つ。松山公園や、裏側にある福州園などの利用を促す2階建ての文化交流施設
一般建築部門 正賞
「クニンダテラス」(那覇市)
緑と一体 丘の建築
敷地特性を生かして
「クニンダテラス~歴史と未来をつなぐ丘~」は、海の玄関口、那覇クルーズターミナルと那覇市街地を結ぶ道の中央に位置する。 入り口は海へ向けて大きく設けられ、福州園の豊かな緑を背負う。
「クニンダ」とは、琉球の交易を支えた「久米村(現在の那覇市久米一帯)」のこと。その歴史を学べる展示室や、のんびり涼めるアマハジテラス、レストランなどが併設され、地元の人々や観光客の憩いの場として利用されている。
屋上テラスは散策できる。南を向けば濃緑の向こうに福州園が見え、北を向けば眼下にカラフルな「チュンジー広場」や松山公園が広がる。見る角度により、景色がガラリと変わるのも面白い。
クニンダテラスを「丘」の形にした理由は、場所と環境にある。
設計した島田潤氏は「街と海を緩やかにつなぎ、緑の拠点となるような建物にしようと思った」と狙いを語る。
審査員は「敷地特性に対する優れた洞察力と、建築空間への豊かな構想力を見事に融合させている」とし、満場一致で正賞に選出した。
2016年5月にオープンして1年。展示物に見入る人、テラスでくつろぐ人、さまざまな姿がそこにある。「地元市民と観光客、両方の憩いの場を創出するという難しいテーマに挑んだ、意欲的な作品」と評価された。
「緑の丘」を意識したクニンダテラスの外観。写真奥、大きな木々が見えるところに福州園がある。周辺の環境を生かしつつ、人々の憩いの場を作った点が評価された
建物の中には、利用者が多目的に使える交流室や涼を呼ぶ池がある。他にもクニンダ(久米村)の歴史や文化に触れることのできる歴史展示室や、ミスト噴水の出る広場もあり、人々が思い思いに学び、くつろげるようになっている
施設全体図
「丘」の形状をした建物だけなく松山公園と接するカラフルな「チュンジー広場」や人々を迎え入れる花のアーチのある「パーゴラ」部分も含めて設計した。ちなみにチュンジー広場は名前の通り、沖縄の伝統将棋であるチュンジー盤を模している
島田潤氏(64)
デザインネットワーク
費用だけでなく内容で提案を選ぶプロポーザル方式の公共建築という点で、クニンダテラスが受賞した意義は大きいと思う。県民のためになる建築を追求する中で、評価も付いてきた。ベテランと言われる年齢になったが、だからこそ若手の指標になれるよう、挑戦を続けたい。
審査講評 一般建築部門 正賞
「クニンダテラス」
この作品は那覇市中心部にあり、また、中国との歴史の深い久米にある。周囲には中国式庭園で知られる福州園の小高い緑の丘と、旧久米村の文化を残す赤瓦屋根の建物に囲われている。さらに、西方には大型クルーズ船ターミナルがあり、観光客の玄関口に近い。ここに、地元市民の憩いの場と観光客の憩いの場を共に創出するという難しいテーマに取り組んだ意欲的な作品である。
設計者は、歴史性と現代性を共に両立する豊かな建築空間を設計するため、緑の丘の高低差とターミナルへの軸線という敷地の持つ特性を積極的に計画に取り入れ、これらを作品全体の骨格としている。そして、建築主要部の上部には緑の屋上テラスを設け、隣地擁壁との間の開放的吹抜けを組み合わせる事により、魅力的なアクセス空間を構成している。
敷地特性の理解に対する優れた洞察力と、建築空間の豊かな構想力が融合した完成度の高い作品として正賞に相応しい作品である。
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クニンダテラス~歴史と未来をつなぐ丘~/設計:島田潤(デザインネットワーク)