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2017年5月26日更新

【第3回沖縄建築賞】住宅建築部門 正賞/「中村家住宅」(南風原町)/金城司氏 (45)/門一級建築士事務所

県内の優秀な建築物・建築士を表彰する「沖縄建築賞」(主催/同実行委員会)。第3回の入賞作品7点がこのほど決定した。住宅部門正賞に金城司氏の「中村家住宅」、一般建築部門正賞に島田潤氏の「クニンダテラス」が選ばれた。

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第3回沖縄建築賞 入賞作決定

住宅部門の正賞作品「中村家住宅」。幅10メートルほどの開口部により、庭と一体化するLDKは、夏場でもクーラーが不要なほど心地良い南風が通り抜けていく


住宅部門 正賞
「中村家住宅」(南風原町)

 

大開口で南風招く

人・風巡る高い回遊性
鉄筋コンクリート造平屋建ての「中村家住宅」は、LDKの南側、庭に面した大開口が特徴だ。
8枚引きのサッシは幅10メートルほどもあり、庭の生け垣や芝生の気化熱によって冷やされた夏の南風を目いっぱい取り込みながら、室内の熱を排出する。開け放てば、庭からLDKまで一体となり、外とも中ともつかない大きなアマハジ空間にいる気分にもなる。
設計した金城司氏は「夏の風をいかに取り込むかが設計のテーマ。北中城村にある国指定重要文化財『中村家住宅』のような、沖縄の伝統的な家屋を意識した」と話す。
南にLDKなどパブリック空間、北に寝室などプライベート空間をまとめた室内は、行き止まりがなく回遊できる。そのため、LDKの開口部から入った風もとどまることなく室内を巡り、各部屋に涼を届けていく。
金城氏の幼なじみでもある施主の中村さんは、「住み始めて5年ほどたつけれど、クーラーはほとんどつけたことがない」と効果を実感。回遊性があることで、生活動線が効率的になり、家事もしやすい。
審査では、夏に涼風を取り入れる沖縄に適した造りのほか、公私を明快に分けたプラン、個室よりも家族で集える空間を重視する施主の生活スタイルに沿った提案などが評価された。ほとんどの場所で間接照明を使い、光源を直接見せない照明計画に「あんどんのような落ち着いた心地よさがある」との声もあった。


空の青や植栽の緑に、白い外壁が映える外観。ヒンプンや生け垣で、外部からの視線をゆるく遮る​

ファミリースペースはプライベート空間の中心にあり、カウンターでは家族が勉強したりPCを使う​

LDKを庭から望む。中央のテレビボードが、子ども室の目隠しになるとともに公私の空間を区切る
 


敷地南側に庭があり、室内は南にパブリック、北にプライベートという伝統的な沖縄の住宅を意識した配置。回遊性の高い造りだが、各居室は可動式の間仕切りで仕切ることができる。審査員の一人は「つながっているけれど全部個室になる」と新鮮な驚きを示した




金城司氏(45)
門一級建築士事務所

小学生のときに友人と交わした「建築士になったら家を設計させて」という約束が現実になり、それが正賞になるなんて奇跡のよう。先人の知恵を取り入れた住まいを目指して、積み重ねてきたことが評価され、勇気をもらえた。今後は精神的な快適さも突き詰めていきたい。


 

審査講評 住宅建築部門 正賞

「中村家住宅」

築後4年を経た佇まいは、一次審査の際の外観写真よりはるかに良いものとなっていた。生垣のブッソウゲは設計者が期待したとおりの視線を遮る緑の壁となり、庭の芝生も青々と開口部の大きなアマハジ空間に涼風を呼ぶ役目を果たしている。竣工当初には感じえなかっただろう居心地の良さが時と共に備わってきたのだろう。簡潔で明快なプランの中にパブリックとプライベートエリアの使い分け、必要最小限の間仕切りと効率の良い機能性、家族間のコミニケーションがとりやすい回遊性のある構成など、施主独自の生活スタイルや家族関係に対する考え方をしっかりと捉え、一筆書きのように紐解いていった設計者の力量が伺える。夏場は空調機に頼ることなく快適に過ごせるという施主の言葉も感じることができた。この作品を4年間温めていたこと、施主との関係もきちんと継続してきたことも評価できる。
ただ残念なのは、アプローチ空間にもう少し期待したかった。



 

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