沖縄建築賞
2017年5月26日更新
【第3回沖縄建築賞】新人賞/「浦添大公園南エントランス管理事務所」(浦添市)/金城春野氏(31)/琉球大学助教
県内の優秀な建築物・建築士を表彰する「沖縄建築賞」 (主催/同実行委員会)。第3回の入賞作品7点がこのほど決定した。住宅部門正賞に金城司氏の「中村家住宅」、一般建築部門正賞に島田潤氏の「クニンダテラス」が選ばれた。
第3回沖縄建築賞 入賞作決定
浦添大公園南エントランス管理事務所の外観。屋根のおね線を回転させることで、今までにない赤瓦建築の形になっている。
新人賞
「浦添大公園南エントランス管理事務所」(浦添市)
赤瓦建築の新たなカタチ
若き建築士の挑戦
赤瓦屋根をつまみ、グルッとひねったような建物。設計した金城春野氏は、「市の条例で赤瓦屋根にすることが求められた場所だった。伝統素材を用いながらも、新しい建築形態と空間を提案できたと思う」と語る。奇抜に見える建物は、建築士の挑戦のカタチだ。
審査員たちは、屋根を単純な三角形にせず多面体にしたことを、「見る方向によって屋根の面積や形状が違う表情を見せ、美しい」と、高く評価した。
室内から見た天井には、赤瓦屋根を葺いた方向に合わせて木製ルーバーが設置されている。基本的に室内の造りは箱的でシンプルだが、この天井の起伏やルーバーの連なりで遊び心をプラス。空間のアクセントとなっている。
この建物は、浦添大公園の管理事務所やトイレ、展示やワークショップなどに使える多目的室を備える。室内だけでなく「エントランス広場など屋内外のイベントで有効に利用されるであろうことは容易に推測できる」と審査員の支持を得た。一方で、「ピクトサインなどもっと美しい表現方法は無かったか、サラッと流した感じがして惜しい」との声もあった。
室内から見た天井も、屋根瓦の葺き方向に合わせて木製ルーバーを設置している。
角度によって屋根の見え方が変化する
間取りはシンプル。駐車場から入ると、半屋外空間であるエントランス広場、展示会や勉強会が開かれる多目的室、トイレや管理事務所がある
設計者代表
金城春野氏(31)
琉球大学助教
このような賞をいただき、とても光栄。これを機会に、より多くの人にこの施設を利用していただきたい。新人賞ということは、今後の活動に期待を込めていただいたと理解している。ますます沖縄建築の探究に精進し、建築設計にも携われるよう努力していきたい。
審査講評 新人賞
「浦添大公園南エントランス管理事務所」
規則性を持った棟(稜線)によってこの建物のデザインが決められている。
正面の大胆に切り取られたコンクリートの壁面も稜線の位置によって切り取られた軒先に影響されているが、その壁面と強く主張しない瓦の面積が程よいボリューム感を持たせ心地よい。
また、浦添大公園の園路から見下ろす屋根は多面体で表現され、その面積、形状が違った表情を見せ美しい。
棟の稜線と軒先は金物を使ったダブルルーフと表現されたディテールによってコンクリートと赤瓦の新たな表現方法としてシンプルで緊張感のある線で構成され〝 赤瓦を使った新たな建築 〟として表現されている。
棟の線によって作られた多面体の屋根下は豊かなエントランス広場、室内空間を作り出している。そこでは屋外、屋内イベントで有効に利用されるだろうことは容易に推測できる。
惜しむらくは、ピクトサインの表現方法、屋外空間の床面を含む美しい表現方法はなかったか、さらっと流した感がして惜しい。
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