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2023年11月10日更新
共用設備やスペースで暮らしやすく|他にないソフトとハード|コミュニティアパートができるまで⑧
文・写真/守谷光弘(「コミュニティ・アパート 山城のあまはじや」オーナー)
共用設備やスペースで暮らしやすく
他にないソフトとハード
「山城のあまはじや」と一般的なアパートとの最たる違いは、アパートの入居者同士が家族のように密な交流を望んでいることと、それを可能にする共用スペースがあることです。
共用スペースに広いキッチンとダイニングがあることは4月掲載時に述べた通りですが、その時点ではまだ入居者が居なかったため、実際には使われていませんでした。ところが3室満室となった現在では、入居者全員がメンバー登録されているSNSのグループでお互いに誘い合って、一緒にお茶を飲みながらユンタクをしたり、おかずを持ち寄ってごはんを食べたりと、日常的に活用される場所となりました。共用ダイニングに近い階段下の空間は、共用のパントリーになっていて、大人数向きの調理器具や食器、食材などを置ける場所になっています。
あまはじやの間取り図。南北に長い矩形の建物中央に共用玄関とコミュニティスペースを配置し、入居者同士が日常的に顔を合わせる動線となっている
リビングや客間
茶室にもなる和室
その共用キッチンとダイニングの延長線上には4畳半の和室があって、普段はリビングルームとして使われています。この和室は入居者の家族や友人が泊まれるように、ダイニングからは見えない奥に洗面所とシャワーブースがあって、ダイニングとの境界壁に収められた襖(ふすま)を閉め切れば、客間として個室になります。畳1枚を外して炉壇と炉縁を据え付け、L字型の畳をはめ込めば茶室としても使えるしつらえになっていて、天井には釣り釜をつるせるように釜蛭(かまひる)釘を据え付けてあります。
1階のコミュニティスペースから見た和室
衣類乾燥機とコンロ
ガス仕様でリスク回避
和室とは別に、北側の駐車場と西側の庭から直接出入りできる趣味室46・7平方メートル(約28畳)もあり、ものづくりや広さを必要とする軽作業ができるようになっています。趣味室の床は基礎と一体のコンクリートになっているため、ガレージとしても使える他、土の付いた野菜を洗える深型シンクもあります。趣味室にはガス衣類乾燥機も置いてあるので、台風による停電時や悪天候が続いた時など、洗濯物が乾かない時に共同で使えるようにしてあります。
共用キッチンのコンロを衣類乾燥機同様にプロパンガス仕様にしているのは、各世帯がオール電化になっていることのリスクヘッジであり、今年8月に沖縄を直撃した台風6号の影響で5日にわたり停電した時には、炊事に困ることもなく毎日みんなで食事を共にすることができました。
2階の階段踊り場に面した納戸の一つは、各居室には置きにくい大型の物や普段は使わない旅行用スーツケース、冬物衣類や客用の布団等を置けるようにしてあります。
これらの共用設備や共用スペースはそれぞれにはちょっとしたことですが、そのちょっとしたことがいくつかあることで、各居室が使いやすくなったり快適になったりすることは、とても大きな意味があると考えています。
もりたに・みつひろ
1966年東京都世田谷区出身。2007年より沖縄県在住。「コミュニティ・アパート 山城のあまはじや」オーナー 兼 管理人 兼 住人。糸満 海人工房・資料館を運営するNPO法人ハマスーキ理事。2020年、小規模土地分譲『等々力街区計画』の街区デザインでグッドデザイン賞受賞
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1975号・2023年11月10日紙面から掲載