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沖縄建築賞

2019年7月26日更新

From沖縄建築賞[8]第5回建築賞

県内の優れた建造物・建築士を表彰する「沖縄建築賞」(主催・同実行委員会)。今回は、5月に発表された第5回沖縄建築賞の受賞作品の中から、正賞を受賞した2作品を取り上げ、発表時に掲載しきれなかった部分について紹介する。住宅部門は金城豊氏設計の「アカジャンガーの家」、一般建築部門は宮城江利奈氏の「オアシスバンク」。

第5回(2019年)住宅部門正賞
アカジャンガーの家 金城豊/門一級建築士事務所


光と風呼ぶ凹凸 室内にリズムも
「アカジャンガーの家」は平面にも立面にも施された無数の凹凸が特徴。季節や時間によって向きなどが変わる光や風を、一年を通して室内に取り込むための工夫だ=下イメージ変遷参照。さらに凹凸は、天井の低い廊下や、高い天井に大開口のあるLDKなど、室内空間にもメリハリを生んだ。

通学路に面した北東側は庭を設けて大きく開き、フェンスの外側にリュウキュウマツやイジュ、クスノハカエデ、コンロンカなど琉球諸島固有の植物を植えた。街並みに緑を提供し、地域とつながる仕掛けになっている。敷地の随所に敷かれた琉球石灰岩は「昔は土地の境界を仕切るように置かれていた」というかつての風景を意識。植物や石で地域の「記憶」を再現した。

動線計画では、玄関を入ってすぐに左右で公私を分けた。また、「洗濯物は乾燥機を使う」施主に合わせ、乾燥機のある洗濯室の隣にウオークインクローゼットを配置。乾いたらすぐに片付けられ、施主は「完璧な動線」と喜んでいた。


高い天井と大きな開口部で開放的なLDK。光と風をいろいろな方向から取り入れられる


廊下。LDKがより開放的に感じられるよう、あえて天井高を抑えた


石で土地の境界を示していた昔の風景にならい、敷地の随所に敷かれた琉球石灰岩。審査員からは「年月がたったら、もっといい感じになりそう」との声もあった





第5回(2019年)一般建築部門正賞・新人賞
オアシスバンク 宮城江利奈/渡久山設計


開放感と癒やし 試行錯誤重ねて
市民に開かれ、気軽に集える新しい銀行がコンセプトの「オアシスバンク(琉球銀行牧港支店)」。設計を進める中で大きな木陰を連想した宮城江利奈さんは、木の葉のように軽やかな素材の大屋根の下、開放感と癒やしのあるオープンスペースをつくり出した。

大屋根に使われた材料は、県産の新素材で厚さ4センチと薄く、穴を自由に開けられるコンクリート板(HPC)。主に壁材などに使われてきたものだが、県内で初めて屋根材として取り入れた。「設計でも現場でも試行錯誤しながらの挑戦だった」と振り返る宮城さん。屋根は浮いているように見えるが、実は建物と一体の構造で、載荷試験など慎重な現場調整を行った=下写真。屋外の斜めの柱が通る穴は現場での加工を要し、工事関係者も初の試みに苦慮した。


HPC(ハイブリッド・プレストレスト・コンクリート)の大屋根は、幹に見立てた3本の柱と傘状の吊り材で構成する「メガ立体柱」と建物本体から突き抜けた柱で支えて一体の構造とした

そうして完成した大屋根「木漏れ日ルーフ」は北側の国道と東側の道路に向かって張り出し、朝日のまぶしさを抑え、人々を癒やす大きな“木陰”となった。

広場の植栽や内装も「『オアシス』のイメージを各業者と共有しながら協力を得て統括した」。ヘゴやヤシなど亜熱帯植物の中に、白色系の葉色の植物を合わせて涼しげに。待合室は幹の中を思わせるしつらえで、植栽越しに見える国道の喧騒は気にならず、ガラス張りでも暑さを感じない“木陰”の効果を実感できる。立ち寄る人、道行く人に涼と安らぎを与え、浦添市の玄関口に沖縄らしく潤いある空間を実現した。


施工を手掛けた大永建設㈱が現場で載荷試験を行った。青いジャケットを着た人が立っているところが吊り材で支える鉄骨梁(ばり)部分。その下にHPCをボルト接合で水はけを考慮しつつ固定している。施工中は大屋根の下に足場を組み、2メートル×6メートルのHPCをクレーンで足場まで持ち上げた。一番の課題となったのは鉄骨梁への取り付け。人力で持ち上げるなど現場で試行錯誤を繰り返し、架台で持ち上げるオリジナルの工法にたどり着いた(写真提供:㈲西薗博美構造設計事務所)



夜間の外観。植栽が下から照らされて大屋根に木の葉の影が映る。3本柱を照らす照明の角度は現場で見栄えを調整して取り付けた



植栽は(株)アレックスが担当。「大空間にマッチするヘゴを名護から探してきてくれた」と宮城さん



まるでガジュマルの幹の中のような待合室の内装は、(株)イトーキが手掛け、書斎のような落ち着きある空間に。
 

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1751号・2019年7月26日紙面から掲載

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