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2023年7月28日更新
[専門技術者育てる工業高校①]「暮らし」を造る3学科 土木科・設備科・インテリア科
ものづくりの知識と技術を磨ける工業高校には、さまざまな学科がある。今回は、インフラ整備の技術者を目指す「土木科」、配管や空調に関わる「設備科」、家具や内装を学ぶ「インテリア科」を取り上げる。それぞれの科がある5校に授業内容や進路状況を聞いた。
土木 インフラ建設 技術者育成
○測量
○ドローン操作
建物をつくる建築に対し、土木は橋やダム、高速道路、水道、港湾施設など、社会基盤となるインフラを造る。沖縄工業の知念豪俊先生と美来工科の山城久富先生は「インフラ建設において、作業員というよりは、計画を立てたり、設計したり、現場を管理する技術者を育てている」と声をそろえる。
授業内容は両校とも同じで、学年が上がるごとに専門科目の割合が多くなる。
中でも特徴的なのが、土地などの角度や距離、高さを正確に測る技術を学ぶ「測量」と、施工の方法や材料について学ぶ「土木施工」。知念先生は「特に測量は、設計をはじめ、全ての計画の土台となる技術。最新の機材も導入されており、ドローンや衛星を使った測量も学んでいる」と話す。
そのほか、「社会基盤工学」では、交通網、治水、災害対策など、まちづくりに関わる幅広い分野について学ぶ。基本的な設計ができるよう、CADの使い方や構造設計の授業もある。
求人は多く、ゼネコンや施工会社だけでなく、国や自治体からも来る。山城先生は「自治体の土木課や河川課などからの求人も多い。土木を学べる工業高校が県内に2校しかない分、倍率も低め。公務員になりやすい」という。
学外からのサポートもあり、例えば県建設業協会からは、小型車両講習料の補助や現場見学会の実施、インターンシップ先の紹介などをしてもらっている。
土木系の学科で目指せる資格
◆測量士補
◆2級土木施工管理技士補
◆小型車両系建設機械特別講習
◆第二種電気工事士
◆情報処理技能検定(文書デザイン、表計算)
◆乙種第4類危険物取扱者
◆ガス溶接技能講習
◆アーク溶接技能講習
◆無人航空従事者試験(ドローン検定)
◆建設業経理事務士(3級・4級)
◆計算技術検定 など
設備 配管・空調の施工技術磨く
○水道配管
○空調
○冷凍配管
設備系の学科のある工業高校は、全国に24校しかない。そのうちの2校が県内にある。美里工業と南部工業だ。
「米軍統治の歴史も影響し、沖縄はトイレの水洗化率が全国でもトップレベルに高い(総務省2008年調査では97.2%で全国1位)。そうした背景もあって設備系の会社が多く、工業高校にも波及しているのではないか」と南部工業の仲里裕樹先生は話す。
設備の授業の柱は配管(水道やガスなど)と空調で、その施工技術を学ぶ。
冷凍(大型冷凍設備)や衛生(排水)、溶接や積算(工事の金額計算)などの授業もある。
さらに、「設備の仕事をするためには、建築の知識も必要だし、電気についても学ばなければならない。給排水などのインフラは土木の分野にもなる。だから、設備の学科は工業高校の中でトップレベルに学ぶ分野が広く、実習も多い。その分、取れる資格も多いし就職率も高い」と美里工業の宮城司先生。美里と南部で授業カリキュラムに大きな差はないそうだ。
求人は、設備系企業だけでなく、商業施設やホテルなどの設備管理もある。「県内外から引く手あまた」と仲里先生も話した。
設備系の学科で目指せる資格
◆2級管工事施工管理技術者
◆第二種電気工事士
◆第三種冷凍機械責任者
◆危険物取扱者
◆消防設備士
◆建築配管技能検定(2級・3級)
◆冷凍空気調和機器施工技能検定(2級・3級)など
インテリア 家具や仕上げ 内装中心に学ぶ
○木工
県内でインテリア科があるのは浦添工業のみ。建物の内装をメインに、家具や建具の加工技術、仕上げなどについて学ぶ。同校の仲座鉄也先生は「ものづくり以外に建築設計も一通り学ぶことで、インテリア科が目指す快適な空間づくりに役立てている」と話す。卒業後は木工家具メーカーや建築事務所、施工会社などに就職。「求人は県内外から多い。近頃は建築現場で働く技術者を求める企業が目立つ」と話した。
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撮影・取材/東江菜穂、出嶋佳祐、市森知
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1960号・2023年7月28日紙面から掲載